「貞子は入場無料」をなぜ新潟で? 企画力で勝負する、SNS時代の地方テーマパーク生き残り戦略
東京ウォーカー(全国版)

新潟県にあるテーマパーク「サントピアワールド」が、5月24日(金)に全国公開を控えた映画『貞子』と異色のタイアップ企画を展開している。同映画は、ハリウッドリメイクもされたジャパニーズホラーの金字塔『リング』(1998年)のシリーズ作品。レジャーコンテンツが多様化し、多くの施設は苦境に立たされ地方の施設は集客に苦しみ廃業を迫られるケースも少なくない今、どうして、ローカルテーマパークが『貞子』とタイアップを…? 今回、現地の様子を見るとともに、コラボの経緯や反響、さらに昨今の地方テーマパークの現状と“生き残り戦略”について同施設の常務取締役に話を伺った。
貞子コスプレで無料!施設側からの企画提案で実現

今回のタイアップキャンペーンの目玉は「貞子無料」。映画公開に合わせて、5月24日から26日(日)の3日間、貞子のコスプレで来場すると入園料が無料になるというものだ。また、それに先駆けて4月27日から、2つの企画を展開中。1つは園内に隠された貞子のパネルを探し当て、そこに書かれたキーワードを記入して応募するとグッズが当たる企画。もう1つは、映画のワンシーンを再現したセットで撮影ができ、その写真を「#サントピアで貞子」を付けてTwitter・Instagramに投稿すると抽選で映画の鑑賞券などが当たるといったもの。この一連のキャンペーンが実施に至った経緯を「サントピアワールド」の常務取締役の髙橋修さんと企画課の齊藤武志さんに聞いた。

「配給のKADOKAWAさんとは以前から付き合いがあって、今回も縁あって声をかけてもらったのがきっかけです」(髙橋さん)。「話を聞いたらすごく面白そうだったので、すぐに私たちに何ができるか考えました」(齊藤さん)。KADOKAWA側から「映画の公開に合わせて遊園地で何かできないか」と持ち掛けられたことがきっかけだが、ユニークな内容はサントピア側で考案し、コラボが実現したようだ。本作品は、「サントピアワールド」以外にも、各地のさまざまな企業やコンテンツとタイアップし、ユニークな取り組みを行って映画のPRにつなげている。「貞子無料」も、その一環だ。

そして、このインパクトのある企画が、映画『貞子』の主演女優でもある池田エライザも「すごいことやってる(笑)」(@elaiza_ikd)と、その内容に驚いたツイートを投下して拡散された。北陸エリアの家庭で浸透しているポリ袋の「アイラップ」公式も貞子が商品を持っているイラストを投稿したり、新潟観光協会のアカウントもなぜかサントピアの貞子を「なんてカオスなんだ」とTwitterで投稿。新潟を中心にひそかな盛り上がりを見せている。
「5000人合コン」やナイトアトラクション…“尖がった企画”で来場者数は右肩上がり

そもそも、「サントピアワールド」とは、新潟県阿賀野市にあるテーマパーク。前身の「安田アイランド」時代から数えて40年以上の歴史があり、日本海側・北陸エリア有数の規模を誇るが、新潟市の中心部から車で1時間ほどかかるアクセスの問題や、積雪の影響で冬季休園をせざるを得ないといった理由から、特に2000年代以降は苦境に立たされ、2011年には民事再生法の適用を申請した。お世辞にも好調とは言い難い状況であったが、ここ数年は来場者数が増加に転じているという。
その理由は、「ターゲットの再設定」だと髙橋さんは話す。「一般的には、遊園地のターゲットは小さい子供のいるファミリーです。しかし、少子化やレジャーの多様化が進む現在、そうした方たちだけをターゲットに施設を運営していくのには無理が生じ始めました」。そこで、ここ数年はあえて大人に向けた企画やアトラクションを導入するなどの取り組みに力を入れ始めたという。
2012年には一時全国でもブームになり今は定番化した「街コン」と地元情報誌「Komachi」とコラボして、サントピアワールドを1日貸し切りで「1万人潟コン」を開催したことも(実際の来場者数は約5000人ほどだった)。当時、新潟の若者の間で話題となり、イベント当日は「初めてサントピアに来た」という人が大半を占め、閉園まで大変な盛り上がりを見せた。2017年に開始した「オーロラフォレスト」は、プロジェクションマッピングを駆使したナイトウォークアトラクションで、若い女性やカップルから注目を集め、これを目当てに多くの人が全国各地から足を運ぶほど、人気を博している。
SNS時代の地方テーマパークの生き残り戦略、カギは企画力とネット拡散の相乗効果

ユニークな企画で少しずつファンを獲得してきた同テーマパークだが、今後の地方テーマパークの生き残りにはSNSの活用が不可欠と、髙橋さんは語る。「今回も池田エライザさんのリツイートがきっかけで、『貞子無料』が多くの人に届きました。今回のようなことを狙って行うのは難しいですが、上手に、戦略的にSNSを運用していければ、私たちのような地方テーマパークでも効果的にPRを行うことができると思います」(髙橋さん)。

実際、ネモフィラの花畑の写真がコスプレイヤーたちによって拡散されて来場者数が倍増した茨城県の「国営ひたち海浜公園」や群馬県の「ロックハート城」、フォトスポット戦略でSNSが活性化している「那須りんどう湖レイクビュー」、「いつ来ても空いているから待ち時間ゼロ!」「写真撮り放題!」と自虐ネタHPで話題となった「志摩スペイン村」など、インターネットやSNSがトリガーとなって集客を伸ばしたテーマパークは増えている。
スマホの所有率が8割に上るという今の時代。前述の通り、来場者数の低迷にあえぐ地方テーマパークは少なくない状況の中で、SNSは新たなプロモーションツールとして無視できない存在になっている。それを踏まえてSNSを活用した事例を見てみると、「SNS運営に力をいれている」だけ、「企画力がある」だけではうまくはいかない。その両輪がうまく機能することがポイントだということが分かる。つまり、地方テーマパークにおいては、ユニークな企画を考案し、それをネット世代の人たちにSNSを活用してPRしていくことが生き残り戦略のカギといえそうだ。そんな風に、尖がった企画を実施する地方テーマパークが今後も増えていくかどうか注視しつつ、24日からの3日間「サントピアワールド」が貞子で埋め尽くされることになるのかも注目してみたい。
typingbear 池田尚浩
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