「ゴールデン☆ベスト」をリリースした“つボイノリオ”にロングインタビュー！【4】

■それは正しい反応だと思います。

T：3年くらい経って“金太～”の話が出てきて。周りは「もうそろそろ出せよ」って言うんだけども、俺は別に（ラジオDJとしても）プロダクションにも所属してないし、そう定期的に出せるわけでもないし…。

■でもすごいじゃないですか。みんなが期待して「もうそろそろじゃないの？」とかって言うのは。その期待どおりというか、当時僕は中学生だったんですけども、やっぱり衝撃的でした。“金太の大冒険”もアルバム『ジョーズ・ヘタ』も。みんながみんな買えないから、誰かがLPじゃなくてカセットを買って、それをダビングしてみんなで聴いて、みんな夢中になってましたね。

T：ありがたいことですね。あれ全部買ったらものすごい売り上げになったんだろうけど（笑）。

■す、すいません（笑）！

T：それでも訊いたらね、シングル5万枚、アルバムが1万枚売れたらしいですよ。「らしい」というのは、あのー、潰れちゃったんで一銭も入ってこなかったんですよ。あの頃エレックは斜陽になっていたんですよね。だから海援隊の“母に捧げるバラード”も3分の1くらいしか印税入ってこなかったらしいです。紅白まで出たにもかかわらず、ですよね。で、もう最後めちゃくちゃになって、山崎ハコとずうとるびくらいが最後のパワーだったみたいですけどね。

【「こういう歌詞なの？　こんな歌詞なの!?」って（笑）】

■中学生だった頃みんなで話してたのは、歌詞が最高に面白いというのは当然なんですけれど「音楽がかっこいいね」と。“金太の大冒険”のいわゆるカントリー調の軽快な感じとか…。

T：ピッキングのあれなんかね。

■そうそうそうそう、すごく新鮮で、『ジョーズ・ヘタ』のアルバム1枚聴くことによって、すごく音楽的な勉強になったなあって気がするんですよ。

T：それはねぇ、なかなか当時の中学生としては聞く耳を持ってますね。

■いや、僕だけじゃなくてみんな言ってましたよ（笑）。

T：あれはね、最初にスタジオ入って、で、ミュージシャンがいるわけですよ、やってるわけですよ。すごいうまいんですよ、ピッキングが。カントリー調の。「すごいなあ」って聴いてたら、そのなかの1人がパッと立って「つボイさん、どうもようこそ！　ちょっと人手が足りないんで今弾かせてもらってますけど、担当ディレクターです」って言われた時に「この人ミュージシャンで食ってなくて、片手間にやってこんなにうまいんか!?」と思って「えー！」と思って。

■いい話です！

T：で、エレックの浅沼さんていう人がいてね、あの時に専務か何かだったと思うんですけど、その人の部屋に行ったらね、壁にチェット・アトキンスと握手してる写真が飾ってあるんですよ。ギターにサインしてもらって握手してるんですよ。そういうのが大好きで、そっくりやるんですよ、チェット・アトキンスを。その弟子だったのがさっき言った小池さんていう担当のディレクターだったんですよ。だからそっちから教えてもらって「そうじゃない、そうじゃない。チェット・アトキンスはこうやってここでこんな音を一発入れながら次にボンと行くんだ」っていうのを完璧にその人もやれるわけですよ。

■みんな音楽が好きだったんですね。スタッフの方々も。

T：そうそうそう。で、俺は作詞作曲家でミュージシャンなんだけど、この人たちより低いじゃないかと、音楽性が（笑）。俺、こんなギターよう弾きませんもん（笑）。ベース入れながら、こっちではメロディ入れてくわけですよ。もうね、「えぇ～！」っていう感じですよ。したら、四人囃子の森園もその中にいて、そうそうたるメンバーなんですよ。で、みんなはすごい真剣な顔して弾いてるわけですよ。で、「じゃあ歌手の人来たから」って。同録で、「一発でやりますよ」ということで。田舎から出てきたばっかりで、みんなグワーッとやってるから「どうしようかな」と。で、「じゃあテイク1お願いしまーす」っつって、歌い始めたんですよ。《あーるひ、金太が歩いていると》（中略）《♪金太、守って、きんたまもって～》ってとこまでいったら「ちょっ、ちょっと待って！　こういう歌詞なの？　こんな歌詞なの!?」って（笑）、それまで精密機械のようだった演奏が一気に崩れてNG出しちゃって…。その時（初めて偉そうな顔をして）「君たち、困るなあ。ちゃんと弾いてくれなきゃ困るよ」と（笑）。

■ふははははは！

T：そこで一気に気が楽になりましたね。

【取材＆文＝伊藤英嗣】

→【5】に続く

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