「猫より人の演出の方が大変(笑)」 世界の猫を撮影してきた岩合光昭 「ねことじいちゃん」でストーリー映画初監督
関西ウォーカー
動物写真家としても知られ、世界の猫を撮影してきた岩合光昭がフィクション映画の監督に初挑戦。小さな島を舞台に人と猫が暮らす日常をユーモラスかつ繊細に描いた映画「ねことじいちゃん」を完成させた。豪華キャストと名芝居を繰り広げた猫たちとの撮影を振り返りながら、監督としてこだわったポイントなど制作秘話を伺った。

累計発行部数35万部を突破する人気コミックを実写映画化した「ねことじいちゃん」。70歳の大吉さんとオスの猫・タマとの何気ない日常を軸に、人と猫が助け合い、笑い合いながら暮らす日々を描いている。
主人公の大吉さんを演じるのは落語家・立川志の輔。岩合監督の熱烈なオファーにより初主演が実現した。共演には柴咲コウ、小林薫、田中裕子、柄本佑など実力派キャストが集結。そして、もう1人の主人公・猫のタマ役に起用されたのが、ふてぶてしい表情が魅力的なベーコン。100匹以上のオーディションから抜擢された名演技は必見。

猫を立体的に映し出すために、猫用の照明を開発
ーもともと原作はご存知だったと伺いました。
原作者のねこまきさんには「世界ネコ歩き」の本の挿絵を書いていただいたご縁もあって読んでいました。物語の舞台にもなった愛知県の三河湾の島々にも訪れたことがあったのでその風景と、おじいちゃんと猫のほのぼのとした日常が描かれていて気に入っていました。
ー今回、実写化するにあたって意識したポイントはどこですか?
人と人の繋がりの中で猫がどうやって生きているのかと、島々の自然環境をしっかり描くことはとても意識しました。
ー猫目線でのカメラワークがあるなど、猫が主役の映画と言えますね。
ドキュメンタリーでは猫と同じ視線にカメラの高さを合わせて撮っているので、映画もその延長線上でアングルを考えました。
ー普段のドキュメンタリーとは違って、今回はフィクションです。違いなどは感じましたか?
全然違いますね。キャストである俳優さんたちをより立体的に撮らないといけないし、演出もしないといけない。それに加えて猫もいますから。撮影に関しては猫を立体的に映せるように、猫用の小さな照明を開発してもらいました。ドキュメンタリーでは照明を当てるのは難しいですが、今回はフィクションなんで挑戦しました。

ー志の輔さんは岩合監督自らのオファーと伺いました。そのほかのキャストはどのように選考したんですか?
ヒロイン・美智子のキャスト希望のトップが柴咲さんでした。柴咲さんは「お引き受けするかは監督と会って決めたい」と仰られて、実際にお会いしました。その時に彼女が「志の輔さんも初主演、岩合さんも初監督。初めてに2つも出会えることってなかなかないと」って言ってくださって出演を決めてくれました。小林さんも志の輔さんとの縁を感じたそうで、田中さんは「猫が好きだから」と引き受けてくださいました。
ーやっぱり猫好きがポイントになってきますよね。
撮影中も猫がいると表情が柔らかくなるんですよね。柴咲さんも直虎とは違う優しい表情で。直虎も優しい人ですが(笑)
「自分の中では水がテーマになっています」
ー猫との演技は難しい気もしますが、キャストの皆さんにはどのような演技指導を行ったんですか?
志の輔さんに猫と仲良くしてほしいとお願いしようと思ってたら、志の輔さんも同じように思っててくださってて。僕が言う前にベーコンはすでに志の輔さんの膝の上にいました(笑)
ー猫との日常が自然に切り取られているのが印象的でした。
カメラを自然な感じで回していました。猫は言うことを聞いてくれないので、自然の動きをそのまま使ったところが多いです。柴咲さんとベーコンの出会いのシーンでは、マンホールにいたアリをベーコンが前足でちょっかいを出しているんですけど、そのまま使いました。

ー撮影でこだわったポイントなどはありますか?
あくまでもファンタジーとして楽しく観てほしいので、キャストの衣装にはパステルカラーを取り入れました。あと、自然環境をより表現するために、自分の中では水をテーマにしましたね。例えば、大吉さんが作る味噌汁や5回もある猫が水を飲むシーンとか。水を飲むことが生きることに繋がると思ってこだわりました。
ー桜並木を大吉さんとタマが歩くシーンも素敵でした。
300mぐらいを真っ直ぐ歩くんですけど、あのシーンのベーコンを見て動物プロダクションのチーフもありえないって(笑)タマが先に歩けば大吉さんがついてきて、大吉さんが先に行って振り返ればタマがついてくる。それを繰り返しながらまっすぐ歩くんです。奇跡的と言ってよいほどの「ふたり」の調和が取れたシーンになったと思います。
「猫より人の演出の方が大変でした(笑)」
ー猫との撮影は時間も労力も大変そうな気がしますが、いかがでしたか?
猫たちの協力もあってか撮影はほぼ予定通りに終わりました。キャストの方々も猫のために余裕をもって芝居をしてただいたことも助かりました。志の輔さんは「俺は猫の脇役。猫のダシに使われた」と言ってました(笑)
ータマを演じたベーコンの演技も見事でしたね。
本当に素晴らしい。いろんな猫と会ってきましたけど、5本の指に入るスーパーキャットです。少し前の試写会ではベーコンが登場したら志の輔さんや柴咲さんよりも拍手が大きくて。役者より猫の方が人気あるって驚きですよね。

ー今回の撮影で一番大変だったことって何ですか?
監督って大胆に演出すればいいって思ってたんです。でも、撮影初日、箸の置く場所を決めてって言われて「そこまで決めるの?!」って(笑)。メイクさんに志の輔さんの白髪の位置を決めてほしいと言われた時も驚きました。
ー猫の方が演出するのが難しい気もしますが。
猫についてはそんなに大変だという記憶はないです。猫より人の演出の方が大変でした(笑)
猫の日に公開「実は公開日を先に決めていました」
ー2月22日の「猫の日」に公開です。この映画のためにあったかのような絶妙なタイミングでの公開ですね(笑)
日本でしか通用しないですよね(笑)16年の冬にお話しをいただいて、17年の初めにロケハン、18年に撮影したんですけど、実は公開日を決めてから制作し始めたんです。最初に公開日が19年2月22日って決まった時に「そんな先なの?!」って言ってました(笑)

ー今回初めて監督業に挑戦して、次の作品などは考えていますか?
今回が本当に大変で。実はまだ大変さが頭の中を縦断しているぐらい(笑)次を考える余裕はないですね。今は本作を楽しく観ていただくことだけを考えています。観客の皆さんが笑顔で映画館を後にしてくれるか不安と期待でいっぱいです。
■映画「ねことじいちゃん」2月22日(金)より 梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸ほかにて全国ロードショー
山根翼
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