日韓の実力派俳優共演で話題の映画「マイウェイ~」で主演のオダギリ&カン・ジェギュ監督にインタビュー

関西ウォーカー

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オダギリジョーとチャン・ドンゴンという、日韓の実力派俳優共演で話題を集める映画「マイウェイ 12,000キロの真実」。日本占領下の朝鮮で出会い、マラソンのよきライバルとして成長するもいつしか憎み合う関係となった日本人と朝鮮人の青年が、やがて第二次世界大戦で3つの戦争を経験する数奇な運命を歩む中で絆を取り戻していく。そんな本作の主演を務めたオダギリジョーとメガホンを取ったカン・ジェギュ監督が来阪し、映画はもちろん、その裏に秘められたある想いを語ってくれた。

─チャン・ドンゴンさん演じる信念の強い青年ジュンギクに対し、オダギリさんは戦争により狂気に満ちていく青年・長谷川辰雄を演じていますが、監督がオダギリさんをキャスティングしたポイントは?

監督「オダギリさんの出演作を観て“とても素敵な俳優だな”とずっと思っていました。キャスティングのオファーの際に初めてお会いしたんですが“とにかく一緒に仕事がしたい”と思いました。俳優さんを見て瞬時に、その人に魅了されることはめったとないのですが、オダギリさんはそういう魅力のある方で。彼が現れた時、僕が頭の中で思い描いてキャラクターそのもので、動物的な直感で“辰雄だ!”と思いました」

オダギリ「そう言っていただいてうれしいですね(笑)。絶対に成功させなきゃいけないようなメジャー作品への出演は複雑な心境でしたが、海外の監督に声をかけていただくこと自体、光栄なことだと思いました。監督は『シュリ』や『ブラザーフッド』など、日本における韓国映画の流行を作り、韓国では伝説的な巨匠と言われている方なので最初は“偉そうで、怖い人だったらどうしよう…”と不安に思っていたんですが、実際にお会いしてみると、とても優しくおっとりとした方で安心しました。韓国のスタッフは若い人が多くて20代がほとんどなんですが、経験の浅いスタッフが上手く動けなくても監督は怒ったりせずいつもニコニコと笑っていてくれるんです。僕らへの演出も役者を追い込んでいくのではなくて温かく包み込んでくれた上で“自分が感じるように自由に演じてください”といった感じでした」

─オダギリさんにとってキム・ギドク監督の「悲夢」につづいて、2度目の韓国映画の現場となりますが、日本の現場との違いを感じることはありましたか?

オダギリ「監督それぞれにスタイルを持っていらっしゃるので、現場のスタイルもそれぞれに違いますが、カメラの前で芝居をすること自体はどこの国でも変わりはありません。でも、今回の作品は戦争が描かれているので準備や撮影に時間もかかりましたし、スタッフも日本だと50人くらいなのが200~300人いたり、時間の使い方や規模もまったく違ったので、今回に関してはこれまでの作品とはまったく違う大規模な現場でした」

─戦争シーンなど過激なシーンも多かったと思いますが、撮影で苦労したシーンなどはありましたか?

オダギリ「海外の作品に参加すること自体が一番大変なことですね。日本人だと語らずとも分かり合えるものが文化や人種の違う人たちとの共同作業だとそうはいきませんからね。事細かなところまで話し合わなきゃいけないことがストレスになるんです。当たり前に感じていることが共有できないので、毎回つらい目に遭うんですよね(苦笑)」

─そんなオダギリさんを監督はそばで見ていていかがでしたか?

監督「現場はとてもタフでなきゃいけないし危険も伴います。なので、オダギリさんが撮影に耐えられるのかということや、海外で8か月から9か月も過ごすことについても懸念しましたが、杞憂に終わりました。オダギリさんは“プロとはこういうものなんだ”という姿勢を見せてくれ、スタッフも僕も唸らせるようなすばらしい現場でした」

─今回、長谷川を演じていてオダギリさんご自身と重なる部分はありましたか?

オダギリ「戦争については自分のおじいさん、おばあさんの話を聞いたり、8月になるとテレビで観たり、知識としてはあるじゃないですか。国のためや家族のために戦う当時の日本国軍人の気持ちを理解できなくはないですよね。ただ、自分が生きている現代と戦争当時はやっぱり大きくかけ離れているので、役と似ている部分、似ていない部分を意識することはありませんでした。それよりも、監督が文字で書いた人物をよりリアルに人間的に肉付けしていけるのかということが重要でした」

─今回初共演となったチャン・ドンゴンさん。映画では憎み合う関係からかけがえのない存在になっていきますが、実際のオダギリさんとドンゴンさんはいかがでしたか?

オダギリ「先輩と後輩といった感じですね。ドンゴンさんは今年40歳で、年齢的にもキャリア的にも先輩なので、先輩の胸を借りるような気持ちで接していました。ドンゴンさんは僕に対して“日本から来たお客さん”といった感じで、すごく気を遣って接してくださっていましたし、芝居的にも引っ張ってくださったことも多かったと思います。とても紳士的な方ですよ」

─この作品をどんな人に観てもらいたいですか?

オダギリ「戦争映画と言うと日本人にはあまり馴染みがない種類の映画だと思うんです。僕もそうですが、“ただドンパチやって、派手なアクションシーンがあるんでしょ?”って想像しがちだと思うんですよね。でも、この作品では迫力のある戦争シーンだけでなく、それによっていかに自分のアイデンティティが覆されるのか、環境によって立場が逆転する人間関係だったり、戦争が人をいかに変えてしまうものなのかが描かれ、いろいろな見方ができる作品だと思うんです。もちろんそこにある友情や人間ドラマを描いています。戦争を知らない世代でも、いかに戦争が残酷でおろかなものなのかを含めて、いろんなことを感じてもらえればうれしいですね」

監督「心の中に憎しみを抱いている人。あとはやはり、この物語は日本と朝鮮の青年たちの姿を描いた作品なので、日韓の観客には特に観ていただきたいですね。戦争を経験した方たちはお年を召していますし、僕自身も戦争を経験した世代ではありません。このように映画を通じ、戦争を再現することで痛ましい歴史が繰り返されないようにという願いと、人間がわかり合うことへの希望を込めました。なので、若い観客にはその歴史を再び繰り返さないように、映画からなにかを感じていただきたいですね」

【取材・文=リワークス】

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