今季は世界フィギュアスケート選手権出場を目指す!完全復活を遂げた山本草太【前編】
東海ウォーカー
フィギュアスケートのチャレンジャーシリーズ、USインターナショナルクラシックで2位入賞を果たした山本草太選手。次戦のフィンランディアトロフィ―、そして札幌でのNHK杯に向け、順調な仕上がりを見せている。ここでは東海ウォーカー7月20日号に掲載したインタビューの全文と、そして後編ではげんさんサマーカップでの取材した内容を取り上げ、彼の今シーズン入りまでの数か月間を振り返りたい。
2019年5月、中京大学でのインタビューから

―2月のチャレンジカップでの優勝は自信になりましたか?
「そうですね。もっと大きな試合でああいう演技ができたらな、とは思いましたけど。順位も演技も目標通りといえる感じでしたし、自信にしていいかな、と思いました」
―昨年末の全日本の段階ではあれだけの演技はできなかった。
「全日本の前は全日本の前で、結構自分の中では練習してきたつもりだったんですが…チャレンジカップ前の練習を思うと、やっぱりまだまだ足りていなかったな、と。全日本の前はリハビリ、トレーニングといった感じの内容だったんですけど、チャレンジカップの前は、しっかり練習ができたという感覚がありました。練習量も増やせていましたし」
―全日本の前まではリハビリ的な練習だった。それがチャレンジカップの前は足を気にせずに練習できたということ?
「そうですね。一応、頭の片隅で気をつけながらやっていましたが…結果を出せずにいたので、恐怖心はありましたけど、チャレンジカップ前は頑張れたかなと思います」
―復帰した頃には「滑れるだけで嬉しい、すべてが新鮮」と語っていた。それから1年半経って、意識は変りましたか?
「今は、だいぶ気持ちも変わってきている自覚があります。今はオフシーズンなので(取材時)、楽しい気持ちでいられているとは思います。ケガする前の気持ちを思い出してきたというか、やっぱり結果とかを求めて頑張っていこうかな、と今は思っています」
―ケガをする前は、4回転の習得を目指していた時期だった。『苦しかった』と言っていたが、それに比べると今は無理なく、余裕を持って取り組めている?
「無理はしているつもりはないですけど、でもやっぱり結果を残す人って、どこか無理をしていると思うんです。そこの加減が難しいと思っていて…でもやっぱり頑張らないとトップには立てないですし、結果がほしいので、頑張らなければと思っています」
―では、その求める結果とは具体的には?
「去年の全日本が9位でした。今シーズンは、全日本で表彰台に乗るような演技をして、代表に選ばれるような選手になりたいと思っているので、それが一番の目標です」
―それはかなり現実的な目標になってきたように思いますが、そのためにはジャンプ構成はどうしますか?
「ショート2本、フリー3本の4回転を入れる予定があります。今後の練習次第で変わってくるかもしれませんけど、ほかのみなさんはもっと難しいことをやっているので、それぐらいのことはやらなければいけないなと。新しいジャンプ、(4回転)サルコウを曲で入れられるようになりたいと思っています」
―サルコウの仕上がり具合はどうですか?
「まあトウループほど良くはないんですけど…。高校1年生で跳べるようになって、そのあと全然跳べなくて。でも今年の4月、久々に跳べたんですよ。感覚が出てきましたし、曲で入れられるようにしたいです」
―トウループの方が得意ですか?
「やっぱりトウの方が得意です。むしろアクセルの方がどっかに行っちゃう時があって(笑)。いやトウももちろん失敗することもありますけど、自分の中ではアクセル、サルコウの確率を上げたいな、と思っています」
―では、当面はトウループ、サルコウの2種類。
「とりあえずは、ですね」
―将来的には?
「みなさん、『次はループ』と。ただ、昔、挑戦したことはありますけど、全然回ってなかったし、感覚が分からないんです。とりあえずサルコウを試合で入れて、結果を残してからかな、と思います」
―選手によって、難度を思い切り上げてみたり、あるいは完成度重視の構成をしたりしていますが、ほかの選手の構成、演技から参考にすることはありますか?
「(国別対抗戦でのネイサン・チェンは)ショート3+3でも100点を超えたりしてましたよね。どのエレメンツも表現も素晴らしいので、あれだけの点数を出せるんだな、と思いました。もちろんジャンプが一番点数は稼げるんですが、リスクもありますしね。やっぱりスケーティングとか表現がすごいと素敵だな、と思うので、そういうのも大事にしたいです…いや!でも、全部が大事です」
僕はスケーティングで魅せるスケートを目指したい

―自分としては理想のスケートの方向性は?
「僕はスケーティングで魅せるスケートを目指したいというか、どっちかというと系統はそっちだと思うんです。滑っているだけで魅せられるようなスケートを目指したいと思っているんですが、僕はまだスケーティングもそんなにうまくないし…」
―いやいや、山本選手のレベルでうまくないなんて言ったら(笑)。
「いや本当です!全然うまくないと思ってますし、表現もまだまだです。この前、デトロイトに振り付けに行ってきたんですけど、練習しに行ったところがアイスダンス選手の多いリンクで、周りはアイスダンスばかりのところに自分一人だけシングルの選手という環境で。それがすごく参考になったんです。スケーティング、エッジワーク、表現など圧倒されるものがあって、自分はまだまだだな、と」
―アイスダンスはそもそもブレードから違いますし、そもそも比べる対象が…(笑)。ところでデトロイトではどなたに振り付けしてもらったんですか?
「カメレンゴさんです。曲はショートが“エデンの東”、フリーは“In This Shirt”です」
―“エデンの東”はミッシェル・クワンから始まって、町田樹など名プログラムが多い曲ですけど、どんな感じに仕上がりそうですか?
「まだ振り付けてもらったばかりで滑りこなせてないというか、自分でもどこが見せ場だとか、どこに力を入れてどういう風に表現するだとか、これから考えていく感じで、イメージも立てられてないんですけど、先生からは『最初はスケーティングから、エレガントな感じで魅せて、後半のステップのところ、曲調が盛り上がるところでパワーを出してやりなさい』と言われています。自分は演技でパワーを出しにくいというか、ひょろいし(笑)。やっぱりそういうのが苦手なのかなと自分で思っているので、そういうパワーを伝えられるように頑張りたいですね」
―フリーの曲を選んだ経緯は?
「YouTubeで探していて見つけて、最初は、珍しい感じだし、あまり使っている人がいなさそうと思って選んだんですけど、後々調べてみたら、結構使ってる人いるな、みたいな(笑)。曲調は、盛り上がるところが後半に少しだけなので、やる前は難しいかな、と思ってたんですが、やってみたら今までにない感じというか、表現できれば大人っぽいプログラムになるかなと思います」
―ところで、名古屋に来たのは中学の時でしたね?
「中一の時です。長久保先生に教わるために名古屋に来ました。現在は、成瀬先生、川梅先生を中心に指導していただいています。昔は先生からいろいろ指摘を受けることもありましたが、今は言われなくても、自分からやりたいと思いますし、自分で考えながら自主的にやれていると思います」
―今はYouTubeなどの動画サイトで他の選手の跳び方を見て真似する選手も多いんですが、誰かの跳び方を真似たり影響を受けたりはしてますか?
「高校生ぐらいまではありましたね。でも最近は自分の感覚でやるようになったかな、と。自分で良い方法を見つけて安定していると思います」
―足のコンディション、今はどうですか?ボルトは今も入ってますか?
「今も入ってます。アタマのないボルトなんですが、抜くのにも周りの骨を削って3本取るとなると大変で…。一応、抜かなくていいボルトなので、このまま行く予定です」
―それはもう馴染んだというか、それが不利になることはもうない感じですか?
「なんか違和感はあるんですが、でも徐々にやっていくうちに、大丈夫なのかな、と思える範囲が広がってきて、4回転も跳べるようになってきました。病院の先生からも『写真を見ても骨はくっついている』って。あとは感覚の問題なんです。以前は1日中足のことを考えてましたけど、今はだいぶ気にせずできていると思います」
―前よりは、負荷をかけたり、無理も効くようになってきた?
「そうですね。だいぶできるようになってきました」
―でもやっぱり、羽生選手、宇野選手ほどの無理はできない?
「(笑)。いや、そうですね。あれだけのことは今の自分にはできないです。もちろんレベルの違いもありますけど。いきなりあそこまではできないですけど、少しずつ、できるかな、と思えばやっていきたいです」
後編では、オリンピックへの思いや普段の学生生活が語られるほか、げんさんサマーカップで取材した内容をお届けします。
中村康一(Image Works)
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