【その2】恒例の「ほろ酔いコンサート」がことしも! 新譜もリリースした加藤登紀子にロングインタビュー

関西ウォーカー

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

_そういうきっかけってあるんですね。今は、先におっしゃったように伝達の時間も短縮された代わりに、消滅のスピードも早いですよね。時間をかけて届けたり、しっかりと残るものって非常に少ないですよね。

そうよね。例えば「百万本のバラ」は最初、映画のテーマソングにもなった曲のレコードのB面に入っていたものだったんです。その頃は映画のテーマソングとかコマーシャルソングに起用された曲が続いたんですけれども…どういうわけか私の場合、そうやって大々的に使用されたものは「あっそ」って感じで、そんなにインパクトにならなくてね(笑)。それから暫く経ってから、A面の陰に隠れるように入れてもらった「百万本のバラ」のほうが好きだと言ってくれる方がたくさん現れるようになってきて。まだレコーディングもやっていない、弾き語りで歌っていた頃にも、行く先々でバラの花束が届くようになったり。楽屋に届くんですけど、送り主が誰かわからないんですよね。

_ロマンチックですね〜!

ねえ。それで85年の「ほろ酔いコンサート」で「百万本のバラ」を初めて歌って。それから86年にB面に入れてもらって、それから87年にA面になってリリースされたんです。

_そうだったんですね!「百万本のバラ」は、登紀子さんの代表曲のひとつでもありますから、そんな紆余曲折があったなんて意外ですね。

そういうのが、わりと多いのね、私は(笑)。

_3.11が起こって間もなくは、その事をテーマに掲げた曲というのがたくさん出て来ていましたが、それもニュースや人の関心と同じように、どんどん離れていってしまっているような気がするんですが、ニューアルバムの「登紀子 旅情歌 -風歌 KAZEUTA」は、あの震災に留まってはいないけれど、ちゃんと繋がっていると感じました。そこから放たれたものも作れたかも知れないんですけれど。

でもそれはそれで喜ぶ人いるわよ(笑)。「ああ、やっと離れてくれたか」って(笑)。

_あはは(笑)!

それは絶対にいると思います(笑)。だけど私は、月日を経ていくなかでの変化を見ていたいし、そのなかでやっと見えてくるもの、伝わってくるものがあると思うんです。だから、これからなんですよね。これだけの悲しみを経験したわけだから、ひとりづつに秘められた思いがあると思います。誰かを亡くしたり、目の前で人が死ぬところを見てしまったり。そういう感情を吐き出すための場所やきっかけが、あらゆる形で存在していると思うんですが、それで少しずつ傷が癒えて、また言葉や歌、物語となって進んでいくという時期にやっと入っていったんじゃないでしょうか。だから私のなかでも今回のアルバムの中でこういういろんな月日がまとめられたかなって思いますね。

_「ふるさと」がテーマのひとつであるそうですが。

やっぱり自分の生きる力をもうちょっと強くしたい、となった時に、自分がどういうふうに生きてきたのか、ということを見つめることが大事だと思うんです。自分自身についてもそうですけど、自分の周りで支えてくれている存在や、好きだった場所や物、自分と関わってきたすべてのものと向き合って。自分を育ててくれた土を育てながら、次の命を育てていく力をつけるというか。

_ルーツですね。

そうですね。「風歌」は、土の下からエネルギーをもらうような、空の向こうからエネルギーをもらうような、そういう歌なんです。ちなみに私はこの歌に、東北の民謡のテイストを入れたいな、と思っていたんですけれども、聴く人が聴くとこの歌は南米のフォルクローレのようだ、とかアイヌの音楽に通じるものがありますね、とか言われるんですよね。それで今回「ほろ酔いコンサート」の沖縄公演で、エイサーを交えてやろう!ということになってね(笑)。でもエイサーって、必ず振り付けをつけなきゃいけないじゃない?

_登紀子さんももちろん…(笑)。

あはは。私は歌うから踊らなくてもいいのよね(笑)。でも初めての試みですから、どういうふうになるのかとっても楽しみなんですよ。

_そういう、民族的な雰囲気とか、いわゆる土着感のあるものに惹かれますか?

土の匂いというか、なんていうのかな?自分が立った場所の風景に見る懐かしさというか、ここにしかないものと、どこにでもある安心感のような。私はたくさんの音楽を通してそれを感じてきて、そうやって自分のなかに入ってきたものすべてによって、自分自身という「織物」になっているんだなって思いますね。どこかの音楽のようでもあり、かと言ってどこのものでもないっていうのが「風歌」の中にある世界なのかなって思います。

※【その3】に続く

【取材・文=三好千夏】

この記事の画像一覧(全1枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

花火特集

花火特集2025

全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

CHECK!全国の花火大会ランキング

CHECK!2025年全国で開催予定の花火大会

おでかけ特集

今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け

アウトドア特集

アウトドア特集

キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介

ページ上部へ戻る