“ワンオペ”再現レシピYouTuberかっちゃんが語る「田舎暮らしが武器になる時代」
東海ウォーカー
地域を問わず、誰でも動画をアップすることができるYouTube。今や、トップYouTuberと呼ばれる人のなかには地方出身者も多い。人気が出ると東京へ進出し、さらに活躍の場を広げるのが一般的のようだが、地元に残るという選択をする人もいる。例えば今やアイドル的人気を誇り、全国イベントも開催する「東海オンエア」は愛知県岡崎市が拠点。地元の観光伝道師にも任命され、岡崎の動画を数多くアップする。
そんな地方を拠点にしているYouTuberとして今回注目したのが、ほぼ感覚で味を再現してしまうという特技と料理スキルを活かし、レシピ動画を配信している、かっちゃん。自身のレシピ本も発売されるなど、これからさらに勢いを増しそうなYouTuberだ。岐阜県というローカルな場所を活動拠点としているという彼女に、なぜ地方に居続けるのか、どんな生活を送っているのかなど、地方YouTuberのリアルな日常を聞いてみた。

毎日動画を公開…激務を支えるのは「今食べたい!」のリアルタイム感
身近な食材を使って、あの人気店の味やコンビニスイーツなど、今リアルに食べたい料理を再現する動画クリエイター、かっちゃん。彼女のYouTubeチャンネル「かっちゃんねる」は50万人以上の登録者数を誇り、今も着実に人気を伸ばしている。
今回自身のレシピ本『人気店の味をおうちで!週末が楽しくなる再現ごはん』(KADOKAWA)が発売されることも「まったく実感がないです…」という彼女。しかし話を聞いてみるとレシピ動画を配信して3年ほどでここまでになるには、やはりそれなりの理由があった。
まず、ほぼ毎日のように動画を配信しているということ。レシピを考え、作って食べ、動画を編集するという作業をすべて“ワンオペ”(一人で)こなしているのだ。人気YouTuberともなると、チームを作って制作することも多いが、一人ですべてすることは、まったく苦ではないという。
「典型的なA型なので、ルーティーンワークをこなさないと逆に落ち着かないんです…。朝起きたら編集作業を4時間ほどし、午後から買い出しに行ってレシピを撮影。それを夕食としていただきます。21時ごろからSNSなどをチェックし、深夜2時ごろまで残りの編集作業をしています」。そして、動画をほぼ毎日アップするのは、今自分が食べたい、そのリアルタイムを表現したいから。昨日のテレビを見て、食べたくなったから…そんな感覚でレシピをアップしているのだ。それは視聴者にとっても、自分たちと同じ時間を生きていることが感じられ、ぐっと身近な存在になる。

そんな身近さは動画の画面の中にも見て取れる。かっちゃんのレシピ動画は実家の台所で撮影されていて、最後に完成した料理を実食するが、後ろに写っている、お母さんの嫁入り道具だという食器棚や蛍光灯らしき暗めの照明が、かなりリアル。まるで友達の日常を垣間見ているような気分になる。
「おしゃれなキッチンにすることも考えましたが、昔ながらの食器棚にも愛着があって…」というかっちゃん。実家暮らしのなんだか懐かしい雰囲気が、これまた親近感をわかせる。
「田舎だからこそ、“新しいこと”ができる」
ひとりでこつこつと料理を作り、自身のありのままの光景を動画に落とし込んでいるかっちゃんだが、最初からレシピ動画に絞っていたわけではなかった。初めて投稿したのが2013年だが、当時は会社で働きながら、帰宅後に動画を撮影、配信していたという。「はじめた頃は仕事帰りに買ったコンビニのスイーツなど、商品レビューを中心にアップしていました。たまたま3年ほど前、ポテトチップスのピザポテトが販売終了になると知り、それなら自分で作ってしまおう、と思ったのが再現レシピをはじめたきっかけです」。
これで一気に視聴者が増え、かなり悩んだが会社をやめて、動画一本に絞ることを決断した。再現レシピの動画がヒットすることになったのは、当時YouTubeでほかの人があまりやっていないジャンルだったと分析するかっちゃん。
「レシピ動画は数多くあるので、その中から選ばれるには、他の人がやっていないことをするのが重要。地元のパン屋を紹介する動画をアップしたこともありますが、東京など都会ならそんな動画はたくさんあります。でも岐阜を紹介している動画はあまりない。地元の人が見たら自分の家の近くのお店が紹介されている、と親近感も持ってもらえる。田舎だからこそ他の人がしていない、新しいことができる」と、地方にいることを強みに感じているという。

視聴者と楽しい、おいしいを共有することが原動力
YouTuberとして食べていけるようになるには、視聴者数が10万を超えることが目安といわれている。かっちゃんもその大台を超えたことで、企業からの案件やテレビの出演依頼など、いろいろなオファーが来るような“人気者”になっていく。しかし…。
「基本的にはあまりそういったオファーは受けていません。東京にいたらもっと声がかかってきていたかもしれませんが…、岐阜にいるのでそれほど多くない。それに人気者になりたい、有名になりたい…というのがなくて。それはちょっと違うと思っているんです。SEO対策をしたり、トレンドをチェックしたりもしていますが、自分がやりたいことや見てくれている人のためになることを追求したい思いがあります」。
視聴者からのこんなもの作って!どんな道具を使っているの?というコメントにも赤裸々に応えている。
「自分の作ったレシピをおいしいといってもらえるのが一番うれしい。コメントでリクエストしてくれた料理はメモ帳に控えておいて、アイデアをふくらませています」といい、友達と会話しているような感覚で、視聴者とのやりとりを楽しんでいる。
今回発売するレシピ本を見ても、気取った料理はまったくない。あらゆる身近な食材を駆使して再現しているのは、誰もが知っているファミレスの人気グルメや今流行っているチーズ料理など。“おいしい”や“楽しい”を誰かと共有したくなる料理ばかりだ。
自身を“ただの一般人”というかっちゃんは、視聴者への感謝を忘れず、コツコツと地道に動画を作ることで着実にファンを獲得してきた。実直で飾らない人柄が動画にもにじみ出ているかのようだ。お金や名声ではなく、自分が本当に楽しいと思えることを、楽しみにしている人に届け続けてきた、シンプルな活動が実を結んだ。今後、さらにフォロワーを増やして“人気者”になり、動画以外に活躍の場が広まったとしても、環境が変化しても「YouTuberはやり続けたい」という。

ふらっと出掛けたスーパーで試食をしていた時に声をかけられるなど、たまに恥ずかしいこともあるが、街で目線を感じたら自分から声をかけ、プライベートだなんだ言わず、顔出しYouTuberを楽しんでいる、かっちゃん。“田舎暮らしのちょっと面白いことをやっている日常”を飾り気なく映しながら、日々を過ごす。地方にいることで自分のペースを守ることができ、さらに“強み”とすることができる時代なのだ。身近な友達が実は人気YouTuberだったなんてことは、本当に日常なことになってきているのかもしれない。

中村竜也
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