実はアニメ好き! 俳優・上川隆也が挑戦する朗読劇の枠を超えた朗読劇とは?
関西ウォーカー
連続ドラマや大作舞台に主演が続く上川隆也。知る人ぞ知る大のアニメ好きの彼が、声優界で活躍する山寺宏一と林原めぐみとの共演に「信じられないほどの興奮」と出演を快諾した音楽朗読劇「ヴォイサリオン」が、3年ぶりに再演、関西に初登場する。音楽と物語を絶妙に絡ませ、朗読劇を絶妙に進化させた藤沢文翁のオリジナル創作舞台だ。
豪華キャスト×生演奏の美しい音楽×上質な演出のプレミア音楽朗読劇シリーズ「VOICARION」。今回再演される「Mr.Prisoner」は、第1弾として2016年に初演された。物語は19世紀英国。ロンドン塔の地下3階にある独居房に幽閉された「絶対に声を聞いてはならない囚人」を巡る物語。上川は、その囚人の調査をしている英国の文豪・ディケンズと、囚人の正体を知るヘイスティング卿を1人2役で演じる。

「魔界転生」のような、堤幸彦ワールドが炸裂する映像を融合させたエンタメ舞台のド真ん中にスックと立ち、劇場全体に響く声と主演のオーラを放つ主演俳優・上川が、何よりも出演を望み、たたえる朗読劇とは、いったいどんなものか。生真面目な優等生の彼が、喜びをあらわにその舞台を語った記者会見に続き、個別取材で話を聞いた。
●尊敬するふたりと共演できる喜び
山寺さんと林原さんとご一緒できるというお声がけに、一も二もなく、やらせていただきます、と。僕がやらせていただきたいと思ったモチベーションは、やはりこのおふた方と出来るということ。何よりうれしかったんです。朗読でなくても受けていたと思います。声優としてのお二人のすごさを、僕はこれまで十二分にさまざまな作品で受け取っておりました。その方々と役者として合いまみえることができることは稀有な機会だと思いましたし、その機会を見過ごしたくないと。
初演では、演者としてのお二人の底力を間近で見せていただきました。おふた方のまったく違うものながら、それぞれお芝居に向けられる姿勢やエネルギーはとても刺激になりましたし、今でもかくありたいと思っている部分ではあります。前回の公演を経て、おふた方と個人的な交流を得ることができた2年間の時間は、間違いなくお芝居にも反映されるものになると思うので、今回の「ヴォイサリオン」が初演とは少し違ったものになるのではという予感と共に、今回の再会を楽しませていただきたいと思います。
●作品について
「ヴォイサリオン」は舞台空間すべてを、お客様のイマジネーションのために出来うる限りしつらえてお届けする、そのための努力やエネルギーを注ぎ込まれた作品だと思っています。朗読劇は声で作品をお届けする形が基本だと思いますが、「ヴォイサリオン」では演者はちゃんと役柄に合った衣装を身にまといますし、加えて演出効果、視覚効果なども照明や特殊効果機器を用い、ふんだんにそれを盛り上げてお客様により物語に没入していただけるような工夫を随所に凝らしてお届けする形をとらせていただいております。
これは舞台という形態を、むしろ十全に生かして、朗読劇というものをよりエンターテインメントとしてお届けするものにと考えている、藤沢文翁さんのお気持や演出意図が大きく反映されたものでしょう。僕らもそうしたしつらえや演出効果によって、より物語の中に没入して行けるような感覚も味わえることから、お客様との一体感や僕らが普段務めている舞台と大差ないような。ですから朗読劇と銘打ってこそいますが、普通の舞台作品としてお届けしてもなんら遜色のないものだと僕は思っています。
Q:初演での反応がとても良かったと聞きました。
正直、朗読劇からどんな反応が得られるのか、予想外だったんです。お客様にとっても、山寺宏一さんや林原めぐみさんの、いわゆる声での演技を目の当たりにして体感できる機会なんて少ないでしょうし、その機会を得にいらっしゃるんだろうとも思っていました。僕もお2人とご一緒できることがまず何よりのモチベーションでしたから。でも、文翁さんの脚本が良かったんです、何より。
ふたを開けてみたら、非常に上質な演劇空間だったんですよ。脚本のクオリティも、そして演者のお二方。僕はそれに付いて行っただけですけど。それに、舞台空間のしつらえや演出も、音楽も、とてもハイクオリティのものがそこに用意されていて。これはお客様が実際目の当たりにして、そうした心情に見舞われてもおかしくないなぁというのが演じた後の、間違いない実感でした。
Q:今までで初めての経験ですか?
「ラヴ・レターズ」が、僕がこの舞台以前に唯一経験したことのある朗読劇でした。けれど、あれは地明かりの中でずっと本を読む二人を見ているという形態で、鑑賞に近いものだったように思うんですね。でも、「ヴォイサリオン」はより演劇的ですし、よりエモーショナル。ですから朗読劇というカテゴリーの中にはとどまらないようなものに今、文翁さんがしつつあるんだなぁというふうに思っています。だから“プレミア音楽朗読劇”と付けたのも、むべなるかなと言うか。ただの朗読劇には、もう器が収まっていないんだと思います。
Q:初演の印象は?

声にさまざまな情報を乗せてお届けできるおふた方の中に入って、自分がどこまでできるのかという、ある種のトライアルな部分は多分にありました。この公演でおふた方と過ごした時間があったからこそ、今、僕は自分の声にもまた違った興味が持てて、こんなふうにやってみたらどうなんだろうという試行錯誤が以前とはまた違った形で出来ているような実感もあるんですね。そういう意味でも、とても意味のある16年での公演でした。それがまた、いろんな形を経て再演にこぎつけたというのは、とても感慨深いものがあります。
Q:楽しかったですか?
もちろん楽しかったですし、長年アニメーションを楽しんで来た者として、心躍る部分はなかったとは申しませんが、でも、それを脇に寄せるほどに、やはりお2人の技量がすごかったですね。そんな個人的な思いはさておき、今この現場で、いかにお二方のクオリティを落とさずに食い下がっていけるのかということにだけ、ほんとに専念してました。
Q:良かったですね。
声のお仕事も何本かはやらせていただいているんですが、たいがいは1人でブースに入って、他の方とご一緒することもなく、その作品を終えていく。だから、なかなか他の声優さんとご一緒にやることで得られるものを体感することが出来ないんですよ。それに比べて、これはもう目の当たりにしながらの現場なので。稽古の時間も、朗読劇ということもあって数や日数を費やしませんし、自分に対する不安感というか、この形態このクォリティに自分がどこまでいけるのか、という思いは終始ぬぐえなかったです。今回もそれは僕の中で一つのテーマになるでしょうし、それはつねに、楽しませていただくことと同居してあるものだと思っています。
Q:関西で初めてご覧になる方へのメッセージを。
文翁さんは、とてもクレバーな人で、そうしたことも多分どこかで想定なさってるんですね。初めての方々をまず舞台にどう引き込むのかも含めて、ちゃんと計算づくで演出に組み込んでいらっしゃるんです。そうしたことも踏まえて、僕らはお迎えする用意が出来ています。だから観劇経験のない方でも身構えることなく、いつも楽しんでいる映像作品をご覧になるのと同じようなご気分でいらしていただければ。あとは幕が上がってしまえばもう、人が演じていくものよりもむしろ、とまどうことなどないしつらえになっているんですよね。
とにかく、朗読劇でありながら、ちゃんとその世界観の中にいざなわれるような、そんな世界が多分、ご用意できてると思いますので、ほんとにこの時間に身をゆだねる気分だけで来てくだされば、と思います。お席を立っていただく時に持ち携えていただけるものは、きっと温かいものだと言うことはできます。
かみかわたかや●1965年5/7、東京都生まれ。89~09年、演劇集団キャラメルボックスの看板俳優として活動。95年にNHKドラマ「大地の子」に主演し注目を浴びる。99年の映画「梟の城 owl’s castle」で第23回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞、06年の大河ドラマ「功名が辻」をはじめ、昨年もドラマ「遺留捜査」、舞台「魔界転生」など主演多数、幅広く活躍している
STAGE プレミア音楽朗読劇「VOICARION Mr.Prisoner」チケット発売中

公演期間:3/16(土)・17(日) 会場:サンケイホールブリーゼ 原作・脚本・演出:藤沢文翁 出演:上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一 価格:S¥9,000、ブリーゼシート¥5,000 お問い合わせ:06・6341・8888(サンケイホールブリーゼ)
高橋晴代
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