香取慎吾と初タッグ!「影のある香取慎吾は色っぽい」 映画『凪待ち』白石和彌監督インタビュー

関西ウォーカー

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『狐狼の血』(2018)や『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017)など、毎年のように快作を世に送り出している白石和彌監督の最新作『凪待ち』(なぎまち)が6月28日(金)に公開される。

本作は『クライマーズ・ハイ』の加藤正人が脚本を手掛けたオリジナル作品。白石組初参加の香取慎吾が、人生につまづき、落ちぶれていく男の「喪失と再生」の物語を見事に演じ切っている。「香取さんとは、ずっといっしょにやりたかった」と語る白石監督に、俳優・香取慎吾の魅力やタイトルに込めた思いなどを伺った。

映画『凪待ち』の白石和彌監督にインタビュー


香取慎吾のいい意味での「孤独」を見てみたかった


この作品は、ギャンブルから足を洗い、恋人の故郷石巻で再出発しようとした男が恋人を殺され、次々と襲い掛かる絶望的な状況に飲み込まれてしまう物語。「香取さんと僕はほぼ同世代。トップアイドルのエンターテイナーとして日本に元気を届ける姿を見続けてきたわけですが、アーティストとして絵を描く時に顔をのぞかせる、いい意味での孤独、陰の部分を、ちゃんと見てみたかったんですよ」。そう語る白石監督は、香取慎吾に主人公のギャンブルに溺れる男・木野本郁男役を託した。「彼は、日本を代表する俳優だと思います。本人は『演じるのは苦手』と言うんですが、僕は、演じる能力の高さと、地肩の強さみたいなものを心底感じましたね。経験していることの量が、根本的に違うんだろうな。すごい役者です」と絶賛する。

身を引きちぎられるような絶望や裏切り。さまざまな悲劇に襲われる郁男(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS


そのすごさを特に強く感じたのは、郁男が自暴自棄になって大暴れをする祭のシーンだったという。「長回しの場面って、覚えなくちゃいけないアクションや確認するべき動線がたくさんあるんですよ。でも香取さんは、2回くらい確認すれば『いつでも行けます』と言うんです。理解するのがものすごく早い。振り付けに通じるものがあるんでしょうかね」と、現場対応力の高さに驚いたという。

郁男は恋人・亜弓(西田尚美)の故郷、石巻に引っ越して、亜弓の娘・美波(恒松祐里)と共に人生の再出発をしようとする。この行動が、今後の彼らの運命を大きく変えていくのだが「僕からは、あたかもドキュメンタリーをみているかのように、そこにいる人になってほしいと香取さんに伝えました。でももう衣装合わせの時点から、アイドルオーラを消し、薄汚れた服を着てもすごくマッチしていたので順応力がすごいな、と思いましたよ」と語った。

役者はそろった!白石組の常連と、女優たちの存在感


今作が、香取慎吾の影の魅力を際立たせるものだとしたら、妻の亜弓を演じた西田尚美の存在も重要だ。西田も白石組に初参加。「亜弓は郁男にとって姉さん女房的な存在。物語を最後まで引っ張るには、西田さんのかわいらしさと芯の強さを兼ね備えた存在感が必要でした」と語る。

再出発をした3人のささやかな幸せを壊すのは…(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS


「美波役の恒松祐里さんも、撮影当時19歳だったのですが、香取さんに対して物怖じせず、ちゃんとお芝居をしていて、大物の予感がします。アジアンビューティーのようなクールさや、子どものような幼い顔といった、いろんな表情が出せるところもいい。香取さんとの共同作業で、とてもよい相乗効果が生まれたと思います」。

定時制高校に通う美波。言葉少ないが漢気のある祖父の勝美(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS


白石組の常連、リリー・フランキーも、亜弓の父、勝美(吉澤 健)の世話をする隣人・小野寺司役として登場。監督曰く、「今回ばかりはどう演じていいか難しいな」と言っていたそうで、小野寺が郁男の人生にどのように絡んでくるのかも見逃せないポイントだ。

郁男たちと深く関わる、リリー・フランキー演じる小野寺(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS


撮影は被災地・石巻市。『凪待ち』に込めた思いとは?


ところで、今回の舞台は、宮城県石巻市。東日本大震災によって大きなダメージを受けた地域だ。なぜ監督は、この地を選んだのだろうか。「東日本大震災とは、一作家としてどこかで向き合わないといけないな、という思いがずっとあったんです。今回、香取さんが出演してくださるということで、彼とならそこに向き合えるだろうと思った」と答えてくれた。

監督は、震災について石巻の人々に取材をし、そこで聞いた言葉を漁師として海に出る勝美のセリフに取り入れている。『津波で海がだめになったのでなく、津波で新しい海になったんだ』という言葉だ。津波の記憶を乗り越えて心に平安という凪がやってきた、とも受け取れる言葉だが「最初に撮影を行った塩釜市に完成報告に行った時も、夜スナックへ行くと、ママが津波に流されて24時間電柱につかまったまま九死に一生を得たという話をしてくれたんですよ。今でこそおもしろおかしく話していますが、やっぱり町中には津波の痕跡が残っていますから、心のどこかで悲しみを消化できていないのでは、被災地の人々の心は、凪のように見えて凪はまだ来ていないのでは?と思いました」と話す。

一見凪のように見えても、心の奥底には不安がたゆたっている。悲しみを抑えながらも凪を待つ。その心情は誰にでもあてはまること。「この作品を通して登場人物とシンクロし、自分の心は今どうなんだ?と問いかけるきっかけになるのではないか、と思うんです。いまだに僕も『凪待ち』というタイトルには、いろんな意味があると感じていますから」と語った。

海に生きる勝美の言葉が郁男の胸にしみ込んでいく(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS


香取慎吾の色っぽさを見てほしい。石巻へも足を運んで


最後に監督は「転落した男の再生劇を演じる、薄ら暗い表情の香取慎吾を見る映画です。でも、色っぽいですよ、影のある香取慎吾は。体が大きいのも存在感があっていいですね」と語った。また「ぜひ石巻へも行ってみてほしい。町を歩くと、津波がここまで来たんだという痕がそこかしこに残ってますから、ぜひいろんな人と話をしてみてほしいです。そういうことを知る経験も大事だと思います」とロケ地・石巻への思いも語ってくれた。

映画『凪待ち』は、6月28日(金)より、TOHOシネマズ梅田ほか、全国ロードショー。

取材・文=ライター田村のりこ

田村のりこ

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