孤高の泥棒が真実を解き明かすミステリー映画『影踏み』で山崎まさよしと再びタッグ! 篠原哲雄監督インタビュー

2019年11月20日 00:24更新

関西ウォーカー

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シンガーソングライター山崎まさよしが俳優としての顔を持つきっかけとなった映画『月とキャベツ』(96)。そこでタッグを組んだ篠原哲雄監督が、再び山崎と共に挑んだのが『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64-ロクヨン-』などで知られる日本ミステリー界の巨匠、横山秀夫原作の『影踏み』だ。

独特の手法で構成された小説だけに映画化は不可能とされてきた最後の一作を、ノワール(犯罪もの)でありながらどこかハートフルな作品に仕上げた篠原監督にエピソードなどを伺った。

オール群馬ロケで作り上げた映画『影踏み』。「新たな群馬映画の発信になれば」と篠原哲雄監督


■山崎まさよし×篠原哲雄×横山秀夫が出会ったのは群馬の『伊参(いさま)スタジオ映画祭』


深夜、人のいる住宅にしのび込み現金を持ち去る腕利きの「ノビ師」真壁修一(山崎まさよし)が、ある晩、忍び込んだ家の寝室で就寝中の夫に火を放とうとする妻・葉子(中村ゆり)の姿を目撃、彼女を止めた瞬間、その場にいるはずのない幼なじみの刑事・吉川聡介(竹原ピストル)に逮捕されてしまう。

2年後、出所した修一は彼を慕う啓二(北村匠海)と共に、なぜ自分が取り押さえられたのか、あの女はどこにいるのか、アンダーグラウンドな人脈をたどりながら、自ら事件の真相にせまっていく異色の犯罪ミステリー。

警察小説の名手とされる横山の作品のなかでも、犯罪者が事件の謎を解き明かしていく作品はほかにないため、話題となっている。

篠原監督が初めて原作者の横山秀夫に出会ったのは、群馬県中之条町の廃校を改装した「伊参スタジオ」で開催されている「伊参スタジオ映画祭」だった。もともと『月とキャベツ』を群馬で撮影したことがきっかけで、同作を今でも毎年上映している映画祭なのだが、2003年に映画作家育成のためのシナリオコンクールがスタート、その審査員として篠原監督と地元の上毛新聞社出身の作家・横山秀夫が参加、ふたりは3年間ともに審査を行った。

山崎と横山の出会いは、さらに後、「たまたま横山さんの『64-ロクヨン-』がこの映画祭で上映される年に、『月とキャベツ』が20周年を迎えたんです。その時のゲストとして山崎さんがやってきて、二人が合うことになる。僕もそうですが、どうやら山崎さんも刊行された作品を読破するほどの横山ファンだとわかり、さらには、篠原と山崎で何かやらないのかという周りからの後押しもあったので、それなら横山さんの作品を、山崎まさよし主演で撮ったらよいのでは?という話が自然とあがってきたんです」と監督。

とはいえ、横山作品はすでに映画化されているものが多く、はたしてどの作品を?と検討していたところ「横山さんのほうから『影踏み』はどうでしょうか、と。誰も手付かずの作品ですと。『月とキャベツ』を育てた群馬でロケをした、新しい群馬発信映画を作るチャンスを僕がいただいた」とこれまでの流れを振り返った。

山崎まさよしがダークヒーローを演じる。(C)2019映画「影踏み」製作委員会


■「演技がうまくなった!」 俳優・山崎まさよしの魅力は、本人が持つ素朴さと男らしさ


初タッグの『月とキャベツ』から実に20余年ぶりの共同作業となった今作。監督は「山崎さんの芝居が、演じるたびにうまくなっていったのを感じましたね。『月とキャベツ』の時、芝居は未経験でしたが、何か人を惹きつけるものがあった。今作では『自分は音楽家という職人性を持っていて、この「ノビ師」という泥棒も職人という意味では共通するものがある』と言ってましたので、それなら出来るねと。僕は、山崎さんの持つ素朴さと男らしさを出してもらえるように作り込んでいったつもりです。

彼はこれまで『自分は俳優じゃないです』と言い続けてきましたが、『それを言うのは俳優のみなさんに失礼かもしれない』と気持ちに変化が出てきているようなので、僕は俳優と名乗ってもよいと思います。ほんとにうまくなっていると思う」と、俳優・山崎まさよしの新たな進化を讃えた。

裏の人脈をたどって、自ら捜査に乗り出す修一。(C)2019映画「影踏み」製作委員会


■「竹原ピストル、北村匠海といったミュージシャンとの演技はまさにセッション」


山崎のほか、竹原ピストルやダンスロックバンドDISH//のメンバーでもある北村匠海など音楽畑の役者もそろった今作。

「3人の起用はまったくの偶然なんですよ。山崎さんとピストルさんは同じ事務所で、ピストルさんが山崎さんを敬愛していて。その二人が刑事と泥棒として対峙し、胸ぐらをつかんだり、取り調べを受けたり。そんな掛け合いを観ていると、終わるのがもったいない!と正直思いました。これは二人のセッションなんですよね。そういう意味では、北村君も同じでした。北村君って、すごくうまいんですよ。今回は存在そのものが重要な役ですが、身のこなしやそぶりを絶妙に使い分けしている。ミュージシャンは、普段から自分で考えて動ける人たちだと思うので、自分なりに演技を考えて現場にやってきたわけです」。

■尾野真千子、滝藤賢一など実力派俳優が人の心の情や恐れ、闇を表現


今作では、母・直美役に大竹しのぶ、恋人・久子役に尾野真千子、久子に恋をする男・久能役に滝藤賢一といった個性的な俳優が名を連ねる。

なかでも尾野真千子は「また一緒に仕事をしたいなと思う人」だそうだ。「ご一緒するのは今回で3本目。非常にきっぷがよくて気持ちのいい女優さんです。映画にこだわっている方だと思いますし、実は山崎さんのファンでもあったそうで、脚本を読む前に『私、座組で出演を決めましたよ』とおっしゃってました」と監督。幼稚園の先生という役でもあるため園での撮影も多かったのだが「カメラを回す前からずっと、園児たちを楽しませてくれました。スタッフが子供たちを盛り上げて撮影に入るというのではなく、役である自分も含め、映画はみんなで作っていくんだという気持ちが根本的にある。そういう意味でも気持ちのいい人です」。

久能は幼稚園に出入りする文具店の男。修一の恋人・久子へ恋心を抱く。(C)2019映画「影踏み」製作委員会


ほか、後半、キーマンとなる役どころの滝藤賢一の演技にも「役柄を、細かく演じ分けていましたね。あんまりいうとネタバレになってしまうけど(笑) 怒りの出し方ひとつとっても、演じわけていましたよ」と、滝藤の計算しつくされた繊細な演技も見どころだと語った。

■山崎が劇中の音楽も担当。主題歌『影踏み』の歌詞に主人公の思いがあふれる


全体を通して流れる音楽も山崎が担当した。登場人物の感情に寄り添うために弦楽アンサンブルも多用。なかには「ボーイソプラノを使いたいというアイデアも山崎さんから出ましたね。そこが、赦しというテーマにつながっているのかなと思います」。

また、エンディングに流れる『影踏み』は、ゆったり歩くようなテンポのノスタルジックなバラード。山崎が精魂込めて生み出した主題歌だ。その歌詞に耳をかたむけると、主人公のあふれる思いが切ないほどに伝わってくる。

青白い月明かりの下、泥棒に出向く主人公の孤独な姿はもちろん、過去から逃れられない人々の悲しみ、苦しみまでもくっきりと。影は何を意味しているのか、ダークサイドで生きるひとりのノビ師が、闇の中から暴き出すものはなんなのか。そして、彼自身に何が起こるのか。山崎×篠崎監督の新たな一歩をぜひ見届けて。

冒頭、山崎の顔に黒い影がかかり、青い「影踏み」の文字が浮かぶ。「当初は白だった。でも、月明かりのブルーなど作中にもたくさんのブルーがあふれるので青に」と監督。


映画『影踏み』は、テアトル梅田、なんばパークスシネマなど全国公開中

■映画『影踏み』公式HP:https://kagefumi-movie.jp/

 

 

田村のりこ

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