斎藤工「個性が渋滞している現場だった」映画『麻雀放浪記2020』大阪舞台挨拶

2019年4月11日 19:00更新

関西ウォーカー

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今や250万部を超える阿佐田哲也の大ベストセラー小説「麻雀放浪記」。1984年には和田誠監督により映画化され、その大ファンだと公言する斎藤工が10年の歳月を掛け、プロジェクトを発信。内容を一新し「凶悪」(2013年)や「孤狼の血」(2018年)で知られる白石和彌監督がメガホンを取り、35年振りに再映画化。タイトルを『麻雀放浪記2020』とし、4月5日より全国公開されている。公開2日目となる4月6日、大阪市北区の梅田ブルク7にて、上映前に斎藤工と白石和彌監督が登壇し舞台挨拶を実施。その後マスコミ向けの合同取材会を行った。

4月6日(土)大阪舞台挨拶が開催され、(左から)斎藤工と白石和彌監督が登壇した


最初に斎藤が「この映画はこの時間から観る映画ではないと……」と述べると客席から大爆笑が起こり、続けて「胸焼けを起こす最高の映画です。今日は楽しい時間を過ごして下さい」と第一声。白石監督は「毎回必ずこの映画の紹介の時に『(ピエール瀧の逮捕によって)一時公開が危ぶまれた』などの枕詞が付くのだが、無事に公開できたことを嬉しく思っている」と述べ、更に「工君がずっと温めて、それに僕も乗せさせていただいて、一生懸命作った映画です」と挨拶した。

無事公開となったことについて、斎藤は「単純に嬉しい。『公開が危ぶまれた』と言われているが、そういう意味では企画段階から危ぶまれていた」と述べ「和田誠版の『麻雀放浪記』をご覧になった方や原作をリスペクトする方達からは『なぜ映画化するんだ』と止められたこともあった。それも正論だとは思ったが、素晴らしい仲間が増えていき、どんどん強靭になっていった」とプロセスを明かし「それも『麻雀放浪記』らしいなと思っているので、僕はこの日を信じていたし、大阪の皆さんに愛される映画だと自負している」と作品にかける想いを語った。白石監督も「単純に嬉しい」と述べた上で「工君が血の滲むような努力で二十歳の童貞を演じていたので、それを届ける前に無くなるというのはちょっと違うだろうなと思ったし、他のキャストもみんな変てこりんな役を一生懸命やってくれたので」と心境を述べた。更に、最近は「映画観ています」というよりも「(公開に踏み切ることを発表した)会見観ました」と言われることが多いと明かし「今の流れに逆らって『何かを守らなければならない』という自分の想いを話したのだが、それが結果この『麻雀放浪記2020』という作品だったというのは、運命を感じるし、誇りになったと思っている」と心境を吐露した。

構想10年でやっと本作の公開にこぎ着けたという斎藤工


斎藤が長年構想し、やっと公開に至った本作。経緯について斎藤は、原作者の阿佐田哲也の自伝「明日泣く」(2011年)を内藤誠監督が実写化した際、斎藤が阿佐田の役を演じたことが縁で阿佐田の夫人・孝子さんと出会い、その際「いかに『麻雀放浪記』に影響を受けてきたかというのを熱弁していたら、権利を全部持っている孝子夫人が『じゃあ、あなたが映画にしたら』と仰ったという本当に二人の雑談から始まった」と明かし、続けて「その時はまだその重いものを背負うキャパシティを持っていなかったため、すぐにどうということはなかったのだが、本当にそこから『この人がいなきゃ』という方達がこの作品を具現化することに尽力して下さり、今日を迎えている」と言及した。更に「僕が出演するという思いは途中まで全くなく、実は他の方が主演でという台本が制作されたりという期間もあった。最終的には来年オリンピックがやって来るこのタイミング、オリンピックの招致が東京で決まったというのもこの10年間の中にあった大きな出来事だし、Jアラートが鳴っている中で書かれた台本ということもあり、置かれている状況というのも10年前とは違い、それらが落とし込まれているので、全てが必然だったのだなと今は思っている」と言及した。

1984年に和田誠が監督を務めた作品を新たに映画化することについて白石監督は「プレッシャーでしかなかった」と言うも「阿佐田先生が戦後を舞台にして作った意義は何かと色々考えた時に、脚本を作っていた時の状況や情勢を考えると、この時期にやる意義は見出せるのかなと思った。阿佐田先生が『麻雀放浪記』で書かれていた魂をこの映画の中にも落とし込めたのかなと思っている」と語った。

チャラン・ポ・ランタンのもも、ベッキー、的場浩司、岡崎体育など個性的なキャストが多く出演する本作、現場の雰囲気について斎藤は「個性が渋滞していた。普通でいることが目立っちゃう感じ。全部盛りみたいな現場で、失礼な言い方だが、妖怪大戦争みたいだった」とし、キャスティングの段階から「『麻雀放浪記』感があった」と振り返った。

再映画化の監督を務めることとなり、「当初はプレッシャーでしかなかった」と述べる白石監督


そんな現場について白石監督は、「出来上がってきた脚本が次から次へと理解不能なことが沢山あり、それをどうこなしていこうかということで一杯だった」とするも、「みんなのやっていることをゲラゲラ笑いながら撮っていた。個性の渋滞だけでなく、やっていることも渋滞していて、めちゃくちゃ面白い現場だった」と回想した。

大阪の印象について斎藤は、舞台挨拶前にインタビューを受け、その時のアナウンサーが「すごく清楚なのに、パンプスだけがヒョウ柄だった。さすがだな、獣がどこかにいるんだなと思った」と述べ、再び会場中が爆笑した。白石監督は大阪で映画を撮ったこともあり「よく来るし、ご飯も美味しいので、大好きだ」とした上で、本来は斎藤演じる坊や哲は東京に居場所がなくなり、大阪に流れて来るという話なのだが、今回は設定を変えすぎたため東京にて撮ったとし「もしこの映画が大ヒットして、続編という話になったら、大阪編も撮ってみたい」と想いを明かすと、観客から拍手喝采となった。

最後に白石監督は「色んな気持ちを込めて作った映画です。ようやく公開できたことが嬉しいし、また続編も作れたらいいなと思っている。是非応援していただければと思います」と挨拶。斎藤は「二十歳の童貞を何の違和感もなく演じている斎藤です」と観客の笑いを誘い「僕は映画が好きで映画館に通い、今の仕事を志したのだが、映画館に何を求めるかと言うと、非現実、日常に無い体験なんです。そこを経由し、現実に戻って来る何かが、自分の血となり肉となりという経験をできる魔法の箱だと思っている」と映画に対する想いを語り、続けて「白石監督の作品は他じゃ出会えない、テレビじゃ観られない、ここに来なきゃ出会えないという近年少なくなってきた貴重な貴重なフィルムメーカーだと思う。そんな白石さんと本作でご一緒できたことは本当に誇らしいし、皆さんに今から体験していただく摩訶不思議な非現実、そしてそれが巡り巡って皆さんの日常に何かが繋がっていくことを願っております」とメッセージを述べた。そして、本作は賛否両論真っ二つに分かれていることを明かし、「『否』でもいいと思うので、この作品を皆さんの近い方に伝え、育てていただけたらと思っております」と締めくくり、舞台挨拶は終了した。

白石監督から「続編を作るとしたら、大阪でと考えている」と嬉しい発表も


続けてマスコミ向けの合同取材会では冒頭に斎藤が「構想10年と聞くとなかなか長い道のりだと見えると思うが、僕としては白石監督はじめ今回のスタッフの方々がこのプロジェクトに参加して下さった頃から始まったと思っている。『麻雀放浪記』を白石和彌監督が撮るというのをいち映画ファンとして観たいという気持ちと、『何が起こるんだろう?』という好奇心のもと、本作の準備、撮影、完成に寄り添え、夢のような時間だった」と回想し、続けて「公開まで困難の無い映画はほとんど無いと思うが、本作が倒れかけても立ち上がれたのは、故・阿佐田哲也さんが導いてくれたんじゃないかと思っている」と思いの丈を語った。白石監督は、和田誠監督の傑作がある中で本作を制作する意義を考えながらスタートしたと述べ「出来上がった脚本が作っている僕らの想像の斜め上を行くものだったので、『ずっと考えてきた斎藤工さんからまずNGが出るだろうな』と思っていた」と胸の内を明かすも、斎藤は「有難うございます。やりましょう!」と全てを許容し、喜んでくれたと言い、それが最大の背中を押された要因だと語った。続けて「単純に喜んでくれない人もいるかもしれないが、映画そのものは楽しいものが出来たし、無事公開できて良かった。試写も行わなかったので、どんな反響が来るのかと楽しみだし、何より去年の8月から僕らにも試写を観せてくれなかったので、さっきも工君と『早くもう1回観たいね』と話していた」と率直な気持ちを語った。

賛否がはっきりと分かれるという本作、周囲の声として斎藤は「思いのほか賛が多い」とし、自身が参加した人間ではあるも、目線は常に客席にあるとした上で「自分にとっては愛おしい作品だし、この作品が響く人達というのは僕にとっては信頼できる方達なんです。『あっ、この人が評価してくれているんだ』と思う人達が評価してくれているという喜ばしい流れが来ている」と述べた。

当初の企画段階では、自身の出演は考えていなかったという斎藤。その理由として「シンプルに映画ファンとして『麻雀放浪記』を特に今の若い世代の人達に伝わり、そして原作にたどり着くきっかけとなるものを作品としてもう一度蘇らせられたらなという一念だったので、そこに僕がどう関わるかというのは、サポートに徹するべきだと思っていた」と言及。巡り巡って坊や哲の役が自身のところへやってきたと経緯を語った。

和田誠監督の「麻雀放浪記」では、坊や哲の役を真田広之が演じていたが、本作で同じ役に挑んだ斎藤。役へのアプローチとして「真田さんの坊や哲も大好きで大ファンなのだが、同時に原作の阿佐田さんの書籍による坊や哲の像というのが僕の中であり、そこに向かおうという意識をした」と述べた。

舞台挨拶後、マスコミ向けに合同取材会が開催され、様々な質問に答えた二人


続いて、キャストに逮捕者が出たため公開が危ぶまれたことについて斎藤は「構想10年と言いながら、意外と焦り、ショッキングだった。間近に公開が迫っている本作もそうだし、ピエールさんが今まで出演していた作品、これから出演される別の作品がまずどうなっていくんだろうというのを客観的に考えていた。不思議と『自分の構想10年の作品が……』という思いはなかった。もちろん絶対に許されることではないが、今の自主規制の風潮が過剰だと思うし、この一件がどれだけ波紋を起こしてしまうだろうと危惧していた」と言葉を選びながら語り、本作の公開に関しては「ただただ待つしかなかった」と述べた。今回ノーカットでの公開となったことについては「東映さん、白石監督、その他のスタッフ陣でなければこのタイミングではできなかったのではないかと思うし、彼らの決断が多くの映画人、放送業界の人間の一つの選択肢、一つの希望に確実になっていると思う」とコメントした。白石監督は「第一報を聞いた時には、自分にもこういうことが起こるんだという驚きと、気持ちとしてはノーカットで上映したいというのがあったが、場合によっては手を加えなければならないこともあるのではないかと思っていた」と述べた。また会見で「作品に罪はない」と述べたことについて「それは原則で、今回瀧さんがコカインで捕まったが、本作で瀧さん演じる役がコカインを吸引しているシーンがあったり、禁止薬物を売ってるシーンがあればそれは難しいと思う。またワイドショーの取材で『作品に罪はないと仰いますが、人殺しでも同じことを言えますか?』と言われたが、そんなわけはないじゃないですか。上映するという姿勢を持つことが原則で、特例で上映できないということは状況により当然あることだと思う」と語り、更に「上映待機作や放映待機作は仕方ないかもしれないが、過去作は一度世に放ったもので、公共の財産でもあるため、一律見られなくするのは違うと思う」と考えを明言。その上で「賛否両論あるのは受け取るしかないと思う。あくまでも禁止薬物反対の立場だし、今後どれだけ危険なものであるかという啓発運動はしていきたい」と語った。

今ピエール瀧に思うこととして斎藤は「猛省していただきたいと思うが、一共演者として、これから更生されていく背中を見守っていきたいし、その責務はあると思う」とし、白石監督は「ちゃんとしかるべきところに謝り、罪を償ってほしい。あとは友人として治療や社会貢献など協力できることはしていきたい」と想いを語り、取材会は終了した。

南華凛

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