「ご当地キティ」総数3000種で全国制覇の背景、“ノースキャンダルで45年”ハローキティの安心感

東京ウォーカー(全国版)

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ハローキティが地域の名物や名所のモチーフに身にまとった「ご当地キティ」。あるお土産メーカーの発案で1998年に誕生したご当地キティは、現在では当たり前のものとなったキャラクターとのコラボお土産の先駆けとなった。それまで前例がなかった47都道府県を網羅するコラボ展開はなぜ成功したのか。そして、ご当地キティはお土産業界をどう変えたのか。ご当地キティを手掛けるあすなろ舎広報課長の黒田亜紅さんに話を聞いた。

あすなろ舎社内にずらりと並ぶご当地キティグッズ。これまでに製作された中のほんの一部だという


「ハローキティの色が違う」衝撃デビューを飾ったラベンダーハローキティ


現在、全世界で3000種類以上が存在するというご当地キティ。その第一号は、1998年5月に登場した、リボンと服がラベンダー色の「北海道限定ハローキティ」だ。誕生の背景には、ヒット商品不在だった当時のお土産業界と、大人の女性に向けたハローキティの登場があったと黒田さんは話す。

【写真】ご当地キティ第一号!「北海道限定ハローキティ」


「1980年代半ばまで、ハローキティの世間的な見方は『子供が好きなキャラクター』でした。ですが1997年ごろ、ハローキティのピンクキルトシリーズが女子中高生やOLを中心に大ヒットしたことで『大人にも人気のキャラクター』と見られるようになりました。

一方、当時のお土産業界にはキーホルダーや湯呑、ペナントといった昔ながらの商品ばかりで、目玉となる商品が乏しい状況でした。そこで、『ハローキティというキャラクターの力を借りて地域の魅力を発信するお手伝いをしたい』と、サンリオ様にライセンスを受けグッズ化したのがはじまりです」

ラベンダー色のハローキティは登場してすぐ人気を博し、翌年には根付やタオル、ボールペンなどのグッズが販売された。2000年前後に爆発的に普及した携帯電話が、根付に携帯電話のストラップとしての需要を作り出したことで、老若男女問わず渡しやすい土産物として脚光を浴びたことも人気を後押しした。

ラベンダーハローキティの好評を受け、1998年8月には早くも「信州ハローキティ」が誕生。その後も全国に広がり続け、2005年には47都道府県すべてにご当地キティが生まれることとなった。

1998年8月に誕生した長野県のご当地キティ「信州ハローキティ」


“やりたいことは全部やる”コラボハローキティの先駆け


主にご当地キティのデザインはあすなろ舎のデザイナーが手掛け、各地域の関係者、サンリオの3者が調整して作られているという。現在でこそ被り物や着ぐるみ姿のハローキティは当たり前になったが、最初期のご当地キティであるラベンダーハローキティや信州ハローキティは、既存の衣装の色を変える程度の控えめなデザインだった。

「北海道の玄関口である新千歳空港の売店にラベンダーハローキティが並んだ時のインパクトは大きかったと聞いています。というのも、ハローキティの服やリボンの色が変わること自体、当時はほとんど前例がなかったからです」

被り物や着ぐるみなどユニークなデザインが多い


題材もその地域の一番の名物や名所が中心だった初期のご当地キティは、探り探りデザインされていた。だが、全国にご当地キティが広まっていくと、全国的な認知度がそれほど高くないお祭りや食品など、よりピンポイントな内容になっていく。それに追随するように、デザインの自由度も増し、ユニークなものが多くなっていったという。

2018年にYouTuberデビューし、動画の中で「“やりたいことは全部やる”がハローキティらしさ」と話す通り、多岐に渡りコラボレーションを行っているハローキティ。ご当地キティは、そうした“懐が深い”コラボの先駆けだったのではないかと黒田さんは話す。

「ハローキティもともとのデザインを尊重しつつ、ご当地キティの種類が増えるにつれて個性的なデザインも増えていきました。『意外な格好をしたハローキティがいる」と世間一般に認知されてきたことは、ハローキティの現在のイメージに繋がった一因かもしれません」

2018年に公式YouTubeチャンネル「HELLO KITTY CHANNEL」が開設されYouTuberデビューしたハローキティ (C)’76,’19 SANRIO 著作(株)サンリオ


伝統工芸ともコラボ、実現の影にハローキティの「変わる心配がない」安心感


ハローキティの人気の広まりに乗り、消費者に受け入れられた個性豊かなご当地キティ。だが、これほどまでに多種多様なご当地キティが生まれたのは、ただ単にハローキティが人気だったというだけではなく、ハローキティが持つ「変わる心配がない」という安心感が背景にあった。

「45年間、ハローキティはハローキティであり続けています。そうしたイメージのぶれのなさからは、銀行が通帳やキャッシュカードのデザインに起用するほどに『ハローキティは悪いことをしない』という信頼感が生まれました。認知度や人気に加えて、そうした安心感が、事業者にとってもコラボへのハードルを下げている部分があると思います」

コラボレーションには、タイアップした著名人の不祥事で頓挫したり、企画の内容や配慮不足でバッシングを受けるリスクがついて回る。価値観が多様化した今日では、キャラクターコラボでも例外ではなくなった。その点、誰かを傷つけるイメージがないハローキティは、事業者にとって安心してコラボできる数少ないキャラクターと言える。

あすなろ舎は、ご当地キティから派生して、南部鉄器や伊万里焼など伝統工芸とコラボした限定ハローキティも展開しているが、こうした職人の世界とのコラボの実現も、半世紀近くに渡り培われてきたハローキティの好印象が影響していると黒田さんは話す。

「ご当地キティの企画も、以前は弊社から各地域の担当者にご提案することが多かったのですが、現在ではありがたいことに地域の方から『この名物を題材に作れないだろうか』とオファーをいただくことが増えました。地域の魅力をハローキティの力でアピールして、地域活性化のお手伝いをしたいというのがご当地キティの狙いなので、伝統工芸や、地元の人でないとなかなか知らないような文化でご当地キティを作れるようになったのはうれしいですね」

ハローキティを窓口に日本文化を世界に発信


こうしたご当地キティは、現在では国内にとどまらず海外でも展開されている。アメリカだけでもニューヨーク、ラスベガス、サンフランシスコ、マイアミ、ハワイといった地域にご当地キティが誕生。中国、イギリス、カナダ、タイなどで各国ゆかりの名物とコラボしている。日本国内でも、歌舞伎や富士山、桜をモチーフに訪日観光客を意識した限定ハローキティグッズも展開されるなど、「日本土産」としてもご当地キティは人気を集める。

これまでにデザインされたご当地キティは全世界で3000種類以上。各ハローキティごとに数種類のグッズが製造されているので、商品数は「膨大すぎて具体的な数が出せない」(黒田さん)ほどだ。

今日、様々なキャラクターがご当地コラボをする光景は当たり前のものとなり、作品の舞台となった土地を巡る“聖地巡礼”といったコンテンツ・ツーリズムも定着した。その先駆けとしてキャラクターと地域とのコラボを推し進めたご当地キティが観光や地域活性化にもたらした功績は大きい。

北海道限定「ボンボンハローキティ マリモ」。その土地ごとに異なるご当地キティと出合える


お土産の定番として、またハローキティファンのコレクターアイテムにもなったご当地キティだが、現在に至るまで公式での通販は行っていない。黒田さんはその理由をこう話す。

「お客様からはご当地キティの通販の問い合わせを多くいただきますが、弊社の通販ではご当地グッズの販売は一切行っていません。ご当地キティの一番の根底には、地域の皆さんと一緒にその土地を盛り上げたいという思いがあるからです。その土地でしか買えないからこそ、買うために観光に行くきっかけになるし、足を運ぶことでその地域の特色を知ることや地域を盛り上げることにつながると考えています。日本全国にはまだまだあまり知られていない文化が広がっているので、ハローキティを窓口にこれからも盛り上げていけれたらと思います」

地域へのリスペクトを欠かさずにその魅力を発信するご当地キティ。その姿勢は、増加し続けるあらゆるキャラクターコラボのお手本と言えるだろう。

※記事内で紹介したご当地キティは販売を終了したものを含みます

(C)1976, 2019 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. S603352

国分洋平

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