はーこのSTAGEプラスVol.63/中川晃教、999で宇宙の旅再び 「鉄郎役に運命を感じました」
関西ウォーカー
演劇ライターはーこが贈るWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.63をお届け!
【3度目の奇跡】
中川晃教。2001年にシンガーソングライターとしてデビューした翌年、日本初演の「モーツァルト!」でミュージカルに初出演した彼を初めて観た。キラッキラに輝いていた。声も姿も。「この役をやるために生まれて来た人だ」と思った。ハマリ役という言葉以上に、役と俳優とのその衝撃的な出会いに興奮した。長いエンタメライター歴の中で、滅多にないうれしい瞬間。が、その時以来、再演を重ねる名作なのに彼のモーツァルト役の印象があまりに強すぎて…。

アッキーこと中川晃教は、その後も多くの舞台に出演、音楽活動と俳優活動を続けていた。私は音楽活動をする彼の舞台を見たことがない。でも、俳優活動では、彼が気に入っている役や作品、または仕事として向かっている舞台。その違いがわかるようになった。正直な人やね…。
16年、次にアッキーは「ジャージー・ボーイズ」のフランキー・ヴァリ役に出会った。18年に上演された関西初演の会見で「生涯に2度も代表作を持てるなんて」と彼は言った。オーディションを受け、練習を重ね、ヴァリの声を自分のものにして臨んだ舞台。アッキーの声でしか歌えない役だった。自分以外にできない役を持てる。なんて幸せな人だろう、と思った。
そして、アッキーはどうも3度目の出会いを果たしたらしい。「この役に運命を感じた」と言ったそれは「銀河鉄道999(スリーナイン)」の星野鉄郎役。“得たらしい”と書いたのは、昨年上演された舞台を私は観ることができなかったからだ。そして今年、「舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠」の会見に出向いた。
【「銀河鉄道999」】
「銀河鉄道999」って、知っていますか? 今回は劇場版公開40周年記念作品。私は、世代的に一応、テレビアニメも映画も。ゴダイゴの歌もね。松本零士作品では「宇宙戦艦ヤマト」もファンだったし、ここ数年は両作品ともにパチンコで身近に感じていて…。
ところで今回の舞台は、前作「舞台『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~」の続編だと聞いた。さらに、この2作で完結する作品だと。ショック! でも、前作を観た人、私のように観れなかった人、また「ミュージカルや舞台初心者の人にも、入門編のような作品になると思う」とアッキー。「今回は続編だけど、まったくの新作です」。

【物語と見どころ】
星野鉄郎とメーテルが旅に出て機械伯爵を倒すところまでが前作。あ、基本的な「銀河鉄道999」のお話は、ネットで検索してくださいね。今回の続編はオリジナル。鉄郎と最大の敵プロメシューム(クイーン・エメラルダスとメーテルの母親。ラスボスやね)との対決、そして鉄郎とメーテルの別れまでを描く。
「永遠の命をテーマに、鉄郎が旅をしていく中でいろいろなことを経験し、成長していくことに心を寄せることができる物語です。宇宙の大河の中に浸ってもらえる重厚感と迫力があると思う」。また舞台版ならではの物語として「機械伯爵がなぜ人間を殺すようになったのか、またエメラルダスの顔の傷の秘密など、作品に登場するキャラクターたちの生い立ちや背景などを丁寧に演じていきます。それらが舞台版の醍醐味かと」。見どころのひとつとして「時がゆがんで、もう一つの999や鉄郎が現れるシーンがあります。時のゆがみ、これがどう演出されるか僕も楽しみです」。
【音楽】
前作で楽曲を提供したアッキー。「1曲の中に躍動感とか、転んでも起き上がって挑戦し続ける鉄郎のゆるぎなさのようなものを出せれば、と思って描きました。そのメインテーマ以外、今回は15曲すべて新曲です」。ミュージカルではないが、音楽劇だ。「音楽の中にオペラ的な要素もあり、また、ダンスも演劇的要素を持った振付で、歌と踊りと芝居がうまく組み合わさっています。物語にお客さんを誘う舞台ならではの効果を最大限に使って、『銀河鉄道999』を今再び、という思いでやっています」。

【松本零士先生のこと】
「先生は何回も観に来てくださって、すごく感動されてました。『僕の青春は999と共にあった。筆を置くまで、この旅は終わらない。つまり僕は書き続けるんだ』と」。エメラルダスの剣のさばき方なども自らアドバイスするほど、舞台を応援している松本先生。今回アッキーは「これは鉄郎の帽子です」と言う帽子を贈られた。
【アッキーより】
「今回の後半だけでも見どころ感じどころがたくさんあります。でも前回観た人は絶対観に来てほしい。今回までの1年間の時間が、この宇宙の旅の物語と重なるから。それが、なぜ999が今も愛されるのかに直結する部分でもあるから」。
鉄郎は16歳。「でも、子供じゃない。悩んでるポイントは大人と同じ」。確かにそう。そしてずっと16歳のまま、終わらない旅を続ける。アッキーは36歳。でもまったく違和感なく、舞台の上で鉄郎を生きることだろう。
「大人になっても、変わらず持ち続けていたいと願うもの。バイブルのように、ふと立ち返りたくなるもの」そんな「特別な何かを感じる役」に出会ったアッキー。滅多に観られない、ひとりの俳優のきらめきの瞬間を再び見届けたい。

STAGE
銀河鉄道999 劇場版公開40周年記念作品
舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠
チケット発売中

日時:5/10(金)18:30、11(土)13:00、18:00、12(日)11:30、16:30
※11日18:00、12日11:30終演後アフタートークあり
会場:梅田芸術劇場メインホール
原作・総監修:松本零士
出演:中川晃教、凰稀かなめ、前山剛久、矢沢洋子、
木下晴香(11日)・伊波杏樹(10日・12日)、
美山加恋、お宮の松、塚原大助(声の出演)、松下由樹(特別出演)、平方元基 ほか
料金:S席12000円 A席9000円 B席5000円
問い合わせ:東京音協(TEL:03-5774-3030)
HP: https://www.999-40.jp/
取材・文=演劇ライター・はーこ
高橋晴代・はーこ
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