フィギュア直前情報！ジュニアGPファイナルに未来のスターが集う

現地時間の12月11日(木)～14日(日)、スペイン・バルセロナでフィギュアスケートのグランプリファイナルが開催される。グランプリシリーズ出場選手の上位6名が出場する大会である。かつてはジュニアとシニアは別の大会として開催されていたが、2008-2009シーズンより同時開催になった。今回は日本人選手が多数出場する、ジュニアグランプリファイナルの男子シングルと女子シングルを紹介したい。

11月の全日本ジュニア選手権(新潟)で、圧倒的な優勝候補と目されていた宇野昌磨は、ショートプログラムこそ好演技を見せたものの、フリーではジャンプミスを連発、あわや優勝を逃すところだった。実は、クワド(4回転)トゥループとトリプルアクセルを2度ずつプログラムに組み入れるという、かつて行ったことのない高難度の構成にチャレンジしていた。コーチの指示だったそうで、試合後の取材では不本意な内容に納得のいかない様子が見受けられた。

続く12月の愛知県TP大会のショートプログラムで、彼はクワドトゥループとトリプルアクセルを両方組み入れるという、これも今までにない構成に挑み、今度は見事に着氷してみせた。思えばどちらも今年の夏になって降りられるようになったジャンプだ。ここ最近の成長には驚きを禁じ得ない。ジュニアグランプリファイナルでは表彰台はもちろんのこと、優勝をも狙える勢いである。

一方、山本草太は、残念ながら不完全燃焼の全日本ジュニア選手権となった。フリーで、宇野昌磨の次の滑走順となった彼は、「宇野選手が素晴らしい演技をして、拍手喝采の中、出ていかなければならないはず」と想像し、プレッシャーに打ち勝つ心の準備をしていたという。ところが宇野選手がまさかのミスを連発…「ひょっとしたら優勝できるかもしれない」そんな思いに駆られた彼は、かえって緊張してしまったようだ。フィギュアスケートがいかにメンタルのスポーツであるかを象徴するエピソードだといえる。とはいえ、本人は失敗を引きずっている様子は一切ない。長久保コーチからも「トリプルアクセルの成功はファイナルで」と言われているようで、きっと今度こそ成功させてくれるはずだ。

女子シングルでは、ジュニア昇格初年度なのにもかかわらずファイナルにいきなり出場する樋口新葉に注目を。全日本ジュニア選手権では圧巻の演技で優勝を果たしたが、印象的だったのは試合後の涙。彼女はその年齢に似つかわしくないほど堂々とした演技を見せる選手だ。彼女が演技を終えてキス＆クライで得点を確認した時、感情が抑えられなくなって大泣きした姿に、全日本ジュニアの重みを改めて思い知らさられた。

最後に永井優香も取り上げたい。彼女もまた、全日本ジュニア選手権の演技後に感極まって涙を流した選手の一人だ。3位に終わったことへ悔し涙なのだろうと、関コーチに聞いたところ、「いや、本当によくやりました。この子にとって、フリップとループが両方入ったというのは素晴らしいことなんです。感動しました」とのこと。悔し涙ではなく、精一杯の演技ができたことへのうれし涙だったようだ。大きな壁を乗り越えた彼女の活躍を見守ってほしい。

現地バルセロナでの公式練習を見る限り、宇野昌磨は順調な仕上がりを見せている。ショートプログラムのジャンプ構成は、3アクセル、3ルッツ、3フリップ-3トゥループで行くようで、ライバルのボーヤンジン(中国)も同じ構成。ジャンプの質はボーヤンジンに一日の長があるが、それ以外の要素は全て宇野が勝っており、アクセル以外のジャンプを後半に予定している宇野の方が技術点の基礎点は高い。勝機は十分にあると踏んでいる。愛知県TP大会ではアクセルジャンプに苦労していた山本草太も、公式練習では切れの良いジャンプを連発していた。樋口新葉は相変わらず好調をキープ。ジャンプの質もさることながら、そのスケーティングスキルはとてもジュニア初年度とは思えない。永井優香の高くて幅のある美しいジャンプもきっと評価されるはずだ。

12月11日(木)、男子ジュニアと女子ジュニアのショートプログラムが行われる。この大きな舞台を心から楽しんで、精一杯の演技をしてくれることを願いたい。【東京ウォーカー/取材・文＝中村康一(Image Works)】