【その2】“女優・前田敦子”の魅力とは? 映画「もらとりあむタマ子」の山下監督にインタビュー
関西ウォーカー
※【その1】の続き
─映画「苦役列車」の時にも前田敦子さんと一緒にお仕事をされていますが、今回は彼女のどういったところを引き出したいと考えていましたか?
「これまでに見たことのないあっちゃんの表情やキャラクターですね。タマ子は口だけ番長で食ってばっかりの女の子ですけど(笑)、なにかを考えている時やなにも考えていない表情だったりを見たかったんです。実は彼女って演技をすごく楽しんでいる感じがあまりしないんですよね。役者って演技をすることが気持ちよかったり楽しかったりすると思うんですけど、彼女は自分のために演技を楽しむのではなく、監督が求めているものに対してシンプルに応えようしてくれる。役者によっては自分をどう見せたいとか、こういうふうに撮ってほしいと思う人もいて、それも理解できるんですけど、あっちゃんにはそれがない。“監督が言うようにやるので、どうとでも撮ってください”という潔いスタンスがこちらにとっても刺激になるし、やっていて楽しかったですね。こちらが求めたものに対して、他人に迷惑をかけない程度に思い切ってやってくれるんです。あっちゃんのいいところは“なにも考えないでね”と伝えれば、カメラの前でも本当になにも考えなくなるところ(笑)。だけど、それを迷いなくやってくれるのが、彼女のかわいいところですよね」
─今回は意外性のある役どころに、AKB48時代からのファンの方も驚くと思います。
「AKB48時代からのファンの人がどう観てくれるのか、楽しみなんですよね。あっちゃんが持っている目の力や凛とした佇まいだと、タマ子みたいな役を演じても卑屈な感じにならないので、すごくその存在に助けられましたね。もし、この役を相当卑屈な感じがしたり、演技に迷いのある女優さんが演じたら、ちょっと観ていられないかもしれません(苦笑)。彼女が演じることで、ただダメなだけの女の子の話になっていないし、タマ子も自由に生きている感じがしている。それは彼女の魅力によるところが大きいと思いますね。僕がすごく手ごたえを感じておもしろいなと思ったのは、ステーションIDでタマ子がハトと戯れる春編でのエピソード。撮影の時、あっちゃんだけ別の仕事の打ち合わせがあるということで、スタッフだけ先にロケ地の甲府に入っていたんです。セッティングもできていたので、あっちゃんには到着してすぐに衣装に着替えてもらって現場に来てもらったので“ハトにエサをやって、写真を撮って”と軽く説明しただけだったんですよ。だけど、そんな状況で撮影したものが、ステーションIDで使われたんですよね。その飲み込みの早さには僕らスタッフも驚きました。気持ちをすぐに切り替えて、与えられた情報をフル活用してテスト撮影ながら本番さながらにハトと戯れる姿を見て、タマ子という役については彼女に任せて大丈夫だなと思えたんですよね。女優としての経験値はまだそんなに高くないから、何でもできるというわけではないですけど、AKB48時代に培った魅力がまだ眠っているとは思います」
─ぐうたらなタマ子も将来について悩んでいたりと、監督の手がける作品は悩める若者が描かれていることが多いですが、それはなぜでしょうか?
「努力して成功する人の話も好きなんですけど、いざ自分が映画を作るとなると、そういう話にリアリティを感じないんですよね。タマ子みたいな人を描いているほうが気持ちもわかるし、演出も説得力を持ってできるんです。いまでいう“リア充”な人を描こうとすると、自分に嘘をついているような気持ちになるというか…(苦笑)。こういう人たちを描いている時の方が自分を投影しやすくなるというのは、あるかもしれませんね。完璧な人間ってやっぱりつまらないと思うんです。どこか欠けていたりするほうが魅力的だったりするし…。だらしなかったり、人に甘えてしまうような人間の方が共感できますね」
─では最後に…監督してこの作品のどんなところに注目して観てもらいたいですか?
「僕はこの映画を5、6回観ているんですけど、まだ楽しめる自分がいるんですよね。キャラクターたちが自由気ままに生きている感じがするし、本当にこの映画の世界が実在するんじゃないかなと思わせてくれるような演技を役者たちがしてくれている。繰り返して見るといろんな発見もあって、含みを持たせた芝居をしてくれているんです。ストーリーももちろんあるんですが、彼らが自由に生きている感じを観てもらいたいですね」
【取材・文=リワークス】
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