福島第一原発事故で危機を食い止めようと闘う男を熱演! 映画『Fukushima 50』火野正平 インタビュー

関西ウォーカー

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2011年3月11日東日本大震災により壊滅的な被害を受けた福島第一原子力発電所内で戦い続けた50人の作業員の姿を描く『Fukushima 50』が3月6日(金)より公開。本作で中央制御室(中操)を守る作業員・大森を演じた火野正平にお話を伺った。

『Fukushima 50』に出演している火野正平にインタビューを行った


『Fukushima 50』は門田隆将著の「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を映像化。マグニチュード9.0、最大震度7を記録した東日本大震災によって起こった津波によりメルトダウンの危険性にさらされた福島第一原子力発電所。そこに留まり「東日本壊滅」の危機を食い止めようと闘う職員達の姿が描かれる。福島第一原発・所長の吉田昌郎役を渡辺謙、吉田の幼なじみで福島第一原発1・2号機当直長で中操で指揮をとる男・伊崎利夫を佐藤浩市が演じる。今回、火野が演じる大森久夫は管理グループ当直長。伊崎の指揮で原子炉建屋に向かったり、伊崎を支える役柄となっている。

火野は管理グループ当直長の大森久夫を演じる


実際に現場で戦う人々、その意味とは


染谷将太主演2017年の日中合作映画『空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎』に出演していた火野は「その当時、仲のいいプロデューサーに次回作への出演を打診されていた」ということを話す。「言われるがままに現場に来てみれば、現場の最前線に立つ人間の役だった」と思ったよりも重要な役に驚いたのだという。続けて「おそらく伊崎役の佐藤浩市くんと仲がいいから、近くに置いてくれたんだと思う。(中操の現場では)年長ということで風格とまでは言わなくても後ろから支える感じを出すことができたら」と自身の役柄について照れながら話す。

実際の事故を扱う本作、モデルとなった職員も現在は普通に生活をしているということで火野は「その人に恥をかかせたり、そんなの違うって言われないようにということは気を付けた」という演じる上での緊張感があったのだという。「福島第一原発で作業に当たっていた方が撮影現場に何名か見学に来てくれていたけど、僕の演じたモデルの方にはお会いしたことがない」と回想し、もし会っていたならもっとプレッシャーになっていたのかも知れなかったと語る。

しかし、観客に映画と現実を混合してあまり考えないようにてほしいと語る火野。「実際の事故は事故、これはお芝居だから」と言う。「映画とは娯楽だからこそ、とにかく見てほしい」とも語り「映画って自分にとって毎回が面白いものでもないし、見てみると意外と面白かったりするものがあるものだと思う。実際に見てから判断してほしいものだったりする。原発事故のことを扱っている作品だけれども、社会的なものとか、そういうものは一旦置いといて、こういう人たちがいたというエンターテインメントとして受け取ってほしい」と呼びかけている。

さらに「福島第一原発の人が全員『福島を守るため、日本を守るため』ってそんな大きな思いを持っていた人ばかりではないと思う。太平洋戦争でも『お国を守るため』って戦った人ばかりでなかったりする。今回も原発を放棄するわけにはいかないので、その放棄しない方法を模索したり、アクシデントを食い止めるという必死な純粋な思い。そういう人もいるのでは」と今作に登場する人間の胸中を推察する。

『Fukushima 50』は3月6日(金)より公開(C)2020『Fukushima 50』製作委員会


東日本大震災で被災した福島第一原発の作業員館の戦いが描かれる(C)2020『Fukushima 50』製作委員会


日本列島が塀で覆われてしまうかもしれない


東日本大震災のとき、報道で福島のことを知ったという火野。それから自身が自転車に乗り全国各地を巡るテレビ番組『にっぽん縦断 こころ旅』でも福島に訪れたことを振り返る。「2012年に行った時はもうボロボロだったよ。海岸部はとにかく(建物の)土台しかないところを自転車で走り回った、あのときの印象としては地震の影響というより、全部津波の被害の方が大きいという印象だった」と火野は言う。さらに地元の人に「正平さん頑張って」という声をかけられたと話し「住んでる人が一番頑張っているなか、そういう声援掛けられて、違うんじゃないかとは思ったね。僕がその人達に声をかけるほうやろ」と自問することもあったのだと言う。

テレビ番組で日本を巡るなか、火野自身原発の報道を考えると「もともと、原発については肯定も反対もしてなかったけど東日本大震災では色々と想定してなかった感じがする」と語る。「日本という国は地理的にも歴史的にも地震と津波は切り離せない。何百年に一度は来ると分かっていても色々と間違えてしまったのではないか」と感じているのだという。

その後、同番組で東北を巡るととてつもなく大きな防潮堤の存在に気がついた火野。「ここ数年でものすごく大きい防潮堤が建てられてて、海が見えなくて残念だなという思いになったことがある」と景観が損なわれることに寂しさを見せる。「津波に対抗するためには仕方ないんだろうけど、なんだか日本自体が刑務所のような塀で覆われてしまうのではないか」と危惧しているのだと話す。

そこまでして建てる必要に疑問を投げかける火野。「その土地に住んでる人の意見もあるし僕が言うことではないのかもしれないけど、これ以上作るのはどうかと思う。原発事故だって絶対に来ないであろう10メートルの津波を越えたことによって起こったのだから、そういうのを作ったところでいくらでも想定外のことは起こるのではないか。それよりも有事の際の逃げ道の確保や何かあったときのための避難所を作っておくのが優先されるべきなんじゃないかな」と語る。

中央制御室(中操)では緊迫感が張り詰める(C)2020『Fukushima 50』製作委員会


火野正平という生き方


放射能により東日本が壊滅するビジョンも描かれる『Fukushima 50』。火野は「放射能と言われても結局、僕らはどれだけ怖いのかというのがいまいちパッとわからないから」と話す。自身の番組で機材を持ちながら田んぼの線量を測っていた人に出会った人のことを振り返り、自分たちは放射能をどのレベルで感じたらいいのか困惑したことがあったのだと話した。

火野は「もう分からないものは必要以上に怖がらないようにしてる」という心構えでいるのだという「現在、色々な情報が流れている時代だからこそ、怖がっても仕方ないものだと思う」と語る。12歳から芸能界に入った火野「70歳になるけど、今でもテレビや映画に出れるということはこの考え方が間違ってなかったのでは」と振り返る。

「風を読む」ということと、「どこ吹く風」という感覚も大切にしているのだと話す火野。「この仕事を始めてから『褒められたら、蔑まれた。蔑まれたら褒められた』と自分に言ってきた」と言う火野。他人からの言葉や情報に左右されない生き方を貫いているのだと語ってくれた。

『Fukushima 50』は3月6日(金)より大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマほか全国公開。

桜井賢太郎

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