吉永小百合＆満島ひかりが映画『北のカナリアたち』撮影秘話を語る

映画『北のカナリアたち』(11月3日公開）の合同記者会見が、9月14日、沖縄県那覇市のかりゆしアーバンリゾート・ナハで行われ、主演の吉永小百合、共演で沖縄県出身の満島ひかりが登壇した。

本作は、監督に『大鹿村騒動記』の阪本順治、撮影に『劔岳　点の記』の木村大作、主演が吉永小百合という豪華組み合わせで描くヒューマンドラマ。ある事故によって北海道の小さな島の分校を追われた元小学校教師の女性が、教え子が起こした事件をきっかけに20年ぶりに島に戻り、かつての教え子たち6人と再会。心に閉じ込めていた思いを打ち明け合うというストーリーで、20年後の生徒役として、満島ひかりをはじめ森山未來ら若手俳優たちが名を連ねている。

今回の役どころについて聞かれた吉永は「最初に20年後のシーンから始まったので、私の中で20年間を作ってから撮影に入らなければいけなかったのが大変でした。でも、ひかりさんをはじめとして6人の方たちが見事に子供の頃のことを心に秘めながら演じてくださって、私の方が教えられることがたくさんありました」と話した。

今回の作品への出演について満島は、「吉永さんがいたからということだけで決めました。こんな大先輩と共演できる機会を逃してはいけない。同世代の6人とも『この仕事は絶対断ってはいけないよね』と話したんです」とコメント。撮影時の印象に残っていることにも触れ、「現場の雰囲気全体が興奮状態だった時に、吉永さんが振り向かないと始まらないシーンの撮影があったのですが、監督のスタートがかかったのに振り向かなかったんです。ほんの数秒だったかも知れませんが、5分くらいに感じられました。現場がおだやかになる状態を待って、ふっと振り向いた時の吉永さんの表情を忘れることができません。あの表情が見られたことを宝にして生きていきたいと思っています。映画にもちゃんと映っていると思いますよ」と述べた。

作品には印象的な歌のシーンが多く登場するようで、そのことについて吉永は「子供たちと一緒に『あの青い空のように』という歌を歌いました。とてもすがすがしい歌で、今生きている人たちへの励ましの歌になっていると思います。子供たちとの歌のシーンもとても素敵ですが、大人になった6人が歌う場面があり、私が指揮をするんですが、その6人がまっすぐに私の方を見てくださって胸がキューンとしました。50年以上映画の仕事をしていますが、あんな感情は初めてでしたし、それだけみんなの思いが伝わってきたんです。こんな経験をすることはもうないと思います。歌がこの映画をつないでいる、そんな風に思います」と真剣な表情で振り返った。

自身の出演シーンで印象に残っていることを尋ねられた満島は、「現場で、監督が台本にない『ちっぽけですね、私たち』という台詞を追加したんです。その言葉はとても印象に残っています」と撮影時を振り返り、「現場で久しぶりに上手くいかないという経験をたくさんし、とても勉強になりました。はみ出すことばかり考えてしまい、画面の中でしっかり芝居をしてくださいという要望に、どう対応していいかわからずにもがいたりもしました。でも撮影が終わった今、吉永小百合さんという大先輩と共演できたこと、阪本順治監督や木村大作さん、日本映画の先輩たちと一緒に仕事ができて幸福だったなと思っています」と 貴重な経験となった今回の出演について語った。

映画の見どころを聞かれた吉永は、「制作発表ではサスペンスとして紹介されましたが、それだけにとどまらず、8カ月間映画を撮っていくうちに、人と人との心のふれあいや優しさ、そういうものが全面的に出てきた気がします。出演した皆さんもそうだし、阪本順治監督の優しさが画面に出ていると思います。 それともう1つの魅力は木村大作さんのカメラ。『厳しくなければ美しくない』という思想を持っている方です。その方が、北海道の自然を思いきり撮っています。優しさと厳しさ、二面性のある映画だと思います。厳しい寒さの中でこんな風に生きた人がいるということを観て頂きたい。この映画が皆さんの心に少しでも温かいものを残すことが出来たらと思っています」と話した。

最後に吉永は「今回映画を撮り終えて、もっともっと勉強することがあると思いました。そう思えるということはまだ可能性があるのかしらという気もしています。私にとってかけがえのない忘れられない作品になりました。たくさんの方に観て頂きたい」と、作品や自らの俳優人生への思いを静かに語り、会場を後にした。【東京ウォーカー】