福島第一原発の事故「何にも終わっていない」 佐藤浩市と火野正平が大阪で映画「Fukushima 50」舞台挨拶

2020年2月12日 17:00更新

関西ウォーカー 町草告美

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2月10日(月)に大阪のなんばパークスシネマにて、「Fukushima 50」の特別試写会が行われ、主演の佐藤浩市、火野正平が登壇した。

本作は、2011年3月11日に東日本大震災で起こった福島第一原発事故の現場で戦った50人の作業員の奮闘を描いた作品。事故の関係者90人以上への取材を行い執筆された門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)を原作に制作された。

福島第一原発で戦い続けた50人の作業員らの姿を描く「Fukushima 50」

福島第一原発で戦い続けた50人の作業員らの姿を描く「Fukushima 50」

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まだ記憶に新しい震災と事故を描いた作品とあって率直な心境を尋ねられた佐藤は、福島で最初に試写会を行ったことを振り返り、「最初は恐かった」と明かす。

本作では津波や地震などのリアルなカットが多々挿入される。「そういう映像を観ることを強いることに、多少の緊張感と恐さがありました。でもそれを踏ん張って観ていただくことで明日に繋げる作品だと思います。最後まで見ていただければそこに何か感じるものがあると思う」と真摯に伝えた。

火野は、「震災当時、ニュースをテレビで観て、これはやばいぞとは思ったけれど実際何やってるかわからなかった人も、この映画を観るとわかってもらえると思う」と話す。

佐藤は出演の打診があった際、「正直まだ早いんじゃないかという思いもあったし、どちらかのプロパガンダになっても嫌だなという思いもありました」と思いを吐露。「でもそこで監督たちが、ほぼ現地雇用の方が多かった、その前線にいた方々を中心に描きたいという思いを告げられて、そういうことでしたら最後まで一緒に走りましょうということでやらせていただいた」と出演を決意した理由を明かした。

福島第一原発1・2号機当直長である伊崎利夫役を演じた佐藤浩市

福島第一原発1・2号機当直長である伊崎利夫役を演じた佐藤浩市

撮影中のエピソードを聞かれた佐藤は、「シーンを時系列に沿って5日間の出来事を数週間かけて撮るんですけど、そこに身を置いているとみんなの顔がどんどん変わって来る」と振り返る。

それに対し、火野が「同じセットの中に50人くらいの男たちがいたら、そんなむさ苦しいとこ、そりゃ顔変わってきますよ」とぼやくと、「あなたはね!」と佐藤からすかさずツッコミが。「芝居どころじゃないよホントに。男ばかり3週間も一緒にいてさ、中には愛情が芽生えたりさ…」と止まらない火野節に「あなたはね!」と笑って重ねる佐藤。

撮影では、防護服を着て台詞も不明瞭になる中で専門用語も飛び交うとあって苦労も多かったそう。佐藤はそんな環境も「表情はわからないけど、台詞のもごもごした感じが妙にリアルに聞こえてくる。そういった意味で映画の神様いたなって思いました」と笑顔を見せた。

出演するテレビ番組で日本全国を自転車で回っている火野は、「日本どこ行っても元被災地。前に必ずやられたとこがある。そういう国に俺たちは住んでるんだと自覚した」と話す。被災して2年目に自転車で福島を訪れた際には、「沿道の人が『火野さん頑張って』って言うんだよ。俺は『福島頑張れ』って思ってるのに。日本人っていいな、美しいな、強いなって思った」と目を細めた。

旧知の仲である2人の軽妙な掛け合いに会場から笑いが起こる場面も

旧知の仲である2人の軽妙な掛け合いに会場から笑いが起こる場面も

「こいつだけやで、年下で正平ちゃんて呼ぶの」と火野が笑うように佐藤と火野は旧知の仲。そんな火野に対し佐藤は、「この役を引き受けてくださったときに、チャリンコ乗ってるだけじゃないんだ。映画も出てくれるんだと思った」と冗談めかして笑いつつ、「現場で旧知の先輩方が一緒にいてくれて、本当助かるんです。気持ちの上で救ってくれる」と感謝を述べる。「この映画の前線にいた人たちは、ほぼ現地雇用の人で、学校の先輩、隣町の誰々っていうような関係ばかり。それと同じような関係で火野さんたちが僕と一緒にいてくれる。それが映画の中で同じようにありがたかったです」と笑みを浮かべた。

すでに世界73か国で上映が決まっているという本作。「Fukushima 50」とは海外メディアが、50人という意味と50歳以上の人間が残ったという両方の意味をかけて名づけたことに由来する。

これについて佐藤は、「海外から見れば、そのメンタリティってわかりづらいと思う。なぜそこに残ったか、残ったって原子力を前にして何ができるんだと思ったとも思う。何ができるかわからないし、何もできないかもしれない。でも、いなきゃいけない。それをどう理解していただけるか」と話しつつ、「ともかくまず海外の人以上に、この国の人にどういう風に見てもらえるかだと思います」と強い眼差しで語った。

【写真を見る】被災地への思いを真摯に語る佐藤浩市と火野正平

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実際にロケを行った福島について、「何にも終わってないです」と強く訴える佐藤。「まだ帰還困難区域など、日本に人っ子ひとりいない生活の臭いがしないような町がある。それを今、どれぐらいの人が知っているのか」と被災地を思いやる場面も度々見られた。

最後に火野は、「とにかくたくさんの人に見てもらいたい」と思いを伝える。佐藤は、「災害は深い爪痕しか残しません。今回のような二次的な災害もあります。でもその災害を負の遺産だけで終わらせない、少しだけ形を変えて、次の世代へバトンを渡したい。そう思える映画だと思います」と熱くアピールした。

「Fukushima 50」は3月6日(金)より大阪ステーションシティシネマほかにて全国ロードショー。

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