【クラシック対談】業界激震!? “のだめショック”を語る! (前編)

関西ウォーカー

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ドラマや映画、アニメにもなり、一大ブームを巻き起こしたマンガ「のだめカンタービレ」。才能には恵まれているけれど汚部屋に住み、読譜が苦手な音大生・野田恵と、指揮者志望の千秋真一が奏でるストーリーは全編にちりばめられたクラシックと、コミカルな恋物語が幅広い支持を得た。今回はクラシック専門誌「クラシックジャーナル」編集長の中川右介氏と「のだめカンタービレ」の編集者・三河かおりさんの対談がUSTREAMスタジオ北浜で行われた。

クラシックと真正面から向き合う挑戦 千秋の台詞で雷に打たれた

--三河さんは「のだめカンタービレ」の編集にどう関わっていかれたのですか?

三河 2001年の連載開始時から、どんなお話にするかという基本的なマンガ編集に加え、取材にもすごく力を入れていて、のだめと千秋のパリ留学に際しては、パリ取材もしました。コーディネーターを探したり、二ノ宮さんが締め切りに追われていたときはル・マルレ・オケのモデルになったパドルー・オケとの取材契約に一人で行ったこともあります。

 さらにドラマや映画、茂木大輔さんが主宰するのだめ音楽会といったコンサートの窓口も担当しました。アニメもドラマも二ノ宮さんの中で流れているのだめや千秋の曲に近づけていく必要がありますが、いろんな質問や確認事項が次々と出て来るんです。その時その時、ひとつずつ確認すると、二ノ宮さんがマンガを描く時間がなくなってしまうので、私が間に入って、まずは交通整理をして、ある程度まとまった段階で、二ノ宮さん本人に確認してもらっていました。

--中川さんはずっとクラシックと関わっておられますが、「のだめ〜」はどうして知られたのですか?

中川 クラシックジャーナルの創刊は2003年2月ですが、その年の秋、有楽町の東京国際フォーラムで毎年開催されているオーディオショーに本を売りに行きました。その間の暇つぶしを探しに本屋に行ったら「のだめ〜」が4巻まで出ていて、クラシックのマンガだと帯にあったので読んだら結構おもしろかった。そこで雑誌で紹介しようと編集部に電話して、三河さんとお話しし、二ノ宮さんにもインタビューをするなど、クラシック関係雑誌では初期から注目していました。

--どのあたりで人気に火が付いたんでしょうか。

三河 どこからかはっきりはわかりませんが、徐々に人気が上がっていました。ドラマ化以前にすでに初版70万部までいっていましたが、ドラマ化でさらに伸びた印象があります。これは来てるな、と思ったのは5巻。千秋がシュトレーゼマンとラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏したときが作品の大きなターニングポイントだと感じています。二ノ宮さんからここは本格的な演奏シーンにしたいという話があって、ネームをもらって読んだら鳥肌が立ちました。特に千秋の「いやだな、もう終わるのか」という台詞で雷が落ちたような感じがあって、この作品はもしかしたら大変なことになるかもしれないと思いました。

中川 我々はできあがったものしか見ていないけど、三河さんは絵のない段階でそれが判断できるわけですね。すごいと思います。

三河 明らかにクラシックと正面から向き合うという挑戦がスタートした瞬間でした。

登場人物よりもっと変人

--クラシック関係者はこの作品をどう見ていたのですか。

中川 登場人物たちは結構変人ですが、本当はもっとひどい。そういう意味ではクラシック音楽家のひどさが一般にも知られて、あの人たちはまともじゃないし、いい人じゃないし、社会人としては失格だし、そういう人たちの世界なんだということがわかっただけでもいいんじゃないかと思いますよ。

 私は「カラヤンとフルトヴェングラー」という本を書きましたが、フルトヴェングラーはわかっているだけでも10数人の私生児がいました。彼はベルリンフィルハーモニーの常任指揮者にも関わらず、ウィーンフィルでも指揮をしていた。その理由がわからず、いままではウィーンフィルからも頼まれたんだろうと思われていたのですが、最近アルファベータから発売した「フルトヴェングラーの生涯」という本で、ベルリンフィルの収入は奥さんに行く一方、ウィーンフィルには女性のリストを渡していたことがわかりました。つまり、ウィーンフィルでも指揮をしないと女性たちが困ってしまう。だから財布を分けていたんですね。

三河 いいなぁ(笑)

中川 そこにカラヤンという若い指揮者が来るわけです。フルトヴェングラーとしては仕事を取られては困るので、何とかしてカラヤンを追い出そうとします。私が「カラヤンとフルトヴェングラー」を書いたときには、まだフルトヴェングラーの財布の構造までわかっていなかったので嫉妬だろうと書いたのですが、こちらの方がわかりやすい。

三河 コンクールでも千秋は順当に勝ち上がりますが、のだめは本当にめちゃくちゃ。イヴォ・ボゴレリッチ並みです。

中川 ボゴレリッチは昔すごい男前でしたけど、すっかりスキンヘッドになっちゃって。とてつもない演奏をしますが、ショパンコンクールで彼を擁護したマルタ・アルゲリッチが「彼は天才よ」と言い残して審査員を下りましたね。

三河 コンクールではそういうのは賛否両論ですね。「のだめ〜」ではのだめのピアノと千秋の指揮者コンクールを取り上げましたが、やっぱり盛り上がりました。

(中編に続く)

※中編:http://news.walkerplus.com/2011/0307/23/

【取材・文/ライター鳴川和代】

※本対談は2011年2/12(土)行われたUSTREAM対談を記事にしたものです。

アーカイブはコチラ!URL:http://www.ustream.tv/recorded/12640111

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