ナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチに10年ぶりの再演となる「ノーアート・ノーライフ」を聞く!
関西ウォーカー
ナイロン100℃を率いるケラリーノ・サンドロヴィッチ。現在の肩書はミュージシャンで劇作家、脚本家、演出家、映画監督、俳優という多彩すぎる活躍ぶり。そんな彼が01年に上演した「ノーアート・ノーライフ」を10年ぶりに再演。パリのカフェに夜な夜な集う“自称芸術家”の日本人たちの物語だ。古田新太と組んだ「奥様お尻をどうぞ」の公演前日、楽屋で話を聞いた。
Q:10年前、近鉄小劇場での上演でしたね。すごくおもしろかった!
「ありがとうございます。前は近鉄小劇場で、今回はドラマシティのような広いところでやるので、ニュアンスが伝わるかどうか不安ですけどね。10年以上前、近鉄アート館で「ガンビーズショー」っていうナンセンス・コメディをやった時、まるっきりウケなかったんです(笑)。笑いしかないのにウケない。ナイロンは90年代、大阪にはそっぽ向かれてたからね(笑)。大阪にたまに来てもお客さん入らないし、おもしろがってる感じがなかった(笑)。だから「ノーアート・ノーライフ」も、初演の時はこわごわ、でしたよ。今世紀中に受け入れられるかな~と思ってた時期に、温かく迎え入れてくれて良かった。10年たって、有り難いし喜ぶべきことですよね」
Q:男性8人の芝居で、キャストも10年前とほとんど同じですね。
「ダメな男たちがしょーもない話をしている、わかりやすいシチュエーションコメディです。10年たって、27歳だった大倉(孝二)くんは37歳になり、温水(洋一)さんは髪の毛がなくなり(笑)。僕を含めみんな年をとって、悲しさもおかしさも5割増しぐらいになるんじゃないですかね。女々しい男の話だけど、ほんとにわかりやすい。自分でDVD見直すと、テイストはすごく軽い作品なのに、すごく丁寧に書いていると思う。大幅に書きなおすなら、新作を書きますよ。ただ、役者からは書き直してほしいとメールが来る。再演は前回と比べられるから怖いんですよ。特に10年前の記憶の中にしかないお客さんは、脳の中でよりおもしろくしてしまうからね」
Q:テーマは才能と世の中の折り合い。
「音楽プロデューサーをしている時、筋肉少女帯や電気グルーヴたちは売れたけど、消えてしまった人もいる。自殺したり、音楽をあきらめたり。そんな彼らが僕らより才能が劣っていたわけじゃない。お金をたくさん稼ぐことが成功、幸せとは言い切れない。これはつねに僕の性分だけど、お金はないよりあった方がいいけれど、それは結果的に付いてくるものであって、お金が目的となることには嫌悪感を感じるんです。そんな気持ちで、うまく生きていけなかった彼らを擁護したい気持ちが率直に出ていて、温かい目で彼らを見ている。辛辣なシーンもあるけど最終的に楽観的に着地しています」
Q:では、今回も変わらずに?
「今回は、黄金期に名声を極めた人たちも、さて本当に幸せだったんだろうかという視点を加えるつもりです。世の中、そんなもんだで終わる? フザケんなよ、世の中おかしいだろっていう思いも震災以降あって。必ずしもいいものが認められるわけじゃない。いいものの中にも売れるもの売れないものがあり、悪いものの中にも売れるもの売れないものがある。いろいろってことですよね。人生や世の中は不可解なもので、それでも生きて行くしかないからには、やりたいことをやって生きていくのがいいかなと思いますよ。いろんな壁はあるだろうけどね。だから、ダメな人たちだから切り捨てるというのではなく、大丈夫だよって言ってあげたい気持ちなんです」
Q:大阪に来た時、いつも行く場所やお店とかありますか?
「大阪にはもう100回ぐらいは来てますけど、あまり外に出ないので、決まったお店とかはないですが、ある時期はワッハ上方(上方演芸資料館)のライブラリーに通ってました。漫才師のエンタツ・アチャコさんの映画や、藤田まことさんのテレビ番組「てなもんや三度笠」とか、芸人さんが出てる昔の映画や公開番組のビデオを見てました。最初に行った時は楽しくて楽しくて、毎日行ってました。東京では、まとめて見れるところは少ないし、買ったら高いし、買えないものもあって。それが無料で見れるんですからね」
Q:宮藤官九郎さんも良く行ってらっしゃったそうです。作品に反映させたり?
「直接はないですが、実は僕は親父がジャズをやっていたので、小さい頃から芸人さんに囲まれていたんです。で、脱線トリオやトニー谷の映画とか作品としては超B級C級の、人情喜劇よりむしろドタバタ喜劇やくだらないだけの映画とか、そういうものを見て力をもらっていたんですよ。古びていたり、笑えないものだったり、雑だったりするものが多いんですけど、それを命がけでやっている人を見ることが力になったんじゃないかな。一人で通ってました。結婚してからは奥さん(緒川たまき)と一回行きましたけど、つねに単独行動なんです。NGKにもよく行きました。いつも売り切れてるので通路に座って見てましたね。それから2丁目劇場にも。ダウンタウンが拠点を東京へ移す前に漫才をバリバリやったり、さんまさんの『花の駐在さん』とか」
Q:テレビと劇場で見るのとは違いますねぇ。
「生は大事ですよ。やってることはテレビと変わらないんだけど、テレビよりすっごいおもしろかった。中学生の時、生で東京ヴォードビルショーや東京乾電池を観た時は衝撃でしたよ。そのあとラジカルガジベリビンバシステムとワハハ本舗を見て、この4つがなかったら多分、演劇やってないと思う(笑)。生で笑うことの、ライブのダイナミズムに取り付かれたんですね。だから、最初は演劇の体裁はとっているけど、やりたいことはコントでしたね。この『奥様お尻をどうぞ』みたいな」
Q:「ノーアート・ノーライフ」は演劇ですよね。
「はい。シチュエーションコメディの中でも非常に笑いの密度が高いものだと思います。シチュエーションコメディって、意外と前半はあまり笑えなくて、後半に、前半で張った伏線をどんどん解いて行くっていうのが常套手段なんですが、これは全編おかしいですね。この作品は僕の書いたものの中であまりお客を選ばず、誰でも楽しめる。家族で来ても楽しめます。ナイロンでは、何本かしかない珍しい作品ですね」
【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】
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