「ゴールデン☆ベスト」をリリースした“つボイノリオ”にロングインタビュー!【5】

関西ウォーカー

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■友達に(そういった破壊的言葉遊びはないけれど、西部劇などに代表されるドラマの「決まり事」を皮肉った歌詞と言えなくもないところがおもしろい)“ヤイ・ヤイ・オウ・オウ・イエ・イエ・ウェスタン・ハピネス・イッツ・オールライト”が一番好きだってやついましたよ。

T:これもまたね、ちゃんとカントリーっぽいね。

■タイトルからして、マカロニ・ウエスタンっぽいとも言えなくもない。

T:当時まだアナログでしたから、これがね、またアルバム作る時に一番最初だったのかなあ。ちょっと忘れたんですが、行ったら、これまたミュージシャンうまい連中なんですよ。で、僕はこっちのほうで聴いててカラオケ録りずーっとやると。で、「つボイさん、ちょっと聴いてて。これからやりますから」ってポーンとみんなやるわけですよ。「どうです?」「うまいすねぇ」「いや、何かないですか?」「すっごいですよ」「わかりました」っつって次々にいろんなものを被せてくわけですよ。で、次のが被さって「どうです? これは」「うまいです。すごいです」「わかりました。じゃあ次の入ってください」って次の被せの人たちが来るわけですよ、いろんな連中が。で、ポーンと被せて「つボイさん、この被せはどうでした?」「いいですねぇ」「何かないですか?」「ないですよ。うますぎですよ、これは」って。で、「これで全部なんですけど、本当に大丈夫ですか?」「ちょっと1つ言っていいですか」「何でしょう?」「…ちょっとキーが低いんですけどぉ」「あのねぇ! それ最初に言ってくださいよ! みんな帰っちゃったからっ!」って。

■うはははははは!

T:で、「どうする? これ」「ちょっとピッチ上げて速めようか」と。「でも…、ただでさえ短い曲ですよ」って(笑)。で、ピッチ上げたらすーごい短い曲になっちゃったの。

■(笑)それが、アルバムのなかではいいブリッジになってますけどね。でも当時は気づかなかった…。ただ僕ら、子供の頃“帰って来たヨッパライ”を聴いてたから、結構テープの早回しに対していい印象を無意識のうちに持っていたのかもしれないです(笑)。

T:本当の原音はもっと低いんですよ。

■いやー、30年40年来の愛聴盤の曲の裏話が聞けて嬉しいです。裏ジョージ・マーティンみたいな。「回転数で何とかしちゃおう」って(笑)。

T:「ああそうか。『うまいうまい』って言ってちゃダメなんだ」って、演奏聴いてて。自分がそこで歌うことをちゃんと考えないと。でも圧倒されますよ、東京のミュージシャンなんかがバーンと来るとね。

■東京っていうか、うまいミュージシャンが本気で弾いてたら何にも言えなくなりますもんね。

T:そうそう、言えないし、だいたいかっこいいんですよ。レコーディングスタジオのちょっと前に駐車スペースがあって、そこにすっごい車で来てギターとか楽器持って「おはよーございまーす」って入ってきて、みんな初見でスッと合わせちゃうんですよ。俺たちなんか高校の時、バンドやるにも1曲仕上げるのに何十時間もかかって「ダメだなあ」って言ってたのに(笑)。そういう人たちに対して「もうちょっとこんな感じで…」なんて言えないでしょ。

■言えない言えない(笑)。

T:ただただ「すごい! すごい!」って言ってるだけで、キーのことだって言えなかったですよ(笑)。そういう意味では、テイチクの時は端っから僕らの感性は入れてもらえなかったけど、エレックの場合は極力「どうですか?」って訊きながらやってくれたんで、緊張もしたけども「これがレコーディングなんだ」ってことを初めて体験したような気分でしたね。

■きっとよかったですよね。エレックさんが最終的にどうなったかは別として、きっとすごくいいタイミングの、いいセッティングというか、すごく幸運な出会いというか、幸運な事件というか、いい意味ですけど。

T:そうですね。だから未だにそんなに親しくない関係でも、エレックで出した連中っていうのは、顔を合わせると「やあ、やあ」って感じになるんですよね。

■同じ釜のメシを食った仲間みたいな?

T:ええ。山崎ハコさんなんかだいぶ後にしか会わなかったけど「知ってますよー」いう話ですよ。その頃、僕らがエレックに「ちょっとこうしてほしいな」って行くと、誰もいないんですよね。で、「みんなどこ行った?」って訊くと「山崎ハコさんのコンサートがあるから総出で手伝いに行ってる」って。「どれだけあんたのコンサートで俺は要求がとおらなかったか!」ってそんなことを言うわけですよ(笑)。「ほとんどあなたにかかりっきりでしたよ、最後のほうのエレックは」なんて文句言うわけですよ。山下達郎だってそうですからね。シュガーベイブでずっとやってたから、会っても「つボイさんですね」って向こうもちゃんと対応しててくれたし。

■スタジオに会いに来てくださったそうですね。

T:ね、わざわざ来てくれるし、大貫妙子さんだってFMでやってた時なんかは「エレックでやってた人でしょ?」って(笑)。だからある意味でエレックいうところはすごい僕らにとっては大きな意味がありますね。

【“マイ・ウェイ”でも歌ってやろうかしら】

■今回の2枚組『つボイノリオ ゴールデン☆ベスト』、1枚目には『ジョーズ・ヘタ』が丸ごと入っててボーナスト・ラックが付いている。そしてもう1枚には、冒頭の“本願寺ぶるーす”のほかは最近の曲が入ってる。そっちのお話をうかがう前に、もうちょっとだけ昔のことを…。これは以前からうかがってみたかったことなんですが、『ジョーズ・ヘタ』って、アナログのA面はわりとロック&フォーク&カントリー・サイド、B面は歌謡曲サイドみたいな意識があったんでしょうか?

T:そんな配慮というか、余裕もなかったですね。“金太の大冒険”と“極付けお万の方”くらいしかなくて、それでアルバム作るってわけですよ。で、「どうする! どうする!」ってことで、とにかく曲埋めなきゃいけないってことで“女学生”とか“~ウェスタン”とか“怪傑黒頭巾”みたいなのを「俺作るよ」って作って、“一宮の夜”とか。でもどうしても足りないんで、“男の子守唄”“ワッパ人生”“気楽な時代も過ぎました”っていうのは作ってもらったんですよ、誰かに。間に合わないんで。

【取材&文=伊藤英嗣】

→【6】に続く

http://news.walkerplus.com/2011/0908/23/

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