はーこのSTAGEプラスVol.64/好感度大!注目したい俳優・矢崎 広を直撃インタビュー 「カーヴァーにハマってます」

2019年5月13日 16:21更新

関西ウォーカー 高橋晴代・はーこ

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演劇ライターはーこによるWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.64をお届け!

それは、ミュージカル「ライムライト」を観たあと、劇場近くのホテルで行われたリーディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」の合同取材だった。出席者は矢崎 広。「ライムライト」で、いわゆる“王子様役”だった彼は、その前の「ジャージー・ボーイズ」といい、近年とみにその存在感を示し始めている。2.5次元も、ミュージカルも、音楽劇も、ストレートプレイも、そして今回のような朗読劇もと、幅広く活躍中だ。自分自身の言葉を持つ、きちんとした受け答え。真摯に取り組む姿勢も謙虚さもあり、「うちの娘の婿に」的な好感度が高い。シュッとした好青年。初めて矢崎の素顔に出会い、最近にない新鮮な印象を受けた。

ミュージカル「ライムライト」で王子様役を好演!矢崎 広インタビュー

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【レイモンド・カーヴァーの虜に】

そんな彼が今回初めて出会い、虜になったのがレイモンド・カーヴァー。数奇な人生を送り、アルコール依存症を経て50代で肺がんで亡くなったアメリカの作家だ。中高年の男性を描いた作品がほとんどで、その作品世界は「カーヴァーの頭の中に潜り込んでしまったかのような印象を受けました。読み進める時は重たい扉を開けるようだったんですけれども、入ってしまったら抜け出せなくて、出る頃には虜になっている不思議な世界」。

トリックもオチもない世界に「僕は“おっとっと”と思いますけど、皆さんもきっと“おっとっと”と思うはず(笑)。そこが最高、そこが妙」。矢崎が読む(演じる)のは、「収集」と「菓子袋」の2作だ。「謎だらけで、謎は一切解けない。迷路に迷い込む。でも、この迷路はおもしろいな、みたいな魅力がすっごくある」。

【すごい人×すごい人】

 「レイモンド・カーヴァーの世界」の訳者は、あの村上春樹だ。矢崎は最初に原作を読んだ時「これをリーディング・シアターで読みたい」と思った。「想像を膨らませ、想像の先を行くような言葉がどんどんある」と魅力を語る。「カーヴァーの言葉が、村上さんの訳だからこそと思うんですけれど、書かれている場所や空間がリアルに想像できる。そこも、さらに迷路に迷い込ませる一つの要因かなと思います」という矢崎は「村上さんの本は、映画化された小説などもおもしろいですが、『おおきな木』という絵本などの訳者としての村上さんの作品も、とても素敵だなと。だから、今回は、すごい人とすごい人で二重に複雑におもしろくなっているイメージ。村上さんの言葉でパフォーマンスするのは光栄なことなので、楽しみです」。

【大先輩に囲まれて】

 今回のリーディング・シアターの出演者は4人。手塚とおるは、昨年の同公演から続投し、3名は初参加だ。25日㊏は手塚と仲村トオルが出演、矢崎は26日㊐に平田 満との組み合わせで出演する。「こんな大先輩の方々の中で僕だけ一人30代前半なので、光栄でもありますが、緊張しています。公演が始まったら尊敬する皆さんの舞台を、袖で直立不動で観ていると思います(笑)」。

 終演後に用意されている演出家と出演者2名のアフタートークも楽しみだ。きっと興味深い話が聞けるはず。

【リーディング・シアターの演出】

 今回、「レイモンド・カーヴァーの世界」を提案したのは、演出の谷 賢一。彼も、カーヴァーの世界にハマっている。舞台ではピアノの生演奏が入り、作品世界を垣間見せる映像が俳優のバックに流れる。おもしろいのは、読み手ならではの作品を選び、その人ならではの読み方で読み進んでいくこと。動きながら読む人、椅子に座ったまま読む人、立って読む人…。今回は、稽古の中で谷と共に探りながら、矢崎ならではの作品世界が演出されていくのだ。「菓子袋」は父と息子の話。「僕の年齢で読む方がいいのではないかな。若い世代の方々が、僕を扉にしてカーヴァーの世界に入ってくれるような読み方にしていきたいと思います」。

【朗読劇の魅力】

矢崎 広が考える、朗読劇の魅力とは?

 最近はさまざな朗読劇が上演されている。朗読劇をやる前は、どういったパフォーマンスになるのかと思っていた矢崎だが「僕はいま、朗読劇というアプローチが大好きです。お客様との共有の時間がすごくある。役者が読んで、お客様と一緒に想像を膨らませながら物語を作るという過程に、とても魅力を感じています」。カーヴァーの作品は「読み手の想像をどんどん膨らませて、その想像をどうするかは僕らにゆだねられているような印象かな」。今回は初めて一人で読む舞台だ。「僕にとっては挑戦です。でも、楽しみです、すごく!」。

【熱烈ファンも、初心者にも】

 カーヴァーのファンは、実はものすごく多いらしい。「それも、思い入れの強い方がたくさんいる。その方たちにも応えていけるぐらい、朗読劇というパフォーマンスがエンタメを通して説得力を増していけたら」。また矢崎は自分のように今回初めてカーヴァーを知る、という人たちに「難しい印象を受けるかもしれませんけど、食わず嫌いしないで食べてみな、おいしいよっていう感じ(笑)。たくさんの方に観に来ていただき、そして皆さん、カーヴァーの世界からぬけられなくなっちゃえばいい。そう思うほど魅力がたっぷり詰まっています。演劇大好きという方には絶対おすすめなんですけど、構えずにふらっと来ていただいた方が迷い込んでしまうかもしれない。お客様が、むずがゆくなって帰ってもらうのが1番の楽しみです。そしたら僕は、やった!と思います(笑)」。

【自分の血がたぎることに挑戦】

 「これまでひとつひとつ、やって来たことが自分の積み上げになっていますし、すべての作品が糧です。これからも、きっとそうだなと思います。舞台でも映像でも、どんなジャンルの作品でも、僕自身の臨み方としては分け隔てなく全部一緒です」。役を決める基準は?「自分の中で血が騒いだら。演じたいとかおもしろいとか、なにか自分で信じられるものがひとつあると、ぜひやってみたいと思うし、今の自分はもうどんな役をいただいてもやってやるぞと。責任の重い役がどんどん増えてきていますので、自分よりも大きな役が来たら、そこに合わせてどんどん自分もデカくなっていかなきゃいけないと思っています。自分を一生懸命磨きながら、訳に追いつけ追い越せ、と。血がたぎることがあれば、どんどんいろんなことに向かって、挑戦していきたいと思います」。

プロフィール

1987年7/10、山形県出身。2004年にミュージカル「空色勾玉」でデビュー。ミュージカルからストレートプレイまで、多数の作品の経験を積みながら、ドラマ、映画、声優、CMナレーションまで多岐に渡り活躍中。近年の作品は、ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」(16・18年)、「ロミオ&ジュリエット」(17年)、音楽劇「ライムライト」(19年)など。ストレートプレイでは「人間風車」(17年)、「R&J」(18年)など、幅広い役柄に挑んでいる。

STAGE リ-ディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」チケット発売中

リ-ディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」撮影:岸 隆子

公演日時:5/25(土)14:00、26(日)14:00※終演後アフタートークあり 会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

作:レイモンド・カーヴァー 翻訳:村上春樹 演出:谷 賢一 作曲・ピアノ演奏:阿部篤志 出演:25日=仲村トオル、手塚とおる 26日=矢崎 広、平田 満 料金:¥4,500 問い合わせ:0798・68・0255(芸術文化センターチケットオフィス) HP: https://www.gcenter-hyogo.jp

取材・文=演劇ライター・はーこ

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