【その1】現在全国をキャラバン中の「LIVE福島」。活動の中心となる箭内道彦氏に直撃した!

関西ウォーカー

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「月刊 風とロック」発行人、バンド「猪苗代湖ズ」のギタリストなど、さまざまな顔で知られる箭内道彦。地元・福島をはじめ、東北に大打撃を与えた東日本大震災、それをうけて広がった活動内容、そして現在も全国をキャラバン中の「LIVE福島」について伺った。

_LIVE福島のドキュメンタリー映画「あの日~福島は生きている~」を観させて頂いたのですが、どういった経緯でこの映画が作られることになったんですか?

箭内:まず2011年の9月に、福島で6日間のロックフェスをやったんです。それがLIVE福島。LIVE福島の「LIVE」には、音楽のコンサートだけじゃなく、「生きている」という意も込めました。福島県の西から東まで、一日ごとに違う会場を移動して。それってコンサートを制作する人とかミュージシャンの立場からすると「到底無理だよ」って言われて止められるようなことだったんですよね。毎日設営して壊して、設営して壊してっていうのもそうだし、出演者の体力的な部分でも相当キツいスケジュールです。その時は震災からまだ半年しか経っていなかったこともあって、世の中の空気的にも「音楽なんかに何ができるんだ」とか「放射線は大丈夫なのか」という感じで。そんなことを色々と言われてる中で、様々な検証と調査、試行錯誤を重ねて行いました。YouTube Liveという形で全世界に無料生配信をしたんですけど、そこで中継カメラマンにお願いしたのは「ライブ以上にそこに来ている福島のお客さんの姿や表情をたくさん映してほしい」ということだったんです。福島は生きている。それを世界に発信したいんだと。そしたらのべ190万の人が見てくれたわけなんですけど、6日間を終えた後すぐに「190万じゃ足りないな」って思って。もっと沢山の人に見てもらわなければと思いました。それで是枝監督に連絡して「このライブを映画にしてほしいんです」って、めちゃくちゃ、ぶしつけなお願いをして。是枝さんは僕からのお願いは絶対に断らないと決めていると前から公言してくれていて、そのことを僕自身も知っていたので(笑)、かなり忙しいタイミングだったにも関わらず快く協力してくれました。ほんとだったらまず先に、ライブを観に来てもらわないといけないんだけど、是枝さんは「ライブが終わった後から作り始める映画」というものにすごい興味を持ってくれて。ライブに来てくれたお客さんの中から、撮影とインタビューに答えてくれる人を募集して「ライブに集まってくれた人のその後を映画にします」という企画に

なったんです。

_あれはみなさん、募集だったんですね。

箭内:そう。それで映画ができあがると、次は配給をどうしよう?ということになって。最初はね「福島県民全員でレッドカーペットを歩いたら強いメッセージになる」って思ったんです。だから国際的な映画賞を絶対獲らなきゃならないんだと。もうとにかく、本当に何もわかってないから、僕(笑)。まあそんなふうにスタートしたんですけど、まずはちゃんと自分から手にとって、しっかりと受け止めてくれる人から届けていった方がいいんじゃないかなと思って。例えば映画館で大々的に上映したとして、最後の一週間はガラガラでしたって終わっちゃうよりは、もっとじっくり確実に伝えていった方がいいんじゃないかなって。それで自主配給というかたちで、「LIVE福島 CARAVAN日本」でも、上映することにしたんです。

_私は、実家がある香川のローソンで購入(※全国ローソンでの販売は2/21で終了。現在は「LIVE福島」会場のブースのみ購入可能)したんですよ。東北ライブハウス大作戦の西片さんに「ローソンのエロ本あたりのとこに置いてあるよ」と教えてもらったので(笑)。

箭内:おお、香川にもちゃんとありましたか(笑)。全国のローソンで買えるようにしたのは、沢山の人が手軽にこの映画に触れてくれるチャンスを作りたいって思ったんです。1000円という値段と、コンビニっていう日本中どこにでもある場所に置いてあるということも、この映画には似合うんじゃないかなと思って。

_冒頭の朝ご飯の風景だったり、何気ない「生活風景」を追っていくというのが、何て言うか…あれほどの出来事が起こったにも関わらず、あんなふうにまた淡々と暮らしが営まれていくっていうのがすごく現実的で。あの震災とそれを取り巻く環境全部が、テレビの中じゃなく、自分の足下にまで近づいてきたような気がしました。うまく言えないんですけど。

箭内:うん。その感じ方も正解だし、また違う感じ方をされる方がいても、それもまた正解なんですよね。たった一つの解釈とか答えというのは用意してないと思うので。だけど「誰にでも訪れることかもしれない」という部分は伝えたかったのかも知れない。今回のような災害は、東北だけに起こることではなく、誰もが当事者になる可能性があるという。そういうことを、冒頭の淡々とした日常の風景が際立たせてくれるのかも知れないですね。

_私はメディアを介してしか震災の実状を知ることが出来ていないのですが、そのメディアで震災に関する事を取り上げる頻度っていうのも薄くなっていますよね。

箭内:そうですね。でもメディアの人たちもね、たぶん悩んでいるんだと思うんですよ。例えば一日にニュースを20個しか流せないとしたら、じゃあ21個目は何だったんだろうって。時間の制限だったりで、苦しみながら切り捨てているところはきっとあって。僕が思うのは、福島に200万人の人間がいたとしたら、その200万人みんなに話を聞かないと福島の実状はわからないんですよ。5人くらいの現地の人に話を聞いて「いま福島はこうなっています」という具合に伝えると、まるでそれが全体のすべてのように思えてくるじゃないですか。ツイッターとかでもそうなんですけど、現地に行って「福島の現状はこうでした」って、一部分や数人だけを見て帰ってくるというような。何万人と人がいたら、当然だけどみんなが違う状況にいて、みんなが違う心境でいて。そのことはすごく僕の中にも大きくあって。だからあのドキュメンタリー映画では、あの人たちだけが福島のすべてではないというように作ってあります。あくまでも一部として「こんな人たちもいます」ということなんです。

※【その2】に続く

【取材・文=三好千夏】

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