ビックリマンまさかの舞台化に見るエンタメ業界の進化「掛け算を繰り返し、強くなる時代へ」
東京ウォーカー(全国版)
2019年秋、チョコレート菓子「ビックリマン」が舞台化するという衝撃のニュースがSNSを賑わせた。「ビックリマン」といえば、1980年代に子どもたちの間で一大ブームとなったロッテのチョコレート菓子。これまでにたくさんのアーティストやアニメとのコラボを重ね、アニメ化、漫画化などさまざまなコンテンツに姿を変えとして広く愛されてきた。そんな「ビックリマン」が舞台化されるのは今回が初めて。今回は舞台「ビックリマン ザ★ステージ」にて企画プロデューサーを務める有村昆さんに「ビックリマン」が舞台化される理由や、今エンタメ業界全体で起こっている「掛け算」戦略、2.5次元舞台のこれからについて話を聞いた。

「ビックリマン」初の舞台化。気になる内容は親子の絆を描いた物語
1977年に登場し、1980年代には全国の子供たちの間で一大ブームを起こしたチョコレート菓子「ビックリマン」。現在はビックリマン第三次ブームといわれるように、AKB48とコラボした「AKBックリマンチョコ」や、機動戦士ガンダムとコラボした「機動戦士ガンダムマンチョコ」などのコラボ商品が発表されるたびに注目を集め、コンビニやスーパーのお菓子コーナーで見かけない日はない。しかし、ビックリマンのストーリーといえば、シールの裏に書かれている情報がすべて。舞台上ではどのように表現されるのだろうか。小学生のころからビックリマンへの愛が深く、今回の「ビックリマン ザ★ステージ」の仕掛け人でもある有村さんは次のように教えてくれた。
【有村昆】「舞台が、クリスマス時期から始まるということもあり、親子の話にしたいというのはざっくり考えていたので、簡単なプロトタイプを作り、それをもとに脚本家の方に形にしてもらいました。ストーリーは、映画でいうと山崎 貴監督の“ドラゴンクエスト ユア・ストーリー”のようなイメージ。かつてビックリマンシールを集めることに没頭していた父親が、ある日訪れたビックリマンミュージアムで、家族をスーパーデビルにさらわれるところから物語がスタートし、忘れかけていた何かに気づく…という現実世界とビックリマンの世界が交差したストーリーに仕上がっています」
一大ブームを過ぎ去ってもなお、ビックリマンがスーパーに並び続ける秘密は“コラボレーション”にあり
そもそも「ビックリマン」が舞台化されることになったきっかけは、なんだったのだろうか。有村さんによると、一大ブームを経たあとも、なお「ビックリマン」が根強く生き残り続けている理由と今回の舞台化には深い関係があるという。
【有村昆】「コアラのマーチやチョコパイなどの人気商品を数多く販売するロッテの中で、1977年から発売されているビックリマンですが、爆発的なブームを過ぎ去った後は“ビックリマン×○○”のコラボをたくさん打ち出してきました。例えば、AKB48とコラボしたAKBックリマンだとか、キン肉マンとコラボしたニックリマンだとか…」
【有村昆】「そのように、さまざまなコンテンツとコラボしあうことで、お互いのファンの乗り入れに成功し、ビックリマンの認知度を広め続けているんです。だから、誕生から40年以上経った今も当たり前のようにコンビニやスーパーに陳列されているんですよね。そのコラボの一環として、有村昆コラボの裏ビックリマンを発売したり、ビックリマン×人狼ゲームのコラボのプロデュースさせていただいたりしました。そのご縁もあって、ロッテでビックリマンの担当をしている本原さんに『ビックリマン×2.5次元舞台』をやりませんかと話をさせていただいたところ『私も2.5次元やりたいと思っていました。最高にいいですね、是非やりましょう』と二つ返事で乗っかっていただき、今回の話が実現したんです」

【有村昆】「僕自身、映画を中心に広くエンターテイメント業界を見てきて、今後2.5次元舞台の市場は、さらに熱を増していくだろうなということは数年前から思っていました。その上、ビックリマンはこれまで多くのコンテンツとコラボレーションしながら、ファンの乗り入れに成功したコンテンツです。おそらく今の段階では、2.5次元ミュージカルのファンはビックリマンをあまり知らないでしょうし、ビックリマンのファンは2.5次元ミュージカルを見たこともないでしょう。お互いのファンが今まで交わらなかったであろうコンテンツ同士だからこそ、ファンの乗り入れ作業をするにはうってつけのコラボレーションだと考えました」
サブスクリプションの普及により、エンターテインメント業界全体が手を組む時代へ
今回の舞台化により、ビックリマンファンと2.5次元ファン相互の乗り入れを意図していると語る有村さん。このことは「ビックリマン ザ★ステージ」に限ったことではなく、エンタメ業界全体において増えてきた視点だと話す。
【有村昆】「特定のファンだけでなく、今まで触れる機会がなかったような方にも足を運んでもらわなくては市場全体が先細ってしまうと思います。今って、映画も音楽もサブスクリプションが普及していて、個人が所有するのではなく、スマートフォン一つで○○し放題が叶えられる時代。映画もIMAX(R)や4DXなど映画館でしか体感できない仕掛けを仕込んで、足を運んでもらうには、気軽に楽しめるにプラスアルファの要素を足さなくてはいけない時代になりました」
【有村昆】「それに皆が同じものを好きな時代ではなく、個々の人の好きがあふれた時代ですから、コンテンツとコンテンツが敵対視するのではなく、手を組むことで相乗効果が生まれるんですね。宝塚がルパン三世や戦国BASARAを上演したり、スターウォーズと歌舞伎がコラボしたりすることで、お互いのファンがお互いのコンテンツに興味を持ち、相互のコンテンツが強くなっている事例はたくさんあります。USJに関しても、ジョーズやE.T.といったユニバーサルの映画作品だけに縛られず、コナンや進撃の巨人とコラボしたことでV字回復したと言われており、USJファンが増えましたのだと思います。YouTubeやネット配信とテレビにおいても、敵対するのではなくコラボレーションすることで、より多くの方から見られるようになった事例はたくさんあります。結局のところ、今はエンタメ業界全体が手を組み合う、共存し合う同盟時代になっているんです」
多様化が進むエンタメ市場の中『クレイジーなほどに世界観』を徹底することが大切
最後にエンタメ業界の中でも、拡大を続ける2.5次元市場で生き残る秘訣については、「ビックリマン ザ★ステージ」のこだわりと合わせて次のように語った。
【有村昆】「テレビや映画に比べると制作費が安いということもあって、最近はまず舞台化する流れも多く見られます。特に2.5次元舞台に関しては、今や年末の紅白歌合戦に出演するほど成熟してきた印象です。ただし、数多くの作品が打たれるからこそ、これからは淘汰されていく時代になり、力のあるチームとそうでないチームの明暗がくっきりと分かれていくでしょう。そのような潮流の中で、大事になってくるのはクレイジーなほどに世界観を再現できるかということだと思います。いくら原作に力があっても、作り手や演者の解釈の違いが起きてしまっては、一気にファンの熱量を下げてしまいますからね」

【有村昆】「れまで数多くのエンターテインメントに触れてきたこともあり、僕自身もそこは絶対にぶらさないようにしました。だからこそ、今回の舞台は、ビックリマンファンが納得できるような内容にすることにこだわっています。もちろんキャストの中には、ビックリマンブームを知らない世代のキャストもいます。しかし、演出を担当してくださっている中野さんや、ヤマト王子役を務める小林正典くん、天野真太郎役の五十嵐雅さん、そして僕のようにビックリマンへの愛が相当深いメンバーがいて、ロッテの本原さんも監修に入ってくださっているので“十字架天使はきっとそんなことを言わないよ”、“もっとこうした方がスーパーデビルっぽい”と指摘しながら一人ひとりに落とし込んで、世界観を作り上げています。きっとビックリマンファンの方にも納得のステージになっていると思います。ぜひ期待してほしいです」
於ありさ
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