アーティストや評論家など名だたるメンバーが集結! 「おおさかカンヴァス」見学ツアー&座談会 ②
関西ウォーカー
おおさかカンヴァス座談会①の続き
●民家の小宇宙
「明るい/暗い家ー大阪ー」/北加賀屋エリア/作者:佐藤隼
通天閣を後に、次の展示作品がある場所に向かう頃には雪がちらついてきた。
一同タクシーに乗り込み、到着した場所は…何の変哲もない大阪の下町だった。
「ここです」と広報の方が誘導してくれたのは、やはり何の変哲もない、ごくありふれた下町の民家。芸術の香りどころか生活臭がぷんぷん充満しているこの場所に、いったいどんなアートがあるというのか。半信半疑で民家の戸をくぐってみた。
狭い玄関でなんとか靴を脱ぎ、白い紙に覆われた二間の座敷にあがった。どうやらこちらの作品を手掛けた作者はこの「作品」の中で生活をしながら創作活動をしていたらしく、座敷の中には歯磨き粉やらちゃぶ台やらみかんやら、如何にもここで生活していますよという形跡がそのまま放置されていた。蛍光灯の光にさらされたそれらは、確かに異様な空間を演出する小道具のひとつとして見ようと思えば見れたのだが、正直、これのいったいどこにアートを感じればいいのかまったくわからなかった。何と言うか「おかしな隣人宅へ、留守を狙って忍び込んだ」というような感覚だけだったのだ。その時点ではまだ。
よく見ると、座敷をすっかり包んでしまっているその白い紙には、あちこちに蛍光黄色をした塗料のようなものが無造作に付着させてあった。
「何コレ?」
と思った矢先、この作品の作者である佐藤隼氏が帰宅し、挨拶もソコソコに作品についての説明が始まった。
「蛍光灯の下ではわからないんですが」と、ぱちんと電気を消したその瞬間。
ちいさな二間の空間に無数の光の点が現れた。
足下も頭上も、じんわりと黄色い光を放つ光の点に包まれ、陽に焼けて褐色になった畳敷きの座敷は一瞬にしてちいさな宇宙になった。間仕切りとなっていた壁は姿を消し、手を伸ばせばさらに奥へ奥へ、どこまでも吸い込まれそうだ。
その場に居た全員から、「おお」とか「うわあ〜」という声が漏れた。
綺麗。でも、何だかちょっと恐いような。不思議な感覚が妙に心地よい。
「まあこんな感じです」と再び蛍光灯が点灯されると、またしても一瞬で小宇宙は例の所帯染みた座敷に戻り、あまりにも心地よい夢の世界からむりやり連れ戻されたような気分になった。もっとあの空間に居たかったのに。
発光する点の正体は特別に調合された蓄光塗料ということだった。
作品の根底にあるテーマは「電力の在り方を見直す」という、とてもタイムリーで現実的な問題だったのだけれど、私にはただただロマンチックだった。
ここで見る夢はどんなんだろう?
そんな空想が止まらなかった。
以下③に続く
http://news.walkerplus.com/2012/0125/21/
【取材・文=三好千夏】
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