iPad専用アプリ「沖縄タイムマシーン」が観光の新しい形を提案

沖縄の古写真とGPS機能とを連動させたユニークなiPad用アプリがリリースされた。その名もズバリ、「沖縄タイムマシーン」(600円)。iPad片手に街を歩き、その土地の古写真を見ながら歴史や文化までも学ぶことができるのが特徴で、新しい観光アプリとして定着しそうだ。

このアプリは、沖縄のさまざまな事象が写された古い写真を収集、保存、活用し、運営する「NPO法人　ちゅらしまフォトミュージアム」(沖縄県那覇市)が企画。スタート時に対象となっているのは、「首里」「国際通り」「（牧志）公設市場」「那覇西町」「豊見城」「壺屋」の6エリアだ。今後は、「やんばる」「糸満」「コザ」などもエリアとして視野に入れているという。

画面は電車の車窓をイメージしていて、GPS機能と連動しているため、実際に上記のエリアのどこかに足を運び、閲覧可能となる“切符”を手に入れないと見られない、という仕組み。さらに、エリアごとに“乗り場”が設定されているため、そのエリアに足を踏み入れても、その“乗り場”まで行かないと切符を入手できないことから、“乗り場”を探す楽しみも生まれそうだ。

閲覧できる古写真は、終戦直後から1972年に沖縄が日本に復帰する前後までを中心に、なかには戦前の貴重な写真も。それぞれの写真に詳細な位置情報、撮影年が埋め込まれているため、現在のどこに当たる場所なのか、現在の風景との違いを瞬時に把握できる点が面白い。

それだけでなく、その地域にまつわる昔の新聞記事が見られる「オールドニュース」、伝説、伝承、沖縄に伝わる島唄、詩歌、昭和初期の古地図なども閲覧できるので、地域の歴史を複合的に学ぶことができる。地域の子どもたちの学習ツール、ガイドブックには掲載されていない新しい観光の形としても定着しそうだ。「NPO法人　ちゅらしまフォトミュージアム」代表の平良斗星氏は「“オールドニュース”に関してはまだサンプル段階。今後はもっとこのコンテンツを拡充していきたい」と展開を模索する。

その平良氏は、この「沖縄タイムマシーン」アプリに“沖縄の今と過去の記憶をつなぐ”というキャッチフレーズを付けている。平良氏がこだわったのは、まさにここ。先述したような“過去”の沖縄を知るだけでなく、“今(現在)”につなぐ手法として、平良氏が展開している情報サイト「那覇まちのたね通信」と連動。同サイトでは、那覇地域の暮らし、グルメ、歴史、行事、イベント、観光情報などを地元住民が投稿する仕組みになっていて、“地元住民視点”ならではの情報を入手することができるだけでなく、同じく平良氏が進める沖縄県内のイベント情報を網羅したサイト「urumax（ウルマックス）」ともつなぎ、その土地の近くで“今”行われているイベントが表示されるという具合だ。

今後は、場所情報に限定できないような古写真を利用して、「市場」「芸能」「アメリカ統治時代」などテーマ別に編集し、沖縄以外の場所でも閲覧できるアプリ「沖縄タイムカプセル」を今夏にもリリースする予定だそう。平良氏は「特に沖縄は今と昔とで風景が変わっている場所。だからこそこのアプリの面白さを体感するのに最適だと思いますが、これは沖縄だけに限ったことではなく、古いコンテンツを集めてアプリにしていくことを面白がってくれる方たちと一緒に事業展開していって、全国に広めていきたい」と野望を語る。

2012年は、1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから40年。節目の年の節目の日間近にリリースされた「沖縄タイムマシーン」アプリ。子どもたちが古い時代を知る手段として、また、おじぃ＆おばぁたちが昔を懐かしむ手段として、誰でも手軽に“時間旅行”ができるコミュニケーションアイテムとして全国に広がると、面白い動きを生みそうだ。【東京ウォーカー】