【その2】5/3(祝)~5(祝)は時間延長が決定! 圧倒的なスケールで見せる「篠山紀信展 写真力」が5/18(日)まで開催中。会場で篠山紀信氏に直撃した!

関西ウォーカー

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※【その1】の続き

_被災者の方のお写真も展示されていますが、まず『ACCIDENTS(アクシデント)』というタイトルにも惹かれました。震災関連の写真展は「あたたかさ」や「希望」といったテーマが多い中、すごく潔い気持ちがして。

篠山「この撮影のために僕が現地へ行ったのは震災から50日後だったんですけど、その時はまだ自衛隊が道を作っているくらいのもので、写真家も…ぽつんぽつんといたかな?あとはボランティアの人とか、単なる物見遊山の人とか。僕がこの時どうやって撮影したかって言うとね、被災者の人たちにいきなり『写真撮らせてください』なんてとても言えないしさ、そんな時にそんなこといきなり言われる方もきっと嫌じゃない。だから、僕はカメラをセットしておいてバンの中に隠れていたの。それでまず最初に、一緒に行ってた雑誌の編集部の人間に声をかけてもらって、話を聞くようにしてもらったの。被災者の人って、みんな本当は話をしたいんですよね。みんなそれぞれ体験したことが違うからね。それで、ひとりひとりからお話しを聞いて、それから『写真を撮らせてもらえませんか?』ってお願いしてもらって、それで『いいですよ』って言ってもらってから、ようやく僕がバンからカメラを持って撮影するという感じだったんです。僕が現れたら『あれ?あんた何か見た事あるな?』『なんでここにいるんですか?』とか言われて(笑)」

_笑。カメラを拒む人もいましたか?

篠山「やっぱり『嫌だ』って人もいたの。『あんたが撮るってことは、どこかに大々的に出るってことだろ?そんな大袈裟にされるのは嫌だ』って。それから、おじいちゃんおばあちゃん夫婦の写真があるんだけど、実は息子もいたんだよ。でも息子は『絶対に嫌だ』って言ってたね。ひとりひとりみんな想いが違うから、ちゃんとひとりひとりの気持ちを聞くようにしてた。(展示ブースの)奥にあるあの若いカップルの写真はね、これは現地のラーメン屋で知り合った子たちなんだよ。ラーメン食べてたらさ、男の子のほうが『篠山さんでしょ?』て話しかけてきたの。『握手してください』って言うから『写真好きなの?』とか話したら、その子も被災者だったんだよね。もう、すぐ『写真撮らせて』ってお願いしてね。ラーメン屋の突然の交渉が実った(笑)。それでこの写真を撮ったわけなんだけど『君たちは恋人同士?』て聞くと『そうだ』って。『結婚すんの?』て聞いてみたら、男のほうは煮え切らないんだよね(笑)。『う〜ん…まだ…どうでしょう…』みたいなさ(笑)。そしたら女の子のほうがそれを見て『ええ!?』ってなっちゃうしさ(笑)。それでね、ちょうど一週間前に彼らから手紙が来てね、僕の図録を持って結婚式の記念写真を撮って送ってくれたんだよ。そういうのってほんとに嬉しいよね。でもこの写真が世の中にたくさん出回っちゃったから、もう別れるわけにはいかなくなったね(笑)」

_篠山先生のおかげで嬉しいしばりが出来ちゃいましたね(笑)。

篠山「ねえ(笑)。一枚の写真ってさ、本当に人生をいろいろ変えたりするんだよね。そういうことがあるんだ。だから面白いよね」

_“写真は真実を写すなんて嘘だ”とおっしゃっておられましたけど、被災者の方たちのお写真は、その言葉とは相反するドキュメンタリーですよね」

篠山「僕は写真は全部ドキュメンタリーだと思ってるよ。だって、例えば戦火をくぐって戦争の凄惨さを撮ってるロバート・キャパだけがドキュメンタリーじゃないじゃない。キャパだってさ、一番有名なあの『崩れ落ちる兵士』の写真を撮るのに、何回もポージングをお願いしたって噂も……ありますよ」

_笑。篠山先生はご自身の事を時代に従順なタイプだと思われますか?

篠山「だって時代が撮らせてくれたんだもんね、これ全部。だからさ、結局のところ僕はほんとに大したことないんですよ。いい場所に行って写真を撮ってるだけなんだよね」

_幾つかの年代を写真と共に経られてきて、“現代”は篠山先生にはどう見えますか?

篠山「あんまりいい時代じゃないよね。特に写真にとっては全盛期は過ぎたよね」

_なぜそう思われるんでしょうか?

篠山「だってさ、何ていうかな…やっぱりネットの登場が大きいよね。コンピューターが写真をだめにしたっていうか。要するに、特に日本の写真家には多いんですけど、印刷メディアで写真家というものは育っていたんですよ。雑誌とか新聞とかっていう印刷メディアで作品を作っていくことが多いから。印刷メディアでやってきた仕事をまた写真集とかっていう最高の印刷物として形にするというのが通例だったんだけど、ネットが出来てからはその印刷物…写真集が売れなくなってきちゃってるんだよね。だからね、やっぱりコンピュータの登場はすごく大きいかな」

_確かに環境は大きく変わりすぎましたよね。篠山先生の「美意識」はどういったところにありますか?

篠山「僕はあんまり『美しいものを撮ろう』とか『美しく撮ろう』なんて考えてないんだよね。もちろん『汚く撮ろう』とも思ってないよ(笑)。特別に綺麗に取り繕うってことはしないってだけで。根本的に僕は自分で自分の事を“善意の写真家”だと思ってんの(笑)。『とにかく目の前のこの人をいい状態で撮ってあげよう』とか『いい感じに撮ってあげたら、この人すっごく喜ぶだろうなあ』ってことだけなんだよ。喜ばれるのが好きなの(笑)。喜んでもらおうって、そういう写真家だからさ」

_意外と言いますか、篠山先生はすごくサービスマンなんですね。

篠山「いやいや、写真家なんてみんなサービスマンだよ。サービス精神がなかったら、いい写真なんて撮れないよ(笑)」

【取材・文=三好千夏】

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