「舞台上で生きることが一番の快感です」。舞台「マクベス」で構成・演出・出演する野村萬斎にインタビュー!

関西ウォーカー

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映画「のぼうの城」の主演が記憶に新しい狂言師・野村萬斎が、シェイクスピア四大悲劇のひとつ「マクベス」に挑戦、構成・演出・出演を手掛ける。2010年に東京で初演し、3年ぶりに新演出での再演、大阪へは今回が初登場だ。その後ソウル、ニューヨークへの海外公演も決定した。出演者はわずか5人という「マクベス」。一体どんな舞台になるのか?

取材当日は左足指を骨折しながら狂言の舞台を務めた後、移動に松葉杖をついて撮影・取材に応じてくれた。萬斎さん、感謝です。

Q:5人の出演者で「マクベス」ですか?

「『マクベス』には、よくわからない人がたくさん出て来るでしょ。しかもマルコム、マクダフ、マクベスって、名前も非常にややこしいし(笑)。わずらわしい上に、一人ひとりがキャラ立ちしていない。『マクベス』は、魔女という存在の運命の宣告と、マクベス夫妻がおもしろいんであって、ダンカン王がどんな人であろうとあんまり関係ない。ボクのように能狂言から来た人間からすれば、シンプルにしたいという思いがあったんです。絞り込んだら1時間半の上演時間になりました。テンポ上がると、もう少し短くなるかもしれない。いいと思いませんか? 途中でダラダラ諸侯たちがしゃべってるのを聞かなくても(笑)。マクベス夫人だって、忘れた頃に急に狂って出て来るでしょ。途中の間が長すぎる。あれ何?って、いつも思っていて、縮めるとかえってわかりやすくなったと思います。短かすぎる?(笑)。8日はアフタートークが付きますよ(笑)」

Q:ポイントは魔女、ですか?

「そう。ボクが狂言師としてアイデンティティを一番感じるのが魔女。マクベス役より、ほんとは魔女のリーダーをやりたかったぐらい。魔女は、もともとは薬を作ったり、非常に自然科学にたけた人というのが定義らしいんですよ。で、ボクの中では、魔女というものが自然の代表で、自然のサイクル、生命のサイクルを守っている番人だという方式が浮かんできたんです。だから人間を俯瞰して見ることのできる存在という意味で、魔女を森羅万象に例えたいと。そこが他の人と圧倒的に違うところですね」

Q:森羅万象の代表って、神様みたい?

「神に近いんじゃないかと。運命を提示するって、一種、神の役割でしょ。それを魔女に持たせている。なぜか? 昔は神に人生を捧げるような生き方をしていた人間が、だんだん賢くなって、神が怖くなくなってきた。シェイクスピアは、おごり始めた人間にひとつの啓示を出したい、という思いがマクベスの根底にもあるんじゃないかとボクは見ています。おごってきた人間(の象徴であるマクベス)の前に、魔女という存在が立ち現れる。その存在感。常にマクベスを見ている、審判するために見張っている。その俯瞰の目でマクベスの人生を見ていくので、お客さんにはマクベスと魔女と、両方の目線を見せたいなって思う。それは、能狂言の出身者だから成せる技だと思っています」

Q:魔女目線?

「ちょっと言ったら2人でその気になって、あ~あ殺しちゃった。こいつらバカじゃない?って、そういう目線(笑)。欲望のままにやっちゃうっていうのは、人間らしくもあり、ちょっと喜劇的でもあるわけで。だから魔女に沿って見ていると、けっこうみんな笑うんですよ。8人の王様の幻影に悩まされるシーンとか、徹底的にバカしてますからね、ボク(笑)。マクベス夫妻はボクと秋山菜津子さん、それ以外の登場人物は全部、魔女役の3人の男優がやります。相手役もして、セットも動かす。魔女に人間という世界観を取り巻く森羅万象すべてを象徴させるので、演劇的にも舞台という宇宙を構成するのも魔女3人がやります。魔女3人のアンサンブルがとてもいいんですよ。彼らは寺山修司が主宰した劇団、“天井桟敷(てんじょうさじき)”の出身者。初演の時、その相性の良さに驚いた人はたくさんいましたね。え? なんで能狂言の人と天井桟敷がって」

Q:では今回の舞台セットは?

「能狂言の手法を使って、三間四方の空間がまさしく宇宙になる、というやり方をするので、非常にシンプルです。海外に持って行くので、舞台装置も身軽にしなきゃいけないし、ジャポニズムというよりも、私がジャパンだ、という感じで行くつもりです。能狂言が軸になっている、自分のアイデンティティを証明したいという思いが必ずありますから」

Q:今回の『マクベス』から伝えたいことは?

「人間が生きて行くということは、どういう意味か。それを改めて考えていただきたいなと思います。人間は、どんなにおごり高ぶっても、自然の一部、自然のサイクルの中にいる。人生とは生きること。それが、非常に血なまぐさくもあり、詩的に書かれたものです。人間の生きてる限りのドラマが凝縮された、人生を考える演目かな、という気がしますね。余白をたくさん作るので、みなさんいろいろイメージしながら観てほしい。そういう舞台なので、ちょっと不親切です(笑)。でも、シェイクスピアが大変わかりやすくなって、しかも短かい中に4時間分ぐらい入っています。この作品を観て、おもしろいと思えたら、能狂言観ても楽しいですよ(笑)」

【取材・文=ドルフィン・コミュニケーション】

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