注目の無人島・長崎県軍艦島【2】

九州ウォーカー

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端島、通称「軍艦島」は長崎半島から4km離れた海上に浮かぶ島である。長尺480m、短尺160m、周囲1.2kmの小さな島である。1995年代の最盛期には世界最大の人口密度(当時の東京の約9倍の密度)を誇り、人口5300人以上が住んでいた。島内には学校、病院、映画館の公共施設から商店、旅館、飲食店、寺社など生活に必要な施設がすべて揃っていた。

当時、そして今の島について軍艦島を世界遺産にする会の坂本理事長に話を聞いた。坂本道徳氏は、2003年に一番最初に軍艦島を世界遺産にするために立ち上がり、軍艦島クルーズのシーマン商会「さるく号」でガイドもしている。

軍艦島は閉山してから40年の月日が経っており、なおかつ毎年台風の直撃も受けている。護岸にぶつかった波は高さ60mにもなり島内に降り注ぐ。長年の月日を積み重ねた建物の劣化は進行しており、瓦礫の山や木材が散乱している。

かつて坂本氏が住んでいた65号棟は、建物だけを見てしまうと廃墟としか感じられないが、生活の痕跡を辿り、違う視点で見るとそこには何千人もの人の生活があり思い出が詰まった故郷である場所なのだと認識することができる。

第三見学所から見える30号棟は、増える人口と住居を解消するために1916年に日本で最初に建設された鉄筋コンクリート(RC)造のアパートである。大正7年に建設された日給社宅は当時国内最高層アパートであり、日本古来の長屋的構造が取り入れられた特徴的な建物であった。棟や階層によって異なる間取りをしていたのは日照を考慮したための作りとなっており大正時代に日照問題に対処していた軍艦島の先進性がわかる貴重な場所となっている。同じ時代で東京青山に建てられた同潤会アパートがあったが取り壊されてしまったため、軍艦島に残る30号棟は現存する貴重な遺産といえるだろう。

7階建ての小中学校においては当時国内最高層の巨大小学校であり、65号棟の屋上には保育園があった。場所が場所なので当時この保育園の認可はなかなか下りなかったそうだ。

観光船の発着場「ドルフィン桟橋」に着くと天草石という石を積み上げた護岸が目に入る。これは明治時代に「天川工法」によって作られたものであり世界遺産登録の重要な箇所になっている。

島内の見学通路を歩いていると左手下側に護岸を貫通した海が見える場所がある。ここは日本で最初に本土から6500mの海底水道を引き込んだ取込口である。2015年の世界遺産登録が迫ってきておりICOMOS(イコモス)が9月に調査を予定している。多くの遺構と歴史、特殊な環境は産業革命としての産業遺産である。

上陸可能日数は1年のうち約100日ほどであり三分の二は上陸が不可能となることがある。これは長崎市が決めた上陸規定に波の高さが0.5m以内となっているためだ。夏場は南西の風が吹くためドルフィン桟橋のある場所は波のうねりに晒され上陸断念することが多いが、逆に冬場は島の外海から吹く北西の風を島が遮ってくれるのでドルフィン桟橋周辺は静かな場所となる。晴れているから、長崎港の波が静かだったとしても、18km先にある島の波がどういう状態なのかは行ってみないとわからない。必ずしも上陸ができるというわけではないのだ。当時からこの気象条件は変わっておらず今も軍艦島は特殊な環境にある。

去年はGoogleストリートビューで、今年は「進撃の巨人」実写版のロケ地として注目を集める。メディアだけでなく、今年は軍艦島関連書籍も多数出版されている。坂本道徳氏も島での生活とこれからの軍艦島を「軍艦島 離島40年」で綴っている。軍艦島の廃墟のような現在の姿だけでなく、事前にこれらの書籍などを読んで予備知識として入れておけばディープな視点で「端島と軍艦島」を体感できそうだ。

*長崎市の特別な許可・同伴のもと上陸しています。

【取材・文/谷口雄亮】

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