新進女性監督がフランス映画界の現状を語る「女性がおかれている状況を私自身で発信したかった」
関西ウォーカー
2000年以降の10年間で、20人以上の女性監督がデビューしているフランス映画界。いままでの“女性映画”の枠を大きく超えた個性的かつリアルな作品が、女性クリエイター自身の手で制作され、発表されている。現在関西の映画館で、フランスの女性監督の作品を集めた特集上映「フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ」が開催中だ。この度、今回の特集で上映される初の長編映画「ベルヴィル・トーキョー」を手がけたエリーズ・ジラール監督が来阪。女性クリエイターの活躍が目覚しいフランス映画界の状況から、監督自身の実体験がベースとなった本作の見どころなどを聴いた。
―フランス映画界ではここ10年で20名の女性監督がデビューされたそうですが、フランス映画界には女性が活躍しやすい土壌があるのでしょうか。
エリーズ・ジラール監督(以下、エ):まずフランス映画界には、女性監督の伝統があります。1950年代にデビューしたアニエス・ヴァルダ監督の活躍にはじまり、現在フランス国内で精力的に活動する50代の女性監督が何名もいらっしゃいます。その次に来るのが70年代生まれの私たちの世代なので、女性監督の数は、前の世代よりも増えています。そこには様々な要因がありますが、その一つが68年に勃発した五月革命ですね。この事件を機にフランス社会の中でフェミニズムなどの価値観が、まるで大波のように巻き起こりました。その流れの中で、様々なクリエイターが“自由な女性”について映画にしたり、言葉にしてきました。しかし女性の中からは“果たしてそれらの作品は、私たちの状況をちゃんと反映しているのだろうか”という疑問があったことも事実です。そこで私たちは自分たちの感じていること、女性がおかれている本当の状況について、自分たち自身で発信したいという欲求を持つにいたったんです。そして私の場合は、「メルヴィル・トーキョー」という長編映画を作ることで、その思いが実ったということです。
―本作では妊娠の時期をパートナー不在のまま過ごして情緒不安定に陥ってしまう女性と、父親になることを受け入れられない男とのすれ違いが描かれています。本作で描かれるエピソードは監督自身の体験がベースになっていると伺いましたが。
エ:私自身の体験をそのまま映画にしたわけではないのですが似たような状況で、似たような経験はしています。今回の映画は、一組のカップルが直面する子供の誕生を待つ喜びと、悲劇的な別れを中心にした、登場人物の悲喜交々が交錯している作品です。ところが、女性が妊娠しているときに、相手の男性が去っていくという出来事を描くということはフランスの社会でも、タブー視されているテーマなんですね。今回の映画を制作している際に、私は人から「恥ずかしくない?」と言われることが度々ありました。妊娠しているときに、相手の男性が去っていくという私自身の経験はとても不幸で哀しかったですが、それを恥じたことはなかったです。
―劇中に登場するカップルは実生活でもカップルだったそうですが、二人をキャスティングした監督の意図を教えてください。
エ:主役の2人と私が知り合った時は、2人ともまだ無名の存在でした。のちに俳優として知名度を上げていきます。ヒロインのマリーを演じたヴァレリー・ドンゼッリは、映画監督としても長編を2本作っています。そのうちの1本「私たちの宣戦布告」は日本でも劇場公開され高い評価を得ました。このカップルは“架空のカップル”と言ってもいいくらい、お互いを必要としていながらも別れたりくっついたりを繰り返していました。撮影中は、ちょうど彼らの2人目の子供が生まれる直前という状況でした。2人とも、この映画をとても気に入ってくれて、撮影に100%の情熱を注いでくれました。この映画にとっては、すごく効果的なカップルの起用だったと思っています。
【取材・文=関西ウォーカー編集部・鈴木大志】
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