【その3】3/31(日)まで東京・森美術館で開催中!「会田誠展:天才でごめんなさい」が話題の会田氏にロングインタビュー!
関西ウォーカー
【その2】の続き
_「天才でごめんなさい」というタイトルはどこから?
会田「ええ、まあ…『そろそろ展覧会のタイトルを決めてくれ』という催促がありまして(笑) 。そのころ僕はリトアニアに居て、夜にパブみたいなところに行ってグダグダとビールを飲みながら、もう『天才でごめんなさい』とか、そんなんでいいんじゃない?みたいな(笑)。」
_もちろん酔っぱらっていらっしゃったんでしょうね(笑)。
会田「ええ(笑)。ホロ酔いでしたけれども。どうせ断られるだろうけど、とりあえずのタタキ台としてそれを渡してみたんですよ。むしろダメ出しの言葉を待っていたようなところがあったんですけれども『あ、いいですねえ』みたいに言われちゃって(笑)。『えっー』って感じで。やっぱり、これは素直じゃないタイプの僕の言葉の使い方で。“天才”って言葉は10代の頃は僕自身の心の中でも使っていたんですが、47歳になると…自分を指す言葉としても、他人を指す言葉としてももう適当では無い、ある意味、僕にとっての『死語』になっていて。天才という言葉からはもの凄い距離感があるということが前提で、こういうタイトルをつけました。でも、自分のこういう真意みたいなものは、なかなか人には伝わらず(笑)。ツイッター上では『こんな奴のどこが天才だよ』というような意見ももちろんあるんですが、一部の心優しいお客さんなんかは、『会田誠展行ってきた!天才だった!』なんていうのもありまして、素直に受け取られるのもなんか違う!みたいにも思います(笑)。」
_そういう自分や作品に対する批評というのはどう受け取ってらっしゃるんですか?
会田「う〜ん…まあ実は…自分について書かれた記事をちゃんと読まないこともあるんです(笑)。」
_笑。批評家もそうですが、現代芸術とか、そこに身を置いている人間がお嫌いなんですか?(笑)。
会田「う〜ん、さきほどもちょっと言いましたけれども、確かにそれもあるんですけど。でも僕も、評論家の見解というか、そういうものをわかっているところもあるんですよ。それがあってこそのファインアートという…え〜、難しいな。例えば現代芸術の世界的な評論家というと、小林秀雄が好きで。モーツアルトについて専門的に研究されている人なんですが、彼はすごい独断と偏見で書いているし、評論としては『ちょっとそれはどうなんだ』という言われ方をしてもいるんですけれど、僕は評論なんてそんなんでいいんじゃないかと思うんです。モーツアルトについて正しい事実が書かれているというより、小林秀雄っていう変わった人が泣きながら書いたポエムみたいな、論文や評論文なんかじゃなく『モーツアルト』という文芸作品で読めば、それはそれで感動できる。だから僕としては、僕についての記事というより、僕はただの題材にされているだけで…。その方の文芸作品として書いていただければいいかと思いますね。画家が絵の具を使うように。『僕を使えるなら、どうぞお使い下さい』って感じで。だから僕の記事を書くという時には、別に本人呼ばれなくてもいいって思っていて(笑)。」
_ハハハ!いや、困ります。ご自身のアーティストイメージといいますか、自分として保持したい部分というものも無いんですか?
会田「あるのかも知れませんけれども…確固たるものとしてはないですかねえ。僕はもしかすると他の作家に比べて、画集などに作品の解説なんかを書きがちで。最低限補足したいことぐらいは機会があればやるので、それぐらいで充分で。そこにある短い文以上に書かなかった部分については、どうぞ適当に解釈してくださいっていう感じですかね。」
_素性を明かさないでおけばよかったともおっしゃってましたね。「なんでデーモン小暮さんみたいにやらなかったんだろう」って(笑)。
会田「ペンネームがあっただけでもまたちょっと違ったんだろうなあ、とかは思いますけどね(笑)。ペンネームの作家さんや表現者さんなんかは、やっぱり心のどこかで隠れ場みたいなものがあるというか。例えば『三島由紀夫』という名前で作家やってるけど、平岡公威(きみたけ)って名前では、もしかすると自分の中ではわけて考えていたのかも知れませんしね。わからないですけど(笑)。」
_以前インタビューさせていただいたのが、大阪・国立国際美術館での「滝の絵」公開加筆の時だったんですが、あのシチュエーションで作家本人の制作活動が見られるなんてすごいことだ!と思っていたんです。でも会田先生の心境はまったく違ってたみたいですね。最後に筆を置いた瞬間に観衆から沸き起こった拍手に対して「君たち、間違ってるよ!」って思ったり(笑)。
会田「そんなもんですよ(笑)。とにかくやらずに済むならやりたくなかったんですけれども…パフォーマンス込みでのあのシチュエーションなんだったら、それはそれでまた考えますけれども、ええ…あれはただただ苦痛なだけでしたけどね(笑)。」
※【その4=最後】に続く
【取材・文=三好千夏】
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