はーこのSTAGEプラスVol.62/イッセー尾形インタビュー 文豪たちの小説をカバーする新・一人芝居

2019年4月2日 18:46更新

関西ウォーカー

Twitterで
シェア
Facebookで
シェア

演劇ライターはーこが贈るWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.62をお届け!

2018年3月、イッセー尾形の一人芝居が18年ぶりに近鉄アート館に帰ってきた。老若男女の庶民生活のひとコマを切り取り、身近な人たちの姿を生き生きと描いてみせる一人芝居。大阪弁のOL、駐車場のバイトの子、家族連れで海に来たお父さん…。観ている誰もが「あ、〇〇さんだ!(笑)」と友人・知人を勝手にイメージするほどリアルに息づく人物が、次々と登場する。演技がうまいとか、もう、そういうレベルじゃない。感心する。笑う。そして登場人物たちに共感する。アート館では1992年から2000年まで上演していた。

近鉄アート館でイッセー尾形の一人芝居が見られる幸せっ!


【イッセー尾形が夏目漱石をカバーした「妄ソーセキ劇場+1」】

昨年は、一人芝居の人物ベースが夏目漱石の小説世界まで広がった。夏目漱石生誕150周年のイベントで、漱石をテーマにした一人芝居のオファーがあったことから、イッセーさんの新たな創作の扉が開いた。オファーした人に感謝したい。よくぞ、そこを思いついてくれた! と。

文豪たちの小説をカバーする「妄ソーセキ劇場+1」。


「妄ソーセキ劇場+1」で描かれる人物は、漱石作品に登場する主人公ではない。物語のわき役や、ほんのちょっとしか出てこない人を主人公に焦点を当て、イッセー尾形流の妄想で彼らの日常を描いて見せる。「門」の主人公・宗助の弟、「道草」の主人公・健三の育ての母親など5作品。小説を読んだことのある人は、物語の背景を知って人物を見るので、いっそう深く楽しめる。

プラスワンでは漱石以外の文豪を1作品。私が観たのはゴーゴリの「外套」だった。庶民の人生の哀切がおかしみを伴って描かれ、ファンタジーのなかにあるやさしい目線がしみじみと心に染みた。

【そして今回は夏目漱石以外の作家をカバー】

イッセーさんは夏目漱石のお題を得た時から、一人芝居の新たな世界がどんどん展開し始めた。そして何より楽しそうだ。「明治から現代にいたるまでの、普通の人たちの日常を私なりに描く、普通の人たちの日常の日本史。結構壮大なことをやってるんだなぁと(笑)」。

今回は「妄ソー劇場」~文豪シリーズ2~ 日替わりプラス1」。“妄ソーセキ”ではなく“妄ソー”。前回日替わりで上演した4作品をレギュラーに、さらに当日のお楽しみで日替わりプラスワンの演目を加えてお届けする。

5作品を選んだ基準は「本屋に入って、パッと目に映ったもの(笑)。あと、自分が昔読んだ本とかね。で、今回は小説全体から受けたニュアンスから作り出した人物が多いかな。だんだん、そういう傾向になって来た。漱石さんとは時代がちょっと変わったなと思います」。

●佐多稲子「女店員とストライキ」

 コンビニの店員がこっそり集まって、ストライキを計画する。「コンビニでストライキはあり得るのか、挑戦」。大阪では初めての上演作。

女店員とストライキ


●横光利一「機械」

薬品漬けでボーっとなった労働者。もはや主体が定かでなくなっていき…。「ネームプレート製作所の働き手で、すごく生命力がある割烹着を着たおばちゃんをやります」。

機械


●ニコライ・ゴーゴリ「外套」

 貧乏な下っ端役人がやっと新調した外套を強奪され、死んで化けて出てくる。「つましく暮らす庶民の夢と挫折。ユーモアとファンタジーを入れて、悲惨な運命をやさしく包んで舞台に上げたい」。

外套(がいとう)


●川端康成「浅草紅団」

 エロティックで怪しい浅草を描く。「何がいいたいのかよくわかんない小説(笑)。仮面をかぶって登場人物になりきる立体紙芝居のおじさんが、怪しげな世界を子供たちに見せる」。

浅草紅団


●太宰治「斜陽」

没落貴族の没落ぶりを描く作品を歌ネタで。「没落貴族がおばあちゃんになり、北国でパブを開いて自作の歌を歌っている。ホステスは日本中から集まった没落お嬢さんたち。悲惨だけど、一見幸せな小さな店ね」

斜陽


●日替わりの演目は??

【アート館だからこそ、の空間】

 プラスワンの演目は、アート館で初めてかける作品だ。「実験ですね、すごく。アート館は、そこに居合わせた人たちの肯定的に観てくれるまなざしと息づかいを頼りに1歩1歩実験を続けている、という空間。お客さんの反応を受けて作品の視点が変わっていくんです。ネタと自分との付き合い方も、アート館でやることで、すごく豊かになったなと思います。大阪弁のネタも受け入れてくれて優しいしね(笑)」。

東京・渋谷にあった伝説の小劇場・ジァンジァン。かつて、イッセーさんはそこで新作を生み、大阪の近鉄アート館で育てていった。が、ジァンジァンは閉館、アート館も2001年~13年に公演事業を休止した。14年に再開したアート館は「ネタの第2の故郷でしたが、もう第1の故郷になりましたね。大阪で新ネタを作って、それを全国に広める。実験空間として冒険できる、ジァンジァンそのものの空間。こんなに若々しくなれる場所はないです。ぜひ、足を運んで見届けてください」。

【一人芝居の原動力】

一人芝居の原動力は?


「人間で生まれた以上、人間のこと知りたい。オギャーと生まれて、それなりの人生送って亡くなる。一人ひとり、その中に言い表せないものがいっぱい詰まってる。それがほんとに不思議で尊いし、僕もその一人。それを舞台に上げないともったいないと思う。一人でやれば、ほかの人に迷惑もかけないしね(笑)」。

今後は「現在の作家までやりたいです」というイッセーさん。さらに、漱石をカバーしたイッセーさんは今、モノローグ形式でシェイクスピアをカバーする小説を雑誌に連載している。例えば「ロミオとジュリエット」の乳母が、ジュリエットが死んだため実家に帰ったら孫がいて…とか。「マクベス」の殺し屋たちが相談してるシーンとか。これが一人芝居になったら、絶対ウケる! 観たい! 今後もアート館で観続けます!

STAGE イッセー尾形の「妄ソー劇場」~文豪シリーズ その2~ 日替わりプラス1 チケット発売中 日時:4/4(木)・5(金)19:00、6(土)・7(日)14:00 会場:近鉄アート館 料金:前売5,000円、当日5,500円 問い合わせ:会場06-6622-8802 HP:http://issey-ogata-yesis.com/index.html

高橋晴代・はーこ

この記事の画像一覧(全8枚)

キーワード

ページ上部へ戻る