フィギュア“次世代のホープ” 寡黙な加藤利緒菜の自信に満ちた一言

東京ウォーカー(全国版)

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11月初旬、フィギュアスケート選手の加藤利緒菜を西日本選手権で取材した。11月28(金) から30(日)まで、なみはやドーム(大阪府門真市)で開催される「NKH杯国際フィギュスケート競技大会」において、次世代のホープとして活躍が期待される選手だ。西日本選手権では、けがからの復調を実感できた安堵、そして未だ解決できない課題への苦悩とが相半ばする、何とも微妙なパフォーマンス。結果、総合2位に終わった。

試合後にコメントを求めたが、彼女は言葉をもって表現することを好まない。どう呼び水を与えても、ほとんど言葉を発しない。頭の中でいろいろと考えて、それがうまく表現できないもどかしさ、それと共に、決して演技の出来栄えが良くなかった状況で、自分の発する言葉が言い訳じみてしまうことを恐れているかのようにも見える。そんな彼女の心情を加藤ゆかりコーチが代弁する。

「シーズン前は絶好調でした。ところがシーズン入りの時期に右足首を痛めてしまって、アメリカの大会(ゴールデン・ウエスト選手権)ではトゥループとサルコウをメインにプログラムを組み換えざるを得なくなり、けがが少し癒えたところでフリップを入れ、最近になってようやくループを一つ入れ、そうやって何度も構成を作り直したんです」

同じプログラムでも、エレメンツの構成が変わればジャンプの入りのカーブも変わり、微調整を余儀なくされる。当然、仕上がりは遅々として進まない。特に加藤の生命線であり得点源となるループジャンプを入れられなかったことの影響は大きかった。「このオフは本当にいい練習ができていて、トリプルアクセルの確率も上がって、近畿選手権のフリーで挑戦するプランもありました」と加藤コーチは付け加える

NHK杯は、これから世界を目指す若手にとっては夢の舞台。さほど芳しくなかった彼女の昨季の成績からすれば、これは大抜擢といえる。そんな状況、周囲の期待を理解しているからこそ、黙々と猛練習を積んだ今オフ。その代償が右足首の故障だ。

どんな質問を投げかけてもなかなか答えようとしない加藤だが、ただ一つ、自分の意思を明確に表現した回答があった。「ループは世界一だよね」との問いかけに「うん」、はっきりと、そう答えた。日本女子の若手ではナンバーワンの素質と評価されながら、なかなか結果に結びつかない。そのもどかしさがますます彼女を寡黙にさせる。しかし同時に、自分の持てる能力、可能性への信頼は全く揺らいでいない。少なくとも心の奥底では、未だ言葉にはできない表現の萌芽を、悩み、逡巡し、その先にある何かを掴もうとしている。

NHK杯での目標は「全てのジャンプを降りること」。順位や点数は考えられないが、とにかくノーミスの演技をしたいという。若い選手にとって、これほどの大舞台での経験、頑張り次第で自分の人生を左右するかもしれない機会をもらえること、それは決して恐れることではなく、とんでもなく幸せなことだ。このチャンスをどうか生かしてほしい。そしてその先に、寡黙な加藤利緒菜から歓喜の言葉が聞かれることを心から期待したい。【中村康一】

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