【加藤登紀子にロングインタビュー:その1】偉人7人との対談集「命を結ぶ」を発売!
関西ウォーカー
―今回発売された対談集「命を結ぶ」は、加藤さんの“ほろ酔いコンサート”でのトークショーから派生したものなんですか?
うん、最初はね「こんなに素晴らしいメンツが揃うんだったら、本もできちゃうね」っていう感じで気軽にスタートしたんだけど、やっぱり本にする以上は、相当突っ込んだ話をしたいっていうことで。ステージの上ではね、やっぱり軽い話になるんだけど、私も彼らととことん話し合った後での安心感というものを持ってからステージに上がりたいというのがあったので、だから今回、本の対談相手としてご登場いただいた方のほとんどは、コンサートの前にお会いして、この本のためのインタビューとして対談していただいて。
―作詞家のなかにし礼さんや永六輔さん、鳥越俊太郎さんなど、錚々たる面子が登場されていますね。対談の内容としては3.11に起こった東日本大震災が芯になっているようですね。
はい。内容に関しては、そんなにちゃんとした打ち合わせがあったわけじゃなくて、「いま、リアルタイムで何を話せば一番いいのか」って思ったら、自然と今回のような内容になりましたね。なかにし礼さんともいろいろ…私との因縁がある方で(笑)。デビュー曲を手掛けてくださったり、(石原)祐次郎さんの曲を書かせていただいたり、もっと遡れば、お生まれになった場所も私の故郷のハルビンと近かったりと、本当にいろいろな結びつきのある方なんですけど、これまでに雑誌で対談したことはあったかも知れないんだけど、こうして本のためにとことん語り合うっていうのは初めてだったので、すごく良かったですね。だから、コンサートでのトークショーは、この本の対談を終えた後の“打ち上げ”みたいな気持ちでしたね(笑)。
―かなり核心をついた、“生身”の会話ですよね。
鳥越さんにしても、ステージでは九州弁で喋って下さったり、本当に気さくで楽しい時間だったんですけども、本の対談のほうではジャーナリストとしての“超辛口”の彼自身の世界をお話くださって。テレビでは彼もそこまで話せないでしょうから(笑)、それも良かったなと思うところですね。永六輔さんに関してはコンサート前に骨折されちゃったのでね、それでお見舞いに伺ったら涙ボロボロこぼされて「ごめんなさい!何でもします、何でもします」って言って下さって(笑)。「ぼく何でもするから!」みたいな状態だったので(笑)。私としても、この本をまとめるにあたって永さんにはどうしてもご登場いただきたかったので、退院された2日後に改めてインタビューの機会を設けていただいて。
―そうだったんですか(笑)。永六輔さんとのご縁というのは?
60年安保の頃ですね。当時、永さんも中村八代さんも父がやっていたスタジオによくいらしていて、いま思えばそのスタジオでは数々の凄い人たちに会っていたんですけど、なにせミーハー的じゃなかったものですから(笑)、「なにか変なオッサンたちがウロついているな」くらいしか思ってなかったの(笑)。永さんも中村さんも「あ、加藤さんの娘がまたカツ丼食ってるな」くらいにしか思っていなかったんでしょうけど(笑)。だけどその縁があったお陰でシャンソンコンクールに出ることができたり、中村八代さんのツアーで全国何十カ所も連れていっていただいたりね。その時のツアーには永さんもいらしていたんですけど、彼よくからかってくるんですよね(笑)。
―笑。どうからかわれていたんですか?
「ステージの上のお喋りがヘタだ」って(笑)。「君は何も言わないで帰ってきたほうがいいよ」って言われて(笑)。それで、今から20年ほど前になるかな?たまたま永さんと何かの時に同じステージに立つことがあって、久しぶりに私のステージを見た永さんが目に涙をいっぱい溜めて「お登紀さん!喋れるようになったんだね〜!!」って(笑)。
―そこですか(笑)。
そう(笑)。それで対談の途中で永さんが、「僕はいつもいつもハラハラしてお登紀さんを見ているんだよ」って。以前、八ツ場ダムに行った時も「永さん一緒に行かない?」って誘ったんですけど、その時も「はいはい、お登紀さんが誘ってくれるならどこまでも行くよ」って言って下さって。原発の建設の予定地である祝島にも同行してくれたんですけど、一緒に軽トラに乗って山のほうまで行ったり、大変元気でね。永さんも「お登紀さんのお陰で来れて、本当に良かった」って言って、私も「ああ、喜んでもらえて良かったな」って思っていたんだけど、「何せお登紀さんは危なっかしいところにばっかりいくもんだから、僕はボディーガードのつもりで付いていってるんだよ」って言われて(笑)。永さんには言い知れず親心があるようでね(笑)。永さんと私は10歳ほどしか違わないから、次の世代とまではいかないけれど、それでもちょっとした世代の違いはあるものだから、永さんの世代から受けられるものはしっかりと受け継いでいきたいなと思っていますね。私より少し上の方たちというのは、本当に戦後の、現在の日本の出発点から見ている人たちで、本当にあらゆるたくさんのものを見て来た人たちなんですね。彼ら自身も現在「こんなことになって」という気持ちがあって、「こんなことも、あんなことも伝えたいのに」という思いがあるので、私が責任を持って次の世代に伝えるためにも、ぜひ永さんたち世代に思うぞんぶん語っていただきたかったというのもあるんです。「命を結ぶ」という本のタイトルは、アルバム「命結-ぬちゆい」から来てるんです。これからの命を守りたい。失われた過去をちゃんと未来につなげたい、というそんな意味なんです。時代が急展開して、日本人の私たちが「これからどう生きていけばいいの?」という状況の時に、永さんたち世代の存在というのは本当に大切だなと思いますね。
(その2に続く→http://news.walkerplus.com/2012/0511/35/)
【取材・文=三好千夏】
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