「ほんま皆のいいところが全部出てる」個性派キャストで新たな家族を描く 映画『おいしい家族』ふくだももこ監督インタビュー

関西ウォーカー

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母親の三回忌で故郷に帰った主人公・橙花を待っていたのは、なんと亡き母の服を着た父だった。離島を舞台に、穏やかに優しい眼差しで新しい家族のかたちを描いた映画『おいしい家族』が9月20日(金)に公開される。主人公・橙花には、ドラマ日曜劇場「この世界の片隅に」の主役・すず役で注目を集めた松本穂香が長編映画初主演を果たす。メガホンをとったのは本作が初の長編となるふくだももこ監督。「ほんま皆のいいところが全部出てるので、いい映画やなって思ってます」と笑顔のふくだ監督に個性あふれるキャストの魅力や作品へのこだわりを語ってもらった。

映画『おいしい家族』のふくだももこ監督。「おいしいポーズ」で写真撮影に応じてくれた。


「父さん、母さんになろうと思う」物語のアイデアはどこから?


映画『おいしい家族』はふくだ監督が2016年に制作した短編『父の結婚』を長編に再構築して作られた作品だ。母親の服を着た父親の青治は橙花に、実家に居候する和生を紹介し「父さん和生と結婚して新しい家族の母さんになろうと思う」と報告する。橙花と同様、思わず言葉を失ってしまいそうな父親の告白だ。物語を発想したきっかけを聞いてみると「『父の結婚』のときは明るい映画を撮ろうと思っていて。明るくするには誰か結婚したら明るくなるやろという考えのもと、誰が結婚したらおもろいかなってなって。オトンが男性と再婚する、かつオトンは母親の恰好している、やったら新しい物語が出来るんちゃうかなと思って。『父の結婚』のときは、ほんまそういう単純な理由であの流れになりました。『おいしい家族』はもっと深くテーマを追求していきました」と振り返る。

美しい離島を舞台に新たな家族を描いた『おいしい家族』(C)2019「おいしい家族」製作委員会


監督の思い描く家族を体現!個性あふれるキャスト陣


主演の松本穂香をNHKの朝ドラ「ひよっこ」を見て気にかけていたというふくだ監督。本作では「母さん」になる父親に戸惑いを隠せず、反発してしまう主人公・橙花を瑞々しく演じている。撮影中の松本について「穂香ちゃんは役的に外部の人間みたいな感覚やし、ずっと反発してるから、ちょっと皆と距離を取ってて。でもそれは役作りやし、橙花としてずっといてくれたから、すごく心強かったですね」と振り返る。

現場ではあまり多くは話さないタイプだという監督は、初タッグとなる松本とも撮影中は全然話さなかったそう。その理由を「一言言ったら120%で返してくれるから、すばらしいなあと思ってお任せしてたんですね。だから細かい部分でのコミュニケーションあんまり取ってないけれど、信頼はすごくしてて。終わってから、穂香ちゃんもそう思ってたって言ってくれて」とお互い大きな信頼関係があったことを嬉しそうに明かしてくれた。

母親になる父親、青治役の板尾創路は短編からの続投だ。不思議な雰囲気でまさにはまり役の板尾にふくだ監督は「あれは板尾さんしかいない」と断言。また、板尾自身も長編化を熱望しており「(長編化を)言っていいよってプロデューサーに言われて、その時会社勤めやったんですけど、会社で即行板尾さんに電話しました。『決まりました長編に』って言ったら『おお、おめでとうー!』言うて。『絶対出てくださいね』って言うと『OKわかった出る出る』って言うて下さって。喜んでくださりましたね」と真っ先に長編化の報告をしたと笑顔で語るふくだ監督。

橙花を演じる松本穂香と、青治役の板尾創路(C)2019「おいしい家族」製作委員会


人懐こく、チャーミングな笑顔が特徴で、青治の結婚相手の和生を演じる浜野謙太については「和生は俳優を本職としてる方じゃない方がいいなと思ってたんです。それで、ミュージシャンとしても活躍されているハマケンさんにオファーしたら、当初スケジュールが埋まってて駄目だったんです。けど、状況が変わりこっちに連絡が来て『やります、できます』って言ってくれて。すごい嬉しかったし、現場入っても和生は和生やって。ハマケンさんはちょっと悩んだりしたやろうけど、私にとってはハマケンさんが和生やったんで。もう何してもいいですって感じ」と絶賛した。

短編では家族にフォーカスした作品だったが、長編では町全体が物語の舞台だ。そこで新たに登場したのはモトーラ世理奈演じるダリアと三河悠冴が演じる瀧の高校生2人。短編にはない新たな雰囲気を作るモトーラと三河を「あの2人はほんまいいですね」と高く評価する監督。「始まりは三河君とモトーラちゃんを撮りたかったんですよ。高校生2人にすれば話も広がるし、あの2人も撮れるって思ったんです」と2人に惚れ込んで組み込んだ役だったと明かした。

撮影現場でも大人気!『おいしい家族』の絶品ごはん


『おいしい家族』のタイトルの通り、家族が食卓を囲んでごはんを食べるシーンが印象的な本作。家族が食べるメニューはふくだ監督が脚本の時点で考えたもので、実際に食事を作ったのは実はフードコーディネーターではなく美術スタッフ。「めっちゃ美味いんですよ、全部。昼ご飯となるとスタッフがハイエナの様に群がる」と笑うふくだ監督。

中でもキーアイテムとして登場するおはぎ。「作る工程が見えるものの方がいいなあと。かつ仏壇に供えられる。ほくほくのご飯ができて、俵型にして置くときにご飯がくたっとなる。あれをやりたくって、おはぎっていいよなって思いつきました」。

家族が囲む食卓にはいつも美味しそうなご飯が並ぶ(C)2019「おいしい家族」製作委員会


ユートピアを描く。ロケ地へのこだわり


撮影は伊豆諸島の式根島と新島で行われ、神秘的な入江や美しい海が登場する。ふくだ監督は「島で撮りたいというのは決めてたんです」とこだわりを見せる。

「両親が島出身で、子供のとき夏休みに行ったりしてて。うちは大阪の郊外やったんで、海があって山があって近所みんな知り合いで、軽トラの後ろに乗って海行って、原体験みたいな感覚でいいなあと思ってました。グーグルマップで色々な場所の島を見ていたら素敵な入江の写真を見つけたんですよね。式根島っていうところなんですけど、きれいやし、物語性がある」。

理想のロケ地で監督の思うユートピアを描いたという本作。あえて作品の中では島の名前は出さず「日本のどこか知らんけど、こういう家族や島民がいる島がどっかにあるんやないかなって思ってもらえたら」と観る人への思いも語った。

家族を演じる俳優たちの魅力からロケ地、音楽へのこだわりまで幅広く語ってくれたふくだ監督。


音楽はベテランの本多俊之。初タッグは大きな刺激に


耳に残る軽快な音楽も特徴的だ。音楽を担当したのは伊丹十三監督の『マルサの女』(1987)でも音楽を手掛けたベテランの本多俊之。ふくだ監督は映画を「伊丹さんみたいな、社会を描いて、でもエンターテインメントであって笑えて泣けてみたいな映画にしたい」という思いがあり、プロデューサーを通してオファーした。20代の若手監督であるふくだ監督と60代でベテランの本多だが「本多さんは自分が伊丹さんからオファーを受けたときの年齢差が、今の私と本多さんの年齢差で、伊丹さんと本多さんが逆転したような感じやったらしくて。『若い人に何かを返す時期が来たのかなって思った』ってめちゃくちゃ良いこと言ってくださったんです」と本多の言葉に感激したと振り返る。

出来上がった音楽も「もうイメージを越えて超えて作って下さって。『どこにはめようが、何をはめようがどうしてくれようが大丈夫だから君の好きなようにして』って言われて、ほんまに好き勝手してみせたら『いいなあ』とか言ってくれて」とにっこり。尊敬する大ベテランとの出会いに「私ももし今後もずっと映画界にいたとしたら本多さんみたいな人にならないといけないなってすごく思います。下を育てられるというか、何かを返していけること、ほんまそれが大事」と大きな刺激を受けたと語ってくれた。

映画『おいしい家族』は9月20日(金)より全国ロードショー。

松原明子

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