【その2】『ピンクとグレー』で小説家デビューを果たしたNEWS・加藤シゲアキ。第2弾となる小説『閃光スクランブル』(発売中)について直撃した!
関西ウォーカー
※【その1】の続き
_芸能界という、華やかであるはずの世界が一番暗く、その裏側にある一般世間のほうが凄まじいという逆転現象がごく淡々と描かれているので、こういうことが書けるっていうのが凄いなと思って。なぜそう思ったかと言うと、やっぱりご自身がその世界にいらっしゃるからなんですよね。「私小説なのでは?」と読み手に思わせるだけのリアリティがありすぎるっていう。
加藤「ステージの上とか、例えばテレビに出ている時とか、いわゆる華やかな瞬間は、当たり前ですけど華やかなんですよね。だけど一個人としては、その華やかな壇上から降りた時にいろいろ思うことや感じることもありますし。多くの人から見られる立場であるということの責任もリスクも当然あるわけなんですけど、小説の世界に自分がいる場所を使っているのは、単純に舞台装置として面白いからなんですよね。自分自身のある程度の経験から、さっきおっしゃってくださったリアリティっていうものが色濃く描けているんじゃないでしょうか。」
_虚無感とか諦め、人間の後ろ暗さというものがズッシリと沈殿しているこの小説を書いているのが、人気アイドルであるというのは、ある意味アナーキーですね。
加藤「いや、もうね、たぶん薄々、気付かれちゃってるんじゃないかなって思いますけどね(笑)。こういう小説を2冊も出したら“あいつちょっと暗いよね”とか(笑)。」
_ハハハ!確かに前作と今作を読んだ方は、今度NEWSとしての加藤さんをテレビで見た時には「こんなに爽やかに笑っているけど実は…」みたいに見ると思いますよ(笑)。
加藤「ほらね!(笑)。でも、そんなことないんですよ! 僕好きなんですよ、芸能界の仕事。今作のストーリーでも、なんだかんだありながらも、やっぱり芸能界という世界に戻っていくんですけど、好きなんですよね。好きなぶんだけ、しんどい時はよりしんどいですし。人によっては芸能界という場所と完全に水が合う人もいるんでしょうけど、僕は最初からそうだったわけじゃないので。でも小説を書くという行動の軸にあるものは、本当に単純に、映画だったり音楽だったり書くことだったり、僕の好きなものから派生して今があるということなんじゃないかな、と思いますね。」
_アイドルとしてありながら、こういう執筆の場もあるというのはすごく羨ましいですね。片方では表現できない世界を、もう片方でやることができるっていうか。吐露だったり挑戦だったり新しいアイデアだったり、あらゆることを自分のやりたいやり方で。
加藤「そうですね。もう“おもしろいことやりたい!”って気持ちが一番上にあるので、自分の経験とかいる場所で使えるものがあれば使うという感じですね。本を読んでくれた人から『これ書いたの、本当にシゲ!?』ってよく言われるんですけど、そう言われるたびに『まんまと俺の策略に…』ってほくそ笑んでます(笑)。」
_『書く』という行為が始まったことでなにかご自身に影響はありましたか?
加藤「小説を書くようになってから、芸能界の仕事がより楽しくなってきたところはありますね。何でなんだろう? 例えば、前だったら気分が落ち込んでいる時にカメラの前で『笑って!』とか言われたら、結構、精神的にキツいなって思ってしまうこともあったんですけど、今は『これはこれで楽しい』って思えるようになってきました。アイドルのほうはプレイヤー、小説のほうはクリエイターっていう、すみ分けが自分のなかで出来始めたのかも知れない。『作られる側』と『作る側』の両方に存在できているっていうのは…うん、いいですね。すごい楽しいっす。」
_総体的に、エンタテインメント向きなのかもしれないですね。
加藤「かもしれない。小説にしろテレビの世界にしろ、その人の個性とか、最初に言ってくださった自分だけの『アク』のようなものがどれだけ出せるかってことなんじゃないかな?って思います。」
_確かに。あと、全然話が変わりますけど、本の装丁、2作品とも可愛くて綺麗ですね。
加藤「やっぱり買ってくださる方は女性が多いので、女性が手にとりやすいデザインがいいなと。」
_『あ、可愛い〜』と思ってページ開いたら、可愛いウサギに手をガッブー噛まれる感じですよね(笑)…
加藤「ハハハハ!でもね、僕はいつも頭のどこかで『綺麗に書こう』って意識があるんですよ。今回もそれだけは崩さずにきたっていうか。美しいシーンはとかく美しく。やってることはおかしいけど、文章や表現によってはすごく美しく在ることが出来るっていうのが好きですね。」
_確かに、不思議な品格がありますよね…この小説には。音楽にも大きな影響を受けているみたいですよね?
加藤「今回はまず、シチュエーションに『渋谷』っていう場所があったので、そこに直結するというか、すんなりと連想できる雰囲気を持った音楽っていうことでピチカート・ファイヴさんを使わせていただいたりしました。」
_ストーリー全体やシーンのBGM的な感じですね。ニルヴァーナも似合いそうですけど(笑)。
加藤「ニルヴァーナ!そういう雰囲気もいいですね!ネヴァーマインド(※ニルヴァーナのアルバムタイトル)な感じで(笑)。」
_次の作品を早くも期待してしまいますけれど…(笑)。
加藤「ね〜…どうしよう(笑)。前作の『ピンクとグレー』は、あれこそ僕のやりたいこと、僕のエゴを全面に出した作品でしたし(笑)、『閃光スクランブル』はそこからもっとエンタテインメントとして広げてみて、それをどこまで広げられるかって挑戦でもあったんです。次回はまたエゴを出した作品になるのか、逆にもっとエンタテインメント性を広げた作品になるのか、まだちょっとわからないですね。でもこれまで2作書いて、自分でも『自分はこういう書き方をするんだ』って見えてきた部分もあるので。それじゃあ、逆にどんなのを書いてほしいですか?」
_何でしょう?…加藤シゲアキ流のSFとかどうでしょう?
加藤「SFですか!…僕に書けるかな、そっちの世界(笑)。」
【取材・文/三好千夏】
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