同性愛を描く映画『his』主演 宮沢氷魚、藤原季節インタビュー「この映画に愛情を持ってくれたら幸せ」

関西ウォーカー

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2人の青年の恋愛を描いた映画『his』。ゲイであることを隠し、田舎でひっそりと暮らしている主人公の井川迅の前に、かつての恋人である日比野渚が突然娘を連れて8年ぶりに再会するところから物語は始まる。彼らのラブストーリーを軸に、同性愛者である2人が抱える葛藤、田舎での暮らしやそこで暮らす人々との交流、そして親権獲得のために奮闘していく姿が描かれる。監督は『愛がなんだ』や『アイネクライネナハトムジーク』の今泉力哉が務める。

1月24日(金)からの公開に先立ち、本作が映画初主演となる井川迅役の宮沢氷魚と日比野渚役の藤原季節に話を聞いた。

映画『his』で主演を務める宮沢氷魚と藤原季節


「クランクインするのが恐かった」


宮沢と藤原に台本を読んでからクランクインまでどのような思いを抱いていたか尋ねると「始まるのが恐かった」と2人は口を揃える。

宮沢は、「初めてクランクインがこなければいいのにって思った。それだけプレッシャーと責任感や、まだ100%自分が迅でいられている自信がなくて。不安な日々を送っていました」と明かす。

そんな鬱屈とした思いを抱えながらも「誰にも相談はしなかった」という宮沢。撮影を通してその思いは変わっていったか尋ねると、「最後まで切り替わらず、今でも切り替わってないです」と正直な思いを吐露。隣で聞いていた藤原も大きく頷き、「わかります。自分が渚になりきれているか、不安で不安で…」と当時の心境を回顧した。

しかし撮影が始まってみると、その緊張感はいい方向に作用したという。

「僕の気持ちを分かってくれるのは季節くんしかいなかったし、隣にいてくれてすごく支えられた」という宮沢は、センシティブな題材だからこそ「がちがちに決めていたらできなかったと思う。正直、その瞬間瞬間を生きないと成立しなかった」と現場での思いを明かす。「白川っていう町で井川迅として存在して、そのときに起きたことへの自然なリアクションというか感情というものが出せたからこそできたのだと思う」と撮影を振り返った。

そんな宮沢の姿を間近で見ていた藤原は、「自分が俳優としてできることは、宮沢氷魚が演じる迅の心に触れることだった」と語る。

迅の眼差しで動いていく物語に、「決められた眼差しじゃなくて、本当に心が動いてしまうというような演技を引き出すことが僕の役目でもあるのかなと思った」と心の内を明かす。それはまさに演技を越える瞬間。「実際、迅が怒るシーンのときに震え出したりして。氷魚くんの演技を越えたリアルな感情を少し引き出すことができたんじゃないかな」と笑顔を見せた。

2人の青年の恋愛を描く (C)2020 映画「his」製作委員会 配給:ファントム・フィルム


この映画に向き合ったことで変わった意識


本作で同性愛者を演じたことで2人の意識にも変化が芽生えたそう。藤原は、「自分がこの映画を経て変わったなって思ったところは、もしかしたら自分が話している相手の中にも当事者の方がいるかもしれないっていう想像力を持つことができた」と話す。

宮沢は、「この作品に参加したことで普通って何だろうなって最近すごく考えるようになった」と語る。「何なら普通っていう言葉もあってはいけないような気もしているんですけども。みんな違っていいじゃんって思うし、何でひとくくりに普通って言っちゃうんだろうって。みんながそういうことにちょっとでも疑問を抱いてくれたら何か変わってくるんじゃないか」と思いを語った。

そして本作を観る人たちには、「どういう形でもいいからこの映画に愛情を持ってくれたら幸せだなって思いますね」と目を細めた。

「この映画を楽しんでほしい」


『his』は「迅と渚のラブストーリー」だと2人は声を揃える。近年LGBTを扱う映像作品が増えているが、その中にあって本作は、「周りの人間の存在の大きさや、たくさんの人たちの人生が関わっているので、観ている人はどこかに共感できる部分があると思う」と宮沢は言う。

「もし共感できなかったとしても、共感しようっていう段階を踏んでからの共感できないっていうことは意味があると思うし」と、様々な意見があるだろうと予想する。それでも「誰が見ても楽しめる映画になっていると僕たちは自信をもって言えますね」と熱のこもった思いを述べた。

藤原はそんな宮沢の思いを受けるように、「楽しめるっていい。楽しんでほしい。楽しんでくださるのが嬉しい。かわいいシーンも楽しいシーンもある。それは本当見どころです。構えず気軽な気持ちで観てほしいです」と魅力を語った。

「この映画を楽しんでほしい」と口を揃える


共同生活を経て


本作で初共演の2人は、撮影にあたり、10日間の共同生活を送ったという。最初はお互い24時間一緒にいるなんて耐えられないと思ったそうだが、いざ撮影が始まると、その気持ちに変化が訪れる。

宮沢は、「順番通りに撮影が進んでいったんですけど、何年も会っていない設定だったので、僕たちの距離感がリアルに迅と渚に反映されていて。一緒に生活することによって僕たちの距離感がどんどん近くなって、無意識ですけど迅にも渚にも反映されていった」と明かす。

藤原も「一緒に住むと、会えない時間の方が少なくなってくる。そんな会えない時間のときに、自分の中でぽっかりとしたものを感じるというか。それがすごいさみしくて。2人のシーンは辛い時もあるけど楽しかったです。だからストーリーの中で、迅のいない時間を意識できたのは24時間一緒にいたからだと思う」と語った。

今回の撮影では、「どこからカメラで撮られたかもわからないくらいだった」と藤原が言うように、宮沢も藤原も撮影現場で役に没頭していた。

藤原が「だから出来上がったものを見た時は感動しましたね」と言えば、宮沢も「まったく違う人間を見てるような、自分が演じたことを忘れて本当にそこに出てくる登場人物が存在してるかのようだった」と明かした。

「正反対なんだけど意外と合う」


最後に、今回共演したことで実感したお互いの印象を尋ねた。

宮沢は、「季節くんはすごく熱くて感情全開で挑んでくるかと思ったけど、実はすごく繊細な部分があって。感情が豊かだけど色々考えててそのバランスが素晴らしい」と絶賛。「自分の気持ちを大事にしつつ一人で芝居をしてるんじゃなく僕の感情とか引っ張り出そうとしてくれてる。自分を引き出してくれる存在」と藤原に優しい眼差しを向ける。

一方の藤原も「なんてピュアで素直な人なんだろう」とその人柄を率直に表現。「氷魚くんは裏表がなくてピュアで、僕と趣味もタイプも違うけど、何かが共通している、繋がっているのかなって感じますね」と信頼を寄せる。

「正反対なんだけど意外と合う」と笑い合う宮沢と藤原。その優しく微笑ましい2人の様子は、まさに劇中で惹かれ合う迅と渚のようであった。

映画『his』は1月24日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマほか全国ロードショー。

ゲイであることを隠して暮らしている迅の前に、かつての恋人である渚が娘を連れて現れる (C)2020 映画「his」製作委員会 配給:ファントム・フィルム


町草告美

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