ニューアルバムのテーマは港街 クレイジーケンバンドが語る横浜愛!【後編】

横浜ウォーカー

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横浜市出身、横山剣率いるクレイジーケンバンド(以下、CKB)のニューアルバム「PACIFIC」が2019年8月7日(水)に発売される。テーマは「港街」。世界中の貨物船や人々が行き交う街に生まれたCKBならではのワールドワイドなトラックに、今も未来も、ルーツもぶっ込んだ全18曲を収録する。今回は、石川町にある「ウインドジャマー」に剣さんと訪れ、「PACIFIC」にもあふれる地元愛を語ってもらった!

【写真を見る】ニューアルバム「PACIFIC」には横浜中華街を舞台にした曲「クレイジーの中華街⼤作 戦︕」も収録(C)撮影=中村力也


横浜中華街は、時空の歪みを感じてグッとくるという横山剣(C)撮影=中村力也


——アジアの旅から戻ってきた感じの曲「クレイジーの中華街大作戦!」はいかがですか?

横山 もともと90年代の前半から演っていた曲なんですけど、「発三電機」というのは、横浜中華街にあったレコード屋さんのことですね。ここで結構アジアのレコードを買っていました。

——どんなレコードがあったんですか?

横山 フィリピン、インドネシアのダンドットとか、韓国、台湾、香港、中国。テレサ・テンの台湾語で歌っているものとか。韓国ロックの父と言われているシン・ジュンヒョン先生のレコードもそこで買ったり。得体の知れない、いろんな音楽がありましたよ。かなりいろんな影響を受けましたね。目をつぶちゃっている写真をそのままジャケに使っているものとか、印刷の版ずれとかも平気みたいなものとか、そういうのにグッとくる。版ずれってタイムトラベル感があって、時空の歪みを感じるんですが、僕の中華街のとらえ方はそれと同じで。アジア旅行から帰ってきて、中華街にまっすぐくれば、まだ旅行が続いている感じがするっていう。潜水夫が思いっきり潜って、地上にいきなり上がると目とか内臓が飛び出しちゃったりするから、圧力の変化を慣らす部屋に入るんですね。ああいう感じが中華街にはあります。いきなり家に帰ると寂しいけど、リハビリしてルーティーンに戻るっていう。さらに、上海で上海蟹を食べ忘れてきたとしても、ここにあるよって。香港で翡翠のピアスも買い忘れたけど、中華街で買えて助かった!とかって。

——NHK「ラジオ深夜便」でも流れている「Tampopo」は産業道路が出てきます。

横山 はい。これは、コンテナ積んだトレーラーが行き交う産業道路の道端のすすけたタンポポのイメージ。横浜に限らず川崎にも産業道路がありますけど、煤煙にまみれながらも力強く咲いているタンポポです。季節関係なく咲いているので、タンポポじゃなくて、なにか外来種の草花かもしれないですけど。見えた気がしたっていう、それだけで曲ができました。

——それだけできた!?

横山 ちゃんとは見てないんですけどね(笑)。小港橋のあたりから産業道路経由で走っている、本牧埠頭あたりで思い浮かんだ曲です。ですので、ミュージックビデオも主に横浜の港湾地域〜高速湾岸線を含めてドライブしているイメージが中心で、映画「キル・ビル」のように、敢えて合成した映像でパンパシフィックな雰囲気を出すみたいなことをやっています。

——映画というと、横浜を舞台にした北方謙三さんのハードボイルドを原作に映画「影に抱かれて眠れ」(2019年秋公開)の主題歌に「場末の天使」が決定したというニュースもありましたね。

横山 これは、(俳優の)中野英雄さんがプロデューサーとして映画を作るからと、曲を頼まれまして。書き下ろそうと思っていたんですけど、ずっとデッドストックしていた、この曲の存在を思い出しまして。今ならバンドにホーンセクションもいるし、イメージ通りの曲にできると思って。和泉(聖治)監督に聴いてもらったら、一発で気に入ってくれて。

——場末のイメージってあったんですか?

横山 まあそうですね。野毛のそばに都橋ってあるんですけど、大岡川にネオンが反射しているイメージです。福富町とか野毛とか日の出町とか。京急のガード下とか……。でも、台本と照らし合わせた時に、歌詞が映画とリンクしていないので、どうなのかなと思っていたんですよ。「そのままでいい」って言われたんですけど、やっぱり、ちょっと忖度して映画に寄せて歌詞を作り直したら、「だめ! もとのほうがいい!」と言われて、正直、うれしかったですね(笑)。ただ、戻したはいいんですけど、歌詞が浮かんでいない部分が数カ所あって、そこはメンバーのガーちゃん(新宮虎児)に手伝ってもらって完成に至った感じです。まあ、曲としての生命力は元の歌詞のほうがあるので「和泉監督、すばらしい!」って思いました。

——剣さんはFm yokohamaでも番組を持っていらっしゃいますが、「Disc Jockey」という曲もありますね。

横山 「HONMOKU RED HOT STREET」です! 土曜のFm yokohamaは22時30分からIKURAくんで、23時が僕で、24時からマイティ・クラウンっていう、濃いタイムテーブルなんですよ。

——コテコテの横浜ですね(笑)。

横山 自分でレコードかけてフェーダーいじって喋る。昭和のディスクジョッキーはみんなそうでしたね。最近はヒップホップやレゲエ以外でなかなかそういった人は少なくなりましたけど、栗原治久さんの番組にゲストで出演した時にまさにそのスタイルなんでグッと来てたんですね。ランドマークのスタジオは、窓の外にみなとみらいの夜景が見えるんですが、観覧車は夜になると止まるけれど、ターンテーブルのレコードは回り出すみたいな。ディスクジョッキーってかっこいいなって。それをリアルタイムでやるかっこよさというのを改めて感じたのがキッカケですね。

——そういうリアルタイムのかっこよさって、CKBのライブにもありますよね。リクエストをその場で受け付けたり、新曲にチャレンジしたり。

横山 ああ、そうですね。ちょっとその感じを現実世界にも。

——「KARAOKE International」も発売前にライブで披露していましたもんね。

横山 そうですね。反応もよくてよかったですね。

——この曲はリアルな体験とかあるんですか?

横山 これは、パキスタンの中古車を検査する仕事をしていたときに、港の周辺にあったスナックにパキスタン人の業者さんと行った思い出をベースにしたんです。来てるお客さんが、ほかにもフィリピン人とか日米のハーフの人とか、あとは港湾労働している人たちとか、いろんな国の人がうわーっている感じで。結構ザツなお店なんですけど、「ビール!」って注文すると、顎で「自分で栓開けな」みたいな。だれが店員でだらがお客さんかわかんない感じなんですよね。カラオケも各国いろんな曲があって。

——インターナショナルなんですね。

横山 はい。もうノリがすごいんですよ。一瞬にしてヒートするみたいな。

——横浜での人と人との行き交いとかって、とてもエネルギーがありますね。

横山 そうですね。いろんな化学変化がおきて、瞬間的というか、刹那的というか。でも、みんな数年しかいなくてどこかまた違う国にいっちゃったりするんですよね。見送ることが多い街でもある。

——「ひとり」とか切ない曲もありますが。港街ならではの切なさ、メロウな感じも漂う感じがありますね。

横山 幼少のころ、父の友人が船でブラジルに移民するということで、大桟橋へ見送りに行ったことがありました。ブラジル行きの船にいろんな色の紙テープ投げたりしながら、別れを惜しむみたいな場面が記憶にありますね。かなりおぼろげな記憶ですけど。

——剣さんのさまざまなルーツがあって、地元愛を感じるアルバムでした。

横山 だんだん、そういう気持ちになってきましたね。東京にいたころのことも思い出して。あのころ、すぐにこっちに帰ってこようと思ったことが蘇ったりしたりして。そーそーそーそー。

■クレイジーケンバンド 横山 剣

プロフィール

1960年、横浜市生まれ。1997年クレイジーケンバンドを発足、2009年メジャーデビュー。2018年9月24日横浜アリーナにてデビュー20周年記念ライブを成功させる。2019年ニューアルバム「PACIFIC」を携え、8月24日(土)福生市民会館を皮切りに全国ツアーがスタート。横浜公演は11月16日(土)・17日(日)神奈川県民ホール

ジャズの生演奏も聴ける「ウインドジャマー」は帆船をイメージした建物(C)撮影=中村力也


取材協力「ウインドジャマー」

住所:神奈川県横浜市中区山下町215 東楽ビル1・2F 電話:045-662-3966 営業時間:17:00〜24:00(LO23:30)、土曜16:00〜24:30(LO23:30)、日曜・祝日16:00〜23:30(LO23:00) 休み:なし 席数:50席 ※喫煙可 アクセス:JR線石川町駅中華街出口徒歩7分、みなとみらい線元町・中華街駅徒歩10分

新アルバム「PACIFIC」【初回限定版】UMCK-7023 CD+DVD 価格:3,800円+税(C)撮影=中村力也


新アルバム「PACIFIC」【通常版】UMCK-1633 CDのみ 価格 :3,000円+税(C)撮影=中村力也


【構成・取材・文=古城久美子/撮影=中村力也】

横浜ウォーカー編集部

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