掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信 〜Vol.3〜前編
九州ウォーカー
日本のサブカル界で異彩を放ち続ける掟ポルシェの月一連載!ブログやツイッターでは知ることができない、“掟ポルシェの今”を赤裸々に語り尽くす居酒屋フリートーク企画「掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信」。あなたの知らない“もう一つの世界”はこんなにもおもしろい!
この本に出てくる人は余程のことしか言わない

——8月に『豪傑っぽいの好き』という本を出されましたね。
掟「俺まだ確認してないんですけど、新宿紀伊国屋では許永中の本の隣に並んでいるそうです。あと、その隣がマリファナの本(笑)。なぜか反社枠に入れられているみたいで」
——なるほど(笑)。どんな内容の本なんでしょうか?
掟「自分の身の回りの人で社会の枠に収めておけない豪傑さんみたいな人のことを書いたんですけど、なにせ10年くらい前の連載をまとめた本なんですよ。10年前っていうと常識もかなり違うんですよね。社会の枠からはみ出る感じも、ある程度犯罪に抵触しているとか。そんなもんでも当時は『まあ、いいんじゃない?』くらいの感じで。今と全然状況が違うので。以前『出し逃げ 掟ポルシェ最低コラム集』っていう本をインディーズでおおかみ書房っていうところから2014年に出して、内容はブスの悪口とか下ネタとかだけで占められているんですけど、その本も2014年の段階で『これギリギリだね』っていう、今の状況でギリギリ怒られるかどうかって状況で出したんですよ。この本ももしかしたら将来的には本当に反社枠に入る可能性があるみたいな(笑)」
——全部読ませていただいたんですけど、それぞれのエピソードが短く一話完結型で読みやすいですね。
掟「一話あたり大体1800字から2000字くらいですね。これくらいであれば1ネタを勢いで1日くらいで書けちゃうんですよ。原稿を書くスピードとして、3000字くらいまではいい加減に書けるんです。でも、4000字になっちゃうとどうしても前に遡って読み直して文頭から書き始めるんで、その分の時間もかかるんですよね。今小説新潮ってところでやってる連載も子供の頃から時系列を遡って周りの人のことを書くんですけど、その連載もやっぱり4000字はきついですね。2000字だったら目を瞑ってでも書けますよ。ちゃちゃっと(笑)」
——でも1800字から2000字くらいで毎回簡潔にまとめられるのはすごいと思いました。
掟「まとめているというか、これ以上は書けないですね。何でかって言うと、俺記憶力が悪いんですよ。人が喋ったことって余程のことじゃないと覚えてないんですよね。でも中には余程のことしか言わない人がいるんですよ。この本に出てくる人は余程のことしか言わない(笑)。そういう豪傑としか言いようがない人が50数人出てきますね」
——連載当時は読者からの反応はどうだったんですか?
掟「これパチスロ雑誌の連載だったんですよね。『パチスロ必勝ガイドNEO』っていうパチスロの専門誌なんですけど、当時は出版社が白夜書房かな。あそこの会社って所謂ギャンブル攻略本、パチンコ攻略本で結構な売り上げがあったんですよ。で、何誌も出てて、その『パチスロ必勝ガイドNEO』は、ちょっと変わったことをやろうみたいな変な雑誌で、連載陣が俺とか怒髪天の増子さんとか、なんかミュージシャンがいっぱい出てくるみたいな。昔のエロ本みたいな感じですよね。昔のエロ本って表紙開けたところのカラーページにイヤらしい写真が載ってれば、真ん中の読み物ページは好き勝手やってて構わないみたいな。1980年代から90年代にかけてのエロ本ですけど。それに近いテイストはありましたね。だからパチスロ雑誌の体裁をとったサブカルチャー雑誌っていうんですかね。読んでますよって言われたことはほぼないですね。だから好き勝手書けたんですよ。どうせ読んでないだろうからと思って(笑)」
——パチスロの攻略とは全く関係ないですしね(笑)
掟「エロ本の連載のときも思ってましたけど、どうせ誰も読んでねえこんなものって。『スーパー写真塾』っていう『BUBUKA』を出してるコアマガジンのエロ本でも連載をしていたことがあって、それも下ネタで1000文字適当に思いついたことを書くっていう内容なんですけど、それも多分誰も読んでないだろうからもう驚くほど思いつきそのまま書いてて。どうせエロ目的で買ってるわけじゃないですか。読み物のページって全部で10ページくらいしかないんですよ。その中の半ページなんで、もうほんっっとに適当に書いてましたね!もうみんながビックリするくらい!杉作(J太郎)さんにまで言われましたからね。「これ適当に書いてるでしょ!」って(笑)。バレた!っていう(笑)。本当に1時間かからないくらいで書いてましたね。思いついたことを。ひどい話ばっかり。『君たちあれだろ、おっぱいがある生き物が好きなんだろ。じゃあ高見盛でいいじゃん!』って。で、高見盛の乳輪についてずっと書いてるっていう(笑)」
——本当に適当ですね(笑)
掟「適当に思いついたことを、思いついた先から書いて推敲もしない(笑)。そういうのをまとめたのが『出し逃げ 掟ポルシェ最低コラム集』っていうインディーズの本なんですけど。連載している媒体っていうのが俺みたいなのを連載させてくれる方々なので、世間一般の方々に対しそんなに影響のない媒体っていうか(笑)。そういうのが当時は多くて。やっぱりバイトの本(男の!ヤバすぎバイト列伝)がそこそこ売れてからちょっと状況が変わってきてるんですよね。なんか、ちゃんとした文章書ける人みたいに思われてきて。これはマズいぞっていう(笑)。で、連載増えちゃって今大変なんですよ」
——なるほど(笑)
掟「もう本当に雑誌連載とか急に頼まれた原稿仕事がいっぱいいっぱいで、バンドというか、一応自分で音楽もやってるんですけど曲作る暇がないっていう。いや〜、無理ですね。曲作るのはさらに遅いですからね。真面目な文章を書くのはさらに遅いので」
——曲を作るときは期間を決めてやってるんですか?それともできたものからどんどん出していくみたいな感じですか?
掟「ロマンポルシェ。を始めたのが1997年なんですけど、その時から見切り発車で。ライブの日が決まったから曲作らなきゃいけないっていうそういう方式ですね。基本催促のないものはやらないタイプなんで。締め切りがないと絶対にやらない。催促されない原稿は書かない。で、そのうち飲みに行ってしまう。マズいですこれは」
——昔の漫画家みたいですね。
掟「いや、昔の漫画家はもっと忙しいと思うんですけどね(笑)。俺、暇なのにそれやってますから……って、あの、担当編集者の皆さん、挑発してるわけではございません!これからは心を入れ替えてキリキリ働きますので!」
アイドルが怒った顔ってなかなか見れないですよ

——本の話に戻りますけど、この中で個人的に特に印象に残ったエピソードはメロン記念日の回でした。
掟「あははは(笑)。そうですか、メロン記念日の回(笑)。いやー、本当にあの、なんていうんでしょう、自分もいろんなものを、何かについてすごくファンだったりとかすることで今日の地位があると思ってまして、2000年代頭はずっとハロプロが好きで、メロン記念日っていうアイドルグループが大好きで、もう事あるごとにメロン記念日を推してたんですよ。でもアイドルっていうのは、アイドルが歌いさえすれば何でもアイドル歌謡曲になるわけで、売れてきたりすると曲調がポップやキッチュよりもわかりやすいものに変わったりとか、曲調に一貫性がないのが当たり前だったんですね。当時は。特に2000年代中盤くらいまではそんな感じだったんですよ。で、好みじゃない曲がトントンって並んでくると、ちょっとやっぱりライブも行きづらくなってきたりして、どうしようかなみたいな感じで。そうこうしてるうちに仕事でPerfumeさんと絡むようになって、マネージャーさんから『ちょっと今まだ全然売れてないので、どうやって売っていったらいいか』みたいな相談まで受けるようになったんですよ」
——すごいですね!
掟「ハロプロは好きで見てるけど、当時のアップフロント(メロン記念日の所属事務所)さんはTHE・芸能の会社だから、ファンに意見を求めることなんて絶対ないわけですよ。そうこうしてるうちに仕事でやってたはずのPerfumeがすごく売れてきて、面白い音楽やってるからそっちの方を客としても普通に観にいくようになってしまって。メロン記念日のライブは結構ご無沙汰する状態が続いたんですよね。で、2010年かな、メロン記念日が解散するという話になり。当時はもうファンクラブにも入ってなくて、解散コンサートのチケットが取れなかったんですよ。それでその頃よくしてもらっていたアップフロントのマネージャーさんに、『すみません、こういう事情でチケットがちょっと取れなかったんで、申し訳ないですけどゲストの枠とかありますか?』って連絡して、それでご招待していただいたんですけど。それくらいの関係性はあったんですよ」
——なるほど!
掟「で当日、感動的なライブがあり、メロン記念日解散、そして打ち上げ。中野サンプラザの3階になるんですかね。軽く打ち上げみたいな、関係者の方々にご挨拶みたいな、そういう場面があって。メロン記念日のメンバー、一人ずつに挨拶に行って『本当に今日はいいライブ観させてもらいました。メロン記念日好きでよかったです』って、そんな挨拶して。柴田(あゆみ)さん以外の3人はすごくこちらに対して好意的だったんですけど、柴田さんにお会いした時に『今日ちょっとチケット取れなくて会社の方に工面していただきました。すみません、申し訳ありません』って言ったら、『Perfumeは自分でチケット買って行ってるんですよね!?』って(笑)」
——あはははは(笑)
掟「確かに当時Perfumeさん売れすぎて会場がでかいから、ファンクラブに入って自分でチケット取ってたんですよ。さもないと前の方で観れないじゃないですか。一応招待のインビテーションは送っていただけるんですけど、武道館の2階とかで観ててもやっぱり盛り上がらないんで。だから自分でチケット買って行ってたんですけど。そしたら『Perfumeはチケット取って行ってるんですよね!!自分で買ってね(怒)!!!』って」
——そんな口調だったんですか!(笑)
掟「明らかにマジ怒りしてる表情なんですよ!『いや、あの、あれは仕事上の付き合いもありまして...』って言ったら、『いや、あれ仕事じゃないですよね!好きで行ってるんですよね(怒)』って、怒られてしまって。柴田さんの意識としては、『お前がちゃんと応援していればこうはならなかったんだぞ!』って顔なんですよ。『お前がPerfumeのことをメロン記念日の代わりに急に推し始めてから、メロン記念日はお客さん入らなくなったんだぞ!』みたいな。『それがなんだ?チケットも取ってないのに入れてくれだ?このヤロー!!』っていう(笑)。アイドルが本気で怒った顔ってなかなか見れないですよ。正直な気持ちだったんでしょうね。その後、柴田さんもソロになられて、そこからは招待状送っていただいたりとか、いろいろよくしていただいたんですけど。あの時はホント申し訳なかったです!」
——掟さんが最近ライブに来てないってことはメロン記念日のみなさんも気にしてたんですね。
掟「そうですね。特にPerfumeさんと関わり始めたのが2004年の12月くらいからで、一緒に仕事し始めてマネージャさんに進言できるような立場にもなってて。でもまあメロン記念日さんにはそういう風にはなれなかったですから。付き合いの密度みたいなのは全然違うんですけど、とは言え(笑)。『よくノコノコ来やがったな!』って顔でしたからね。あの時の柴田さんの目は忘れられないですね」
——本当におもしろいですねこの話(笑)。メロン記念日さん以外の他の豪傑さんのエピソードもどれも最高でした。
掟「おばあちゃんの知恵袋的な特に有益な情報は1つもないんですけど、暇つぶし程度にはなると思うのでよかったら手に取って読んでください!なんなら購入してくれるととてつもなくうれしいでーす!」
※Vol.3後編は10/18(金)に配信予定
掟ポルシェ(おきて・ぽるしぇ)

1968年生。男気啓蒙ニューウェイヴバンド『ロマンポルシェ。』&ひとり打ち込みデスメタル『ド・ロドロシテル』での音楽活動、ピッチを一切合わせないアイドル曲オンリーDJ、読後一切頭と心に残らない酷いコラム著述業、アイドルイベント司会を手がける他、頼まれれば法に触れない範囲で大体のことはやる。2015年より福岡市西区に在住。2019年8月29日(木)に新著『豪傑っぽいの好き』(ガイドワークス)を発売。
田崎紀之
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