ここにも天空の城! 城下町も楽しい福井県・大野市の旅

関西ウォーカー

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天空の城といえば兵庫県の竹田城が有名だが、北陸にも天空の城があった。それは福井県・大野市にある「越前大野城」。雲海の中から、天守閣だけがすっと姿を見せる光景はなんとも幻想的、竹田城にはない天守閣が見えるのもレアな光景だ。

幻想的な姿を現す越前大野城。雲海の下には……


天空の城を攻略するには


雲海の中の越前大野城を見たい! となると、シーズンは10~4月ごろ。過去の記録から11月が一番雲海の出る回数が多く、多い年でも月に5回くらい。朝の9時ごろまでが見ごろのようだ。自然現象なので行けば必ず見られるというものではないが、雨が降った翌日で、冷え込んだ晴天の朝、そして風の弱い日がベストな条件のよう。

越前大野城を見下ろすように見られるスポットだ


撮影スポットは、越前大野城から1kmほど離れた場所にある戌山城址からがオススメ。徒歩で20分ほど山道を歩くことになるが、越前大野城と町並みを見下ろすように見られる絶好のポイントだ。

亀山(249m)の頂上にある天守。内部は歴代城主の遺品を展示する資料館になっている


天守から見た大野の町


城下町には魅力がいっぱい!


遠くから見るものいいが、もちろん越前大野城へ登ることもできる。城門のある南登り口からだと徒歩で約15分。こちらは遊歩道が整備されているので安心だ。天守まで上がれば、城下町である大野の町を一望! 越前大野城のもうひとつの魅力といえるのが、「北陸の小京都」とも呼ばれるこの城下町だ。

七間朝市通りの様子。午前中は朝市が行われる


特に「七間(しちけん)朝市通り」は、石畳の道とその両脇に古い日本家屋が並び風情がある。造り酒屋や醤油や味噌の醸造元など伝統的な店から、雑貨、薬局など普段使いの店、土産物まで多種多様。ぶらぶら歩いているだけで楽しい。

通りの両側には店がずらりと並ぶ


店の2階から能を舞うからくり人形が。通り沿いの2か所で見られる


この通りは朝市でも有名。春分の日~12月末まで、午前中に近隣の農家の方々が育てた農産物や加工品などが並ぶ。なんと400年も続く伝統ある朝市だ。地元野菜の新鮮さはもちろんだが、農家のおばあちゃん達と会話をするのが楽しい。「朝市いつ、やってるんですか?」「12月まで毎日。冬、雪降ってても(店を)出してるから」「えっー!?」などと、何気ない会話がいい感じだ。淡々とクリの皮をむきながら、気さくに話してくださるおばあちゃん。商売の気負った感じもなく、自然体で素朴。町の雰囲気にぴったり合っている。

朝市の様子。地元の方と、いろいろと話すのが楽しい


朝市には地元産の野菜などが並ぶ。手作り感がまたいい


湧き水文化!? 大野は水の町だった


七間朝市通りの店の軒先に水場がある。地下水が湧き出したところで、清水(しょうず)という。市内にはこの清水がいくつもあり、大野の印象的な風景のひとつだ。

町に点在する湧き水。飲むことができる


有名なのは「御清水(おしょうず)」。かつては大野城主の米を炊くのに使われたという言い伝えから「殿様清水」の別名も。環境省選定の「名水百選」に選ばれている名水なんだそう。水は自由に飲むことができ、試しに飲んでみると「やわらかい」と感じる優しい味だ。

御清水(おしょうず)の様子。文字通り「清い水」といった感じだ


地下水の水位が表示されている。市内の各所で定期的に観測されているのだとか。住民の水への関心の高さが表れているようだ


七間朝市通りにある七間清水(しちけんしょうず)は、酒蔵の軒先に湧いている。

七間清水も飲むことができる


この酒蔵がなかなか風格のある店構えで、店内はもちろん日本酒がズラリ。日本酒の試飲につられて中に入ってみる。ここは「花垣」という名の清酒を作っている蔵元・南部酒造場なのだ。「花垣」は、まさにこの店の奥で作られているのだという。こんな町の中に造り酒屋があるとは!

酒蔵の軒下に七間清水が湧き出している


店内では試飲ができる


名酒「花垣」がズラリと並ぶ


「大野は水の町なんですよ」と、南部酒造場・代表取締役社長の南部隆保さん。「水には硬水、軟水ってあるでしょう。大野の水は名水百選に選ばれていますが、その百選の名水の硬度の平均をとると、ちょうど大野の水くらいになるそうです。うちもここでその水を汲み上げて酒を仕込んでいます。」

社長の南部隆保さん。大野の水や町について造詣が深い方だ


特別に座敷に上がらせていただいて、話をうかがう。

「この辺はみな、地下水使ってるんですよ。ちょっと掘るときれいな水が湧き出る。だから水道代はタダ。でも……」。聞くと、湧き水に恵まれたこの地も、井戸枯れが問題になった時期があったのだという。冬に融雪のために地下水を使ったことや、生活様式の変化などで、水の使用量が激増したことが原因。でも、それがきっかけになり、住民の水に対する意識が変わっていったという。いまでは条例も整備され、水源地である森の保全活動なども行われている。南部酒造場も水源地の植樹に取り組んでいるそう。「ここの水じゃないと、うちの酒はできないですから」。水を誇りに思うような、愛おしむような言葉だった。

風情のある座敷にご案内いただいた。この座敷の下から昔の井戸が発見されたのだとか


大野の町には味噌蔵や醤油蔵も多い。「でっち羊羹」と呼ばれる水ようかんも名物。これらは、すべておいしい水があってのものだ。この土地の伝統や文化を引継ぎ、ふるさとの水を誇りに思う気持ちが込められている。そう思って口にすると、また違う味わいが。天空の城の城下町は、湧き水の味と文化が今も息づく名水の町だ。

はまなみそはこの土地で人気のある味みそ。ご飯のお供にも、酒のアテにもぴったり


菓子店の店先にて。大野の水に対する気持ちはこんなところにも表れる


【関西ウォーカー編集部】

inoue-h@kadokawa.jp

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