吉岡里帆主演映画『見えない目撃者』森淳一監督に聞く 過激な描写のなかにある『人間』としてのストーリーとは?

関西ウォーカー

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目の見えないの元女性警察官が女子高生連続殺人事件の謎を追う吉岡里帆主演の映画『見えない目撃者』が9月20日(金)より全国公開。そんな本作の脚本・監督を務めた森淳一監督にインタビューを行い、R15指定を受ける過激な描写とそこにある『人間』というものを描きたいという監督の真意について伺った。

映画『見えない目撃者』のメガホンをとった森淳一監督


『見えない目撃者』は過去の事故で目が見えなくなってしまった元警察官・浜中なつめ(吉岡里帆)と高校生・国崎春馬(高杉真宙)がある車の接触事故をきっかけに猟奇殺人事件の謎を追うサスペンス・スリラー。『重力ピエロ』(09年)などを手掛けてきた森監督は「古くはヒッチコックが好きで見てきた身として、そろそろ王道のサスペンスを撮ってみたかった」と話し本作の脚本から参加。森監督は本作と制作する上で日本の風土に合うようなスリラー作品を目指したという。

R15指定とそのなかで描かれる『人間』


森監督はどこまでも『人間』を描くことにこだわっているのだという


今作で特筆すべきなのは、猟奇殺人の暴力描写。R15指定を受けたことに対して森監督は「R15指定というのはそれだけで映画を観てくれる層を限定してしまうのでしない方がいいという意見があるかもしれないのですが、僕自身指定に関しては考えないようにしていて、脚本家としての僕は自分の中で納得のできる脚本を、そして演出家・監督としての僕は本を読んだ時にそれを描くべきだという思いで動いています。『こうすればスリリングになるのではないか』『犯人の残虐性を表現できるな』と結果的にR15指定になりましたが、これはここまでしないと観客にリアルに伝わらないのではないかという思いがあったからです」と恐れることなく作りきったという。しかし、そのなかでも森監督は『人間』を撮ることを忘れないと話す。キャラクター同士の何気無い会話の一言一言に生活感を滲ませられた本作に「どんなジャンルの作品であろうと『人間の暮らしぶり』を撮りたいなとは思っています。やはり外せないと言いますか。今作のようなスリラー作品だとただ怖いだけでなく『人間』が襲われて『人間』が犯人を探す映画がいい映画だと思うんです。人間味を感じて初めて臨場感が伝わってくるものだと思います」と語る。

主演の吉岡里帆について


主演の吉岡里帆について森監督は「なつめ役には暗い人だと視力を失う前後でもあまり変化がないため、表情の振り幅が広い人がいいなと考えていました。また、警察官ということで意志の強さを感じる人であることも重要視しました」と話し、振り返ってみると吉岡里帆はピッタリのキャスティングだったという。また撮影時には監督の指示にもきちんと一生懸命すぐに応えるところを見ると、アスリートのようだったと評した。

そんな吉岡里帆演じるなつめは物語冒頭、交通事故に遭遇することにより目が見えなくなってしまう女性。森監督は「吉岡さん自身はもちろん目が見えない方ではないので『見えているのに見えてない演技』をすることが大変だったろうと思います」と目が見えない人物を作品に登場させる難しさを語った。「取材をするうちに分かったのですが視覚障害の方でも難なく椅子に座ることができたり、部屋の中を俯瞰で立体的に見えたりする方がいらして、ご本人からそういう話を聞くと納得するんですけど、エンターテイメントとして観客にどう見えるかと考えた時にちょうどいい塩梅を探すのは大変でした」と話す。

吉岡里帆の演技についても「焦点をぼやかして演技をすると目が寄ってきてしまって、顔を写した時に分かってしまう。目を瞑ったり、視線を逸らして会話すると楽なんですけど会話が成立してないように見えてしまう。それに元警察官という面、事故により精神が病んでしまうという面、目が見えないという面、盲導犬ユーザーである面、吉岡さんはやるべきことが多くて相当大変だったと思います」と難しい役どころをこなしてくれたという。

さらに今回登場する盲導犬『パル』は俳優犬。盲導犬の芝居をしていることに触れて「本物の盲導犬だと撮影スタッフの指示に従ってくれなかったりするのでドッグトレーナーの方と一緒に何回も撮影に臨みました。盲導犬特有の動き方や止まり方があったり、さらにペットと同じように散歩するわけではないので、盲導犬はユーザーの眼として常に真横にいて崩れないようにしなければならない。なので撮影で人間の芝居は良くても盲導犬に見えないということもあってやり直しすることもありました」と述懐する。そんな大変な撮影の中でも1日の撮影が終わる度に吉岡里帆は元気に挨拶して大変だという顔を見せなかったのだという。彼女のその姿に「スタッフを一丸にしてくれるんです。撮影が長引いたり思い通りにいかなくなるとスタッフ間でもイライラし始めたり、そういうものって現場で伝播してしまうんですが、それを表に出さない吉岡さんという存在はありがたかった」と感謝していると話す。

『再生』の物語


森監督は主人公・なつめの『再生』の物語にしたかったと話す


インタビューするなかで森監督は「なつめの再生ストーリーを描きたかった」と話し、なつめのほかにも高杉真宙演じる春馬も落ちこぼれの高校生から事件を追って成長する、まさに『再生』の物語であることに触れて「挫折を経験したり何か生き辛さを抱えている人の映画を作りたいと思っていました。シンパシーを感じてしまって。そういう人の応援歌みたいなものになれば」と自身の映画制作に対する想いを語る。

「僕が観てきたアメリカン・ニューシネマのやるせない感覚やヒッチコック作品のハラハラドキドキさせるものは心の何処かにありますね」と自身のルーツを振り返る。「過去に監督した『重力ピエロ』の頃は『もっとこうしたい』『ああいう画を撮りたい』という自分の自我を優先していた部分がありますが、今回は一番観客のために作っているという自信があります。それは観客に迎合するということではなく、観客の心を掴むために揺さぶったり、思わず前のめりで鑑賞してくれるようにワンカットごとに考えながら作り上げていきました」と森監督は自身の映画に対する姿勢が変化しつつ「それでもいつも『人間』を描きたい」という根底部分では変わらないものを打ち明けた。

『見えない目撃者』は9月20日(金)より全国ロードショー。

出演:吉岡里帆、高杉真宙、田口トモロヲほか

監督:森淳一

脚本:藤井清美・森淳一

Based on the movie “BLIND” produced by MoonWatcher

(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ

(C)MoonWatcher and N.E.W.

桜井賢太郎

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