松井玲奈が小説家に、新たな“挑戦”支える想い「過去は振り返らない。常に前へ」

2019年4月5日 9:00更新

東京ウォーカー(全国版) 鳥居美保

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初の短編集『カモフラージュ』(集英社)が4月5日発売。作家としての松井玲奈へインタビューを行った

初の短編集『カモフラージュ』(集英社)が4月5日発売。作家としての松井玲奈へインタビューを行った
撮影:TAKU KATAYAMA

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昨年、役者の松井玲奈が『小説すばる』にて『拭っても、拭っても』を発表し小説家デビューを果たした。小説を書くことになるとは想像もしていなかったという松井は、それまでも書評やエッセイなどで文才を発揮していたが、以降も作品を書き続け4月5日(金)に初の短編集『カモフラージュ』(集英社)を発売するに至った。作家としての松井玲奈に、「未知の領域で不安が大きかったけど、発表するしないではなく、まずは挑戦してみた」というデビュー作の制作秘話や役者業と執筆の両立、新しいことへ挑戦するエネルギーの源について語ってもらった。

執筆は“0から1にする”喜び、「不安だけど、まず“挑戦”してみようと思った」

松井玲奈 物語を考えるときは「こんなことがあったらいいな」より「イヤだな」ってところから始めることが多いですね。

松井玲奈 物語を考えるときは「こんなことがあったらいいな」より「イヤだな」ってところから始めることが多いですね。撮影:TAKU KATAYAMA

――まず、小説を書くことになった経緯から教えて頂けますか?

【松井玲奈】文章を書くことは元々好きで、その中でも、エッセイは自分に合っているな、と感じていました。小説を書きたいという気持ちは全然無かったです。想像もしてませんでしたが、私の文章を読んだマネージャーさんが、小説を書かせたら面白いのではないかと思ってくれたみたいで、水面下で小説の話が進んでいて。書いてみない? と言われたのが、去年の5月ぐらい。経験が無い未知の領域なので、不安が大きかったんですけど、発表するしないではなく、まずは挑戦してみようと思い、書き始めました。

初の短編集『カモフラージュ』(集英社)が4月5日発売。

初の短編集『カモフラージュ』(集英社)が4月5日発売。

――タイトルを『カモフラージュ』にした理由は?

【松井玲奈】人間って、誰でも化けの皮を被っているというか、そういうモノに覆われて生きていると思うんです。この短編集に収録されているどの作品の登場人物も、何か一つ隠しているモノがあって、それを破ったり、脱したりして、新たな自分に出会ったりします。そのイメージに一番ピッタリくる言葉は何だろう…と考えたときに、この‟カモフラージュ”というワードを思いつきました。

――本が出来上がって今どんな想いですか?今までには無かった感情が生まれた、とか?

 【松井玲奈】CD はたくさん出していますけれど、それは、与えられた1をどうしていくか、という作業だったし、スパンが早すぎて正直、いつ何が出たのかもわからない状態だったんです(苦笑)。でも本は、0から始めてそれを膨らませていく作業で。作品のジャンルがバラバラだったので、書いている最中は、まとまったときにどう見えるのかが客観的にわからなかったんですけど、表紙の装丁が上がって、1冊の本になっていく過程で0から1になったカタチが見えたのがスゴく嬉しくて。そこからとてつもなくこの『カモフラージュ』という作品に愛着が湧き始めました。

――収録された短編は、恋愛モノからホラー系までジャンルはさまざまですが、どの作品の登場人物も、基本的に人付き合いがヘタですよね(笑)。

【松井玲奈】そこは私に近いかもしれないです(笑)。人がある地点から変わっていくのを表現するのに、マイナスからプラスへの変化、というのが今の私には書きやすかったんだと思います。人間の内側にある感情に興味があるし、好きなんですよ。

役者業との両立…移動中に執筆時間を確保する努力

松井玲奈 どの作品も‟自分の子”なので愛着がありますが、とてつもない安産でほぼ初稿のままOKが出た、という意味で、『完熟』という作品が気に入っています。

松井玲奈 どの作品も‟自分の子”なので愛着がありますが、とてつもない安産でほぼ初稿のままOKが出た、という意味で、『完熟』という作品が気に入っています。撮影:TAKU KATAYAMA

――ご自分に近い、とおっしゃいましたが、自分を投影して執筆した部分はありますか?役者さんだから、物語の世界に入りこんで、登場人物になりきってセリフを考えたりとか。

【松井玲奈】それはないですね。箱庭の中でいろんな角度にカメラを置いて、完全に俯瞰で見てる感じです。実際に私が見たり感じたりした一場面が入ってる部分はあるんですけど、自分を投影して書くことは、あまりしないようにしています。

――では、役者さんとして、作品の中で演じてみたい役はありますか?

【松井玲奈】どれもやりたくないです(笑)。もし映像化したいと思ってくださる方がいたとしたら、それは嬉しいな、と思いますけど、私が演じることは全く考えていません。作品として楽しんでもらいたいのに、私が演じてしまうと、‟松井玲奈”が投影されちゃうので…。

――小説家と役者業、完全に切り分けているんですね。芝居の仕事と執筆が重なってた時期もあると思うんですが、切り替えはどのように?

【松井玲奈】時期が重なって、〆切ギリギリに提出したり、うまく書けずに何度も書き直しになったりしたこともありました。でも、1日の中で空いてるところがあれば、「ここは書く時間」と決めて、書けても書けなくても、移動の新幹線の中とか、原稿に向き合う時間は捻出していました。

「自分が書くようになって、脚本との向き合い方が変わりました」

松井玲奈 ジャンルはバラバラですが、全てに‟食”という共通テーマがあります。

松井玲奈 ジャンルはバラバラですが、全てに‟食”という共通テーマがあります。撮影:TAKU KATAYAMA

――小説を書くようになって、脚本の読み方に変化はありましたか?

【松井玲奈】このセリフを脚本家の方はどういう思いで書いたのか、を、スゴく考えるようになりました。私とは言葉の並び順が全然違うセリフがあった場合、今までは自分が言いやすいように変えたりしてたんですけど、「これはこの作家さんのこだわりだから、守らなきゃいけない」と思うようになりました。作家さんの思いを正しく解釈して演じなければ、って。こういう新しい視点で脚本を読めるようになったのは、役者としてプラスになりました。

――脚本を書いてみたい、という想いは?

【松井玲奈】今はないです。小説なら、‟〇〇はこう思ったからこう言った”って補足ができるけど、お芝居は会話だけで説明してストーリーを進めていくじゃないですか。それって、本当に大変な作業なんですよ。執筆期間に『まんぷく』(NHK総合)の撮影が重なって、脚本を読んだときに痛感しました。私には書けないな、って。一度だけ、チャラン・ポ・ランタンのももちゃんに頼まれて、一人芝居の脚本を書いたことがあるんですけど、そのときもだいぶ苦しんだので(笑)、自分から芝居の脚本を書こうとは思わないです。

常に前向く松井玲奈「過去には戻らない。現在進行形を意識しています」

松井玲奈 この話には、どんな食べ物が合うかな、面白いかな、と考えるのは楽しかったです

松井玲奈 この話には、どんな食べ物が合うかな、面白いかな、と考えるのは楽しかったです撮影:TAKU KATAYAMA

――今や‟松井玲奈=役者“というイメージを持つ人の方が多いくらい、自然にお芝居の世界に居場所を作られていますが、今回、作家という分野にも活躍の場を広げました。新しい世界に飛び込み、存在感を発揮する秘訣はご自分で何だと思いますか?

【松井玲奈】‟今”をちゃんと繋げて活動していきたいと思っていて「松井玲奈は前を向いて、現在進行形で動いてます」というのを自分の中で意識するようにしています。自分から過去に戻らないようにするっていうか…。アイドルだったのもその当時の‟今”で、隠したり否定することではないし、私としてはアイドルはやり切って、次の世界に来たと思っています。もし今再び、‟アイドルとしてステージに立たないか?”と言われても、そこにはもう戻らないですね。‟終わったら終わり"。今回の作品に関してもそうなんですけど、書き終わったら、そこまで。その物語のその後に思いを馳せるようなことはしません。

【松井玲奈】でも、私のことを今でもアイドルだと思っている人や、今回の小説を「ホントに自分で書いたの?」 って言う人は絶対いると思うんです。それに対しては、‟そう思われてしまうんだな”と受け止めて、そういう方達にも、今私がやっていることを知ってもらえるように努力していけばいい、と思ってます。それはお芝居の仕事もそうですし、今回の小説を出版したことにも当てはまりますよね。

――常に前を向く…ということで、2作目の構想はすでにあるのでしょうか?

【松井玲奈】特にはまだないですけど、出せるチャンスがあればいいな、とは思っています。まずは、この『カモフラージュ』をたくさんの方に読んでいただきたいです。いろんなジャンルのお話があるので、どれか1つでも面白いと思ってもらえたら嬉しいですね。

――発売されて、本屋さんで平積みになってるのを見たら、また感慨もひとしおでしょうね。

【松井玲奈】はい。嬉しくて一日中ずっとその棚の前に立っていそうです(笑)。

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