目指すはオリンピック2連覇のみ。 “吉田塾門下生” 土性沙羅、いつも通り「攻める」
東海ウォーカー
前回のリオデジャネイロオリンピックでは、全競技中最多となる4つの金メダルを獲得した女子レスリング。東京オリンピックでのメダルラッシュも期待が高まる中、代表選考はいよいよ佳境を迎えようとしている。9月、カザフスタンで開催される世界選手権。そこで表彰台に上がった選手が、2020年の大舞台への切符をつかむことができるのだ。
そこで今回は、リオオリンピックで初出場ながら女子69kg級の女王に輝いた土性沙羅に、これまでの道のり、東京オリンピックへの意気込みについて聞いた。

「絶対に点を取る」。残り10秒でも気持ちで逆転勝利
土性は、世界選手権の選手選考を兼ねた2018年12月の天皇杯全日本選手権、2019年6月の明治杯全日本選抜選手権(いずれも東京・駒沢体育館)で優勝を果たし、東京オリンピックへ一歩近づいた。明治杯全日本選抜選手権は、決勝で2-3と古市雅子(自衛隊体育学校)にリードされるも、残り10秒で逆転勝利を収める。
「ギリギリだったので、ホッとしました。焦りはありましたが、最後まで何があるか分からないので、絶対に点を取ってやるという気持ちでした」
思えば、リオオリンピックの決勝も、2点を追う展開の中、残り30秒でタックルを決めての大逆転だった。「あの時の経験が生きているのもありますし、リオでも私の前に試合をした(登坂)絵莉さんや(伊調)馨さんが残り時間わずかで逆転して金メダルを獲っているのを見て、気持ちが折れちゃいけないと、最後まで気持ちで戦いました」
取材を行った日も20秒でポイントを取る練習をしていた。「ラスト20秒、30秒で負けている場面で取りにいくとか、いろいろな場面を想定して練習をしています。本当に練習は大事ですね。世界選手権でも日頃の練習の成果をしっかりと出したいと思います」

世界一へと導いた、2つの変化
土性は、リオオリンピックで初めて世界の頂点に立った。2015年の世界選手権では、3回戦で中国の周風に敗れ、敗者復活で3位に滑り込み、辛くもリオオリンピックの切符をつかんでいる。
それまで、国内、アジアでは無敵の強さを誇っていた土性が世界大会で勝ちきれなかった要因のひとつに、失点の多さが挙げられる。実際に2015年の世界選手権では、1〜3回戦、敗者復活3位決定戦までの計5試合で、41得点に対して32失点していた。
「以前は簡単に足を取られて、12-10とか8-6という試合をして、本当に失点が多かったです。リオに向けて、相手がタックルに入りづらくなるようしっかりと構えを作ることを、普段の練習で意識するようになってから、勝てるようになりました」
元々極度のあがり症という土性だが、リオオリンピックの時は「リラックスできて調子が良かった」と振り返る。「馨さんと同じ部屋だったのですが、馨さんは試合当日の朝も本当に普通すぎて(笑)。自分は2015年の世界選手権の時も、朝起きた時からガチガチに緊張して誰とも話せなかったんですが、その姿を見て『普通でいいんだ』ってリラックスできました」。
日本代表のコーチからの「もっと周りと話をして、リラックスして臨んだら」というアドバイスも効を奏した。「試合前は集中しないといけない。しゃべったり、余計なことを考えていてはいけないと思い込んでいたんですけど、コーチに指摘されて、変えてみようかなと。リオでは人と話すようにしたら、緊張せず、集中して臨めました」
ディフェンス面の強化に取り組み、リラックスして臨んだ大舞台で、土性は子どもの頃からの夢だった金メダルをつかみ取った。

「思い切りレスリングをするために」手術を決断
リオオリンピックで重量級初の金メダルを獲得した土性は、翌年の世界選手権も制す。順風満帆に見えた土性だが、2015年に左肩を亜脱臼して以来、月に一度の頻度で脱臼を繰り返し、左肩に爆弾を抱えていた。リオオリンピックも準決勝で両肩が上がらなくなり、痛み止めの注射を打って決勝に臨んでいたのだ。
2018年3月17日、群馬県高崎市・高崎アリーナで行われたワールドカップのカナダ戦で再び左肩を脱臼。「東京オリンピックを目指すなら、このタイミングしかない」と4月に手術に踏み切った。手術は初めてだったが、不安よりも「しっかりと治せば、また思い切りレスリングができることが楽しみでした」と話す。
手術後1か月間は腕を固定したままの生活。「最初は自転車にも乗れないし。肩が上がらないので、シャワーとかも、服を着るのとかも大変で。当然レスリングもできないので、つまらなかったです」
12月の天皇杯全日本選手権を見据えてリハビリに取り組むも、思うように回復しない。手術を担当した主治医より、復帰を10月に延ばすように助言を受けたが、「それでは間に合わない」と9月にマットに戻った。
天皇杯全日本選手権では「タックルにほとんど入れなかった」というが、それでも8連覇を飾る。「無理やりタックルに入らず、どんな形でもいいから(勝者として)最後に自分の手が上がっているように、内容よりも気持ちで戦いました。ディフェンスを強化していたことも8連覇につながったと思います」

連覇をかけた東京2020へ「攻める」
9月14日(土)から始まる世界選手権で表彰台に上がれば、東京オリンピックの出場が内定する。「前回(2015年)は3位だったので、今回は優勝して東京オリンピックを決めたいです。まだ左手の力が右に比べると出きっていないので、ウエイトトレーニングでスタミナもウエイトも増やして、あとはいつも通りに臨みたい」
レスリングをしていた父の影響で、小学校2年生の時に吉田沙保里氏の父・栄勝氏が主催する一志ジュニアレスリング教室でレスリングを始めた土性。“吉田塾”の門下生らしく、得意技はタックル。ディフェンス力が強化されたとはいえ、「攻めるレスリング」が信条だ。
「今は東京オリンピックで2連覇をすることしか考えていません。正面からのタックルが得意技だったんですけど、怪我をしたことで横からのタックルなどバリエーションが増えました。得意なタックルに磨きをかけて、東京では『攻めるレスリング』を皆さんに見ていただきたいですね」

山田 智子
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