アーティストや評論家など名だたるメンバーが集結! 「おおさかカンヴァス」見学ツアー&座談会 ①

関西ウォーカー

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

公共空間での多様なアート作品の展示で注目を集める「おおさかカンヴァス推進事業(大阪府主催)」の取材の依頼を頂いた時、正直「どうしよう」と思った。

現代アート界の気鋭の異端児アーティストで、おおさかカンヴァスでは審査員も務めるヤノベケンジ氏をはじめ、美術評論家として現代美術界を牽引されている椹木野衣氏、「サルでも描けるまんが教室(通称サルまん)」などの著書でお馴染みの竹熊健太郎氏(今回はカンヴァスにアーティストとしても参加)など、錚々たる面子に紛れて「アート」についてのうんちくを語るなど、とてもじゃないが出来ないと思ったのだ。だって私にはアートについて専門的な言葉を並べられるほどの知識など無いし、「うわあデカい!」「なんかキラキラしててすごい!」「なんかかっこいい!」というアホみたいな感嘆でしか芸術を表現出来ないただの芸術素人で、自分で絵でも描こうものなら、ブタなのかイヌなのか皆目検討がつかないほどの筆音痴なのである。

だけど、そんな芸術音痴な私なのだけど、アートの事は好きだ。これははっきりと「好き」なんである。何故「好き」なのか。

それはとても個人的で、ある意味病的で、過剰なほどアヴァンギャルドな妄想や主張がこれほどまでに堂々と発表できる場所は、この世の中ではもはや芸術の世界だけなのではないかということと、その世界で堂々とそれらを主張し続けている人間がいるということが面白い。だから好きだ。しかも今回は美術館やギャラリーという「箱」から抜け出し、大阪の街をそのまま展示会場にしようという大胆すぎるコンセプトにもそそられた。

 そもそも、このアート事業が、何故ここ大阪で開催されることになったのか。

大きなきっかけは、橋下元府知事(現大阪市長)が、殺風景な木津川護岸にウォールペインティングを描くことでアーティストに活躍の機会を提供しようという提案からだった。2009年に始まった木津川ウォールペインティングを経て、さらに規模や内容を拡充して2010年に始まったのがこの「おおさかカンヴァス」である。

このアートイベントが注目される理由のひとつとして大きく挙げられるのが、キュレーターやディレクターが選抜した作品やアーティストを美術館やギャラリーなどで展開する、従来のいわゆる「作品展」とは異なり、有名無名問わず公募で選ばれたアーティストたち自身が「街」をカンヴァスに見立て作品やパフォーマンス、イベントなど多様なアートを展示・発表するという点。イニシアティブを握るのが、まずアーティストたち自身であるという部分である。

そして何より特筆すべきなのが、「行政によるバックアップ」という部分。本来は規約や制約を取り仕切る立場である「府」が、芸術の表現の展示場所として街を開放し、高校生から著名アーティストまで入り交じった異例の芸術祭を運営するということ事態、前例のないことなのである。

この芸術による「価値ある挑戦」も、今回で2回目の開催となる。前回を凌ぐ作品の応募数と作品の多様性を見ても、このアートの祭典が如何に発展的で重要なものであるのかが伺える。

そんなわけで今回、アート界の偉人たちと一緒におおさかカンヴァスで展示されている作品の数々を拝見してきたわけですが、芸術たるものの真髄を理屈や解説でもって理解することは初手から諦めておりますので、そういう「ちゃんとした」レポートを期待してこちらのサイトを覗き見に来て下さった方たちには先に謝罪しておくことに致します。ごめんなさい。

●通天閣でマンガを読む

「ビリケン物語~太郎とマリケン純情篇~」/新世界エリア/作者:京都精華大学TMゼミ

まず最初に訪れたのが、浪速のシンボルタワーである「通天閣」。

ここには編集家(編集者+作家)である竹熊健太郎氏と、氏が学科教授を務める京都精華大学の「TMゼミ」のゼミ生らが手掛けた「ビリケン物語」が展示されているのだが、その展示方法が凄い。普段は展望台となっているフロアの窓ガラス全36面をページに見立て、ぐるり360度でひとつのストーリーを展開しているのである。かなり大判のガラスに直接スクリーンを貼付けた画はかなりの見応え。おまけに、ガラス超しに見える大阪の町並みもきっちり各コマの背景として組み込まれており、まさに「空間ごと読む漫画」。

「通天閣も事業に協力していると聞いて、この展望台に上った瞬間に“このガラス面は使える”と思った」と竹熊氏は語る。

そんな大胆かつ斬新な展示方法にももちろん驚かされたのだけど、あくまでもこれは漫画。やっぱりストーリーが気になるところである。そう思いながら漫画を読むことに没頭してみた。

まず私の気持ちを射止めたのが、この漫画の主要キャラクターのひとりであり、通天閣に奉られている“商売の神さん”「ビリケンさん」である。このビリケンさんが、何と言うか、メッチャむかつく表情をしているのである。口の利き方も悪くおまけにシスコン。

ストーリーを要約すると、今は現役を引退した(と言っていいのかわからないけど)道頓堀の人気者、“くいだおれ太郎”とその彼女でありビリケンさん最愛の妹である萌え系美少女“マリケン”の恋路を巡っての三角関係を描いた完全なるギャグ漫画なのだが、随所に思わず「これは大丈夫なのか!?」と心配になってしまう「タブー」が描かれているのである。妹の貞操を案じた兄・ビリケンとくいだおれ太郎の死闘(?)のシーンでは巨大ロボと化した通天閣が国宝である大阪城を叩き割るし(しかもチョップで)、エンディングはまさかのBL(BOYS LOVE)オチ…。かなり見る側を選ぶ内容であるにもかかわらず、公共の観光施設で、しかもこの規模でやってしまうところが素晴らしい。あまりに面白かったので、ぐるぐる何周もしてしまった。

きちんとしたストーリー展開を持ったれっきとした「漫画」というジャンルが、アートという分野へ参加するのはまだまだ異例(井上雄彦氏が手掛けた“最後の漫画展”はその先駆け)とはいえ、ここからまた漫画という「読み物」と芸術との新しい”化学反応”が生じるのでは、という期待が膨らむ作品だった。

以下②に続く

http://news.walkerplus.com/2012/0125/22/

【取材・文=三好千夏】

この記事の画像一覧(全3枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

花火特集

花火特集2025

全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

CHECK!全国の花火大会ランキング

CHECK!2025年全国で開催予定の花火大会

おでかけ特集

今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け

アウトドア特集

アウトドア特集

キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介

ページ上部へ戻る