【クラシック対談】業界激震!? “のだめショック”を語る!(中編)

2011年3月7日 21:57更新

関西ウォーカー

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ドラマや映画、アニメにもなり、一大ブームを巻き起こしたマンガ「のだめカンタービレ」。才能には恵まれているけれど汚部屋に住み、読譜が苦手な音大生・野田恵と、指揮者志望の千秋真一が奏でるストーリーは全編にちりばめられたクラシックと、コミカルな恋物語が幅広い支持を得た。今回はクラシック専門誌「クラシックジャーナル」編集長の中川右介氏と「のだめカンタービレ」の編集者・三河かおりさんの対談第2弾をお届け!。

のだめでクラシック人口は広がった? 体に染みついた三三七拍子

--のだめは海外では翻訳されているのですか?

三河 韓国、台湾、マレーシア、アラビア語、インド、スペイン、フランス、アメリカなどで出ています。韓国では非常に人気ですね。

中川 韓国の方がクラシックには熱心で、優秀な演奏者も増えています。中国もそうです。国力の違いでしょうか。ニューヨークフィルはアジア系が半分近くを占めているそうですが、日本人ではなく、中国・韓国系。日本はクラシック演奏家では抜かれている。そもそも、向いていないかもしれません。

三河 アマチュア演奏家のレベルは世界最高峰だと聞きましたが。

中川 プロのレベルではそこまで行かない。たぶん、私は三三七拍子がいけないと思うんです。あれはクラシックとは違うリズムの世界だから、リズム感で完全に音楽に乗らない。だからもし、日本人の演奏家を育てようと思ったら、三三七拍子はやめる(笑)。

--いまはあまり三三七拍子もやらないのでは?

中川 それは体に染みついたリズムです。日本人は三三七拍子と思っているけど、西洋音楽では4拍子。その違いが大きいらしいですよ。

名演に求める物語性

--「のだめカンタービレ」でクラシック人口が広がったといえるのでしょうか。

中川 それが問題なんです。のだめブームになってからレコード会社やレコード店などにこれでクラシック人口が増えるという「のだめきっかけ論」「のだめ待望論」が渦巻いて盛り上がった。昨年クラシックの国内盤で一番売れたのは「のだめコンプリート」でした。確かに「のだめ」とCDにシールを貼れば売れる。でも、関係ない曲は売れない。

三河 あれは映画で使った部分のほかの楽章もそろえたいということでわざわざ撮り下ろしたんですよ。

中川 輸入盤では50年ほど前のパリ管弦楽団のオープニングコンサートの演奏1位、2位はバーンシュタインのマーラーの9番。前から何度も出ていますが、リマスタリングして音がよくなっただけで年間2位になってしまう。そんな世界になっていますね。とにかく演奏の数が多すぎる。

三河 何を買ったらいいのかわからない。

中川 売れるCDは演奏の善し悪しより、たとえばバーンスタインが生涯一度だけ指揮したベルリンフィルの演奏などその演奏が持つ物語が付随しているものです。誰かの最初の演奏や最後の演奏ということで、みんなでお話を作り上げていく。それが名演になっていくのかもしれません。

編集者の内に潜むマゾ的なもの

中川 クラシックは元々古い音楽なのであまり新しい演奏家が好まれない場合があります。特に男性はそういう傾向があります。男は割と年下に対して冷たい。女性は年下の格好いいピアニストが出てくれば騒ぐけど、男の場合まずそれはない。すると死んだ人とか、死にそうな人を求める傾向になっていきます。最近クラシックの演奏はどんどんまじめな人が多くなってきています。無頼派の、「のだめ」的な人はいないかもしれない。

三河 みんな行儀がよくて道徳的になってますね。二ノ宮さんが好きな演奏家のサンソン・フランソワは伝記を読んだら壊滅的な人です。人としてどうなんだろうというぐらい。

中川 そう。絶対友達になりたくない。酔っぱらっていて、引きこもり的で、社会人としては全然なってない。

三河 録音の日に酒臭い息で遅刻してきて、ピアノの上で寝てしまうとか、そんな人だったようです。でも、演奏がすごく繊細できれいだった。昔は周りがビジネスでも辛抱強かったと思いますね。いまだったら支えている人も我慢しないじゃないですか。私たち編集者でも、昔はマンガ家がどんなにひどくても絶対突き放さなかったり、お金に困れば貸すような、人生を捧げているみたいな人がいました。でも、私はそこまでできないと思いますもん。昔の人は才能を愛する気持ちが強かったのかも知れませんね。

中川 手塚番の編集者の本を読むとずいぶんと苦労したみたいですね。昔は人間関係が密で、そんな人でも許し合いながら作り上げてきた。最近はちゃんと締め切りを守る人とか、そういう要素の比重が高くなっていますね。

三河 でも締め切りを守るのは大事ですよ。

中川 不思議なのは死んだ某劇作家が締め切りを守らなかったことが美化されていること。

三河 困ったことにそういう人がいます。締め切りを守らない作家に関して「これだけの苦労をして、俺はこれだけの目にあった」ってすごくうれしそうにいう人が。編集者なんて、ちょっとマゾじゃないとやっていられないから(笑)。マゾ自慢が締め切り守らない伝説を産んでしまうんです。

中川 で、作家も増長させてしまうわけですね。

(後編に続く)

※後編:http://news.walkerplus.com/2011/0307/24/

【取材・文/ライター鳴川和代】

※本対談は2011年2/12(土)行われたUSTREAM対談を記事にしたものです。

アーカイブはコチラ!URL:http://www.ustream.tv/recorded/12640111

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