【加藤登紀子にロングインタビュー:その2】偉人7人との対談集「命を結ぶ」を発売!

関西ウォーカー

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(その1の続き)

―3.11の事が芯と言いましたけど、もっとさらに奥にある…人類レベルの哲学や、人としての在り方など、根本的なところまで突き詰めて考えさせられるお話ばかりでした。個人的にとても知りたかったことや、理解に苦しんでいたことに対するひとつの答えをもらえたような気がしました。

すごいなあ、いまのコメントあっちこっちに出してよ(笑)。梅原さんは3.11をきっかけに「人類としての哲学を持たなければならない」って本当に発憤されていたようでしたし、山折さんとの対談も…山折さんの著書を私は何冊も読んだんですけども、今回の対談はそれらの本の何冊分もの価値があるくらいの話をしていただけたと思いますね。

―なかにし礼さんとの対談のなかにあった「表面的でなく、もっと根源的な意味でのラブソングを歌いたい」という言葉が印象的でした。

そうですね。一過性のラブストーリー…「六本木でお茶して」とか「御堂筋でどうのこうの」みたいなのではなく(笑)、どんな状況に置かれた人のことも抱きしめることができるような、そういう意味でのラブソングが必要よねって思って。山折さんも最終的に言ってましたけど…

―「最後に歌にならないものは、全部うそっぽい」でしたね。

そう。ステージでも、まさかと思いましたけど山折さんも歌ってくださって。ステージの前に山折さんに冗談半分で「ステージでお歌いになる方もいらっしゃいますよ」って言ってみたら、山折さん真面目に受け取っちゃって(笑)。「それじゃあ私は…星影のワルツを歌わせていただきます」って(笑)。びっくりしちゃって(笑)。本当にお上手で、私たちミュージシャン連中も「あのおじさまはかっこいいね〜!」って。訥々と歌って下さって。歌手としてというよりも、それ以上に宗教学者としての自分のなかにある自問自答や苦悶している姿、責任ある気持ちが見えてきて素晴らしかったですね。

―ショックだったのが、日中戦争開始の直後に、内務省からレコード会社に通達が来たという指示項目のお話でした。「ジャズや流行歌を健全化すること」「悲しげで軟弱な曲調は避けること」など、ちょっと愕然としてしまうような内容でしたね。

驚いたでしょ(笑)?だけど今も同じようなことを言ってるんですよね、レコード会社は作り手に。「暗い歌はやめてください」とか「人の心を不健康にするような曲はだめだ」とか。いまは特に震災のあとですから、余計に“暗いことを言わない”という空気がありますよね。「退廃的な歌はうたうな」って、それじゃあの頃とまったく同じじゃないかと思いますよ。

―歌という、自然に湧き出て自然に受け入れられるはずのものが、まるで全体思想の操作の手段のようになっていて。

うん、そうよね。本の中からは外したんですけど、永さんが「“上を向いて歩こう”は励ましソングじゃない」って言ってらしたんですけど、永さんは安保闘争やった人なので、当時は悔しい思いをいっぱいしていらっしゃって、“悔しくて悔しくて涙が出てきてどうしようもないよ。だから涙がこぼれないように上を向いてあるこう”というのがあの時の“上を向いて歩こう”で、だから「いま、震災のあとに「励まし」という気持ちだけで”上を向いて歩こう”を歌われると、僕はゾッとするんだ」と言っていましたね。この話は本に入れようかどうしようかと思っていたんですけどね(笑)。励ましの気持ちで“上を向いて歩こう”を歌っていらっしゃる方を否定することになるのかな?とか、いろいろ考えてしまって。だけど永さんのこのお話は、個人的にはすっごく印象に残っていますね。永さんはね、本当に過激な方だから(笑)、もったいないなあって思いながらも、内容があまりにも過激すぎて割愛させていただいたお話がたくさんあるの(笑)。なので、永さんとの対談はまた続編を…(笑)。

―楽しみです(笑)。加藤さんがいまお考えになる「本物」のラブソングとはいったいどういうものなんでしょうか?

なかにし礼さんとのお話のなかにもあったんだけれど、コンサートなんかでいつも思っているのは、例えば1000人お客さんがいたとして、そこにいる1000人という人たちが一体どういう人なのかっていうところまではわからないじゃない?そのなかには、家族を無くした経験をされている人だったり、明日手術なのに病院の許可をもらっていらしてくれていたり…それぞれいろいろな心境と状況を抱えていらっしゃる人がいて、そういう人たちが抱えている「一番つらい気持ち」という部分に手を差し伸べられる、手が届く歌を歌いたいんです。それが相手に届いた時に初めて、歌が「励まし」になるんだと思っているんです。だから…何ていうのかな、誰かが元気になるために歌があるんだったら、「元気になって」「元気になりましょう」っていうコマーシャルソングのようなかけ声だけでは、本当の意味の励ましにはならないと思う。永さんやなかにし礼さんたちは世の中の裏も表もわかっている人だから、そのあたりはとっても強(したた)かですよね(笑)。その言動で人の心を鷲掴みにする、もの凄い人たちだなと思いますね(笑)。

歌は人をマインドコントロールする力もある、そういうものだということを理解して、そのうえで、人の心に届く歌をどうやって生み出すのかというところが大切だと思います。

(その3に続く→http://news.walkerplus.com/2012/0511/34/)

【取材・文=三好千夏】

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