ペナントより過酷!?毎試合入替え戦を行うナゴヤドームの売り子事情
東海ウォーカー
今年もプロ野球が開幕し、各地で熱戦が繰り広げられている。そこで今回スポットを当てたいのが、野球観戦の楽しみの一つとしてすっかり定着した「ビールの売り子」の存在だ。なかでも独自のシステムで運営しているナゴヤドームのビールの売り子の裏側を紹介したい。

ナゴヤドーム独自のシステム!自社採用&入替え戦!
多くの球場では複数の業者の売り子が出入りするなか、中日ドラゴンズの本拠地、ナゴヤドームを運営する株式会社ナゴヤドームでは自社で一括採用。雇用のリスクを背負いながら独自のシステムで売り子を管理し、売上の確保とサービスの向上に努めている。なかでもユニークなのが、アイドルグループも驚くような入替え制システムだ。
「他の球場ではビールの銘柄ごとに業者さんが売り子さんを採用から管理、運営まで行うケースが多いようですが、私たちは自社でアルコール類の売り子は一括採用し、銘柄や販売エリアを振り分けています。銘柄や販売エリアによって売上は大きく変わるもの。売り子さんには規定の給与に加えて売上に応じた歩合が支給されますので、販売しやすい条件で働いたほうが有利です。平日は80~100名程度、週末は100~120名程度が出勤してくれますので、出勤人数や券売状況を考慮して配置を考えます。6〜8名を14カテゴリーに分けて、前の試合の売り上げや出勤したかどうかによってその日の銘柄や販売エリアを決めています」(ナゴヤドーム飲食部・杉浦氏)

例えばカテゴリーをD1~14とし、一番売れる確率が高い銘柄・販売エリアをD1とする。D1に配置された8名は、D1内でビールやつまみの売上を競い下位数名と下のカテゴリーのD2の上位数名が入替えとなる。D2やD3、D4やD5の間も同様で、そうした入替えが毎試合行われているのだ。
「アルバイト1年目は最も下のカテゴリーからスタートし、少しずつ上を目指していくことになります。バイトを休めばカテゴリーは下がる可能性が高い。アルバイト代に直結するわけですから真剣な子が多いですし、私たちも個人に肩入れすることがないよう、客観的かつ公平な視点を大切にして売り子さんを管理しています」(同・杉浦氏)
常連客を作るための工夫も!最強のスピード接客術
売上アップには、指名してくれる「自分の常連客」の存在が欠かせない。ユニフォームは銘柄によって変わるので、常連客を作るには顔と名前を覚えてもらうしかない。よく見てみると、カラフルなヘアクリップやシュシュなど、ヘアアクササリーを付けている子が多い。「レインボーのシュシュの子」など、自分の存在を認識させるテクニックの一つなのだろう。

また、ナイトゲームなら販売可能な時間は、最初のミーティングが終わり次第17時頃から21時までの最大4時間=240分。ビールサーバーの補充のためバックヤードに戻る時間を引くと、チャンスは200分程度。昨年の最高記録は1日374杯とのことで、この売り子は1分当たり約1.87杯を販売したことになる。

「常連様を作るため、一度の接客機会に深くコミュニケーションを図るのが正解というわけではありません。お釣りの受け渡しなどをしながら、ほかにビールを求めている人がいないか周囲を観察する、ビールを飲み干す時間を頭に入れておく。そして、目の前のお客様に心地よい接客を提供する。そうした積み重ねが差となって現れます。結果を見ていると、明るくて前向きな子に常連様が生まれる傾向があります。頑張っている姿を応援したくなるのがお客様の心理なのかもしれませんね」(同・杉浦氏)

常連客から出張先のおみやげなどの贈り物を受け取ることもあるそうで、「それもお客様の楽しみ方の一つですし、現状の弊社のルールでは止める権利もありません。個人の判断に任せています」とも。そうした出会いもこの仕事のおもしろさだろう。華やかに映る舞台の裏では、応援する者やされる者、喜ぶ者や悔しがる者もいる。プロの試合同様に、ナゴヤドームの応援席では今日も熱い人間ドラマが繰り広げられている。
初野正和
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