女子フィギュア界に新星!中塩美悠の夢が叶う
東京ウォーカー(全国版)
1月22日から25日まで、日本ガイシ スポーツプラザ ガイシアリーナ(名古屋)で開催された高等学校総合体育大会(インターハイ)のフィギュアスケート競技。女子は3年生の中塩美悠が最後のインターハイで悲願の優勝を飾った。ショート、フリー共に1位。結果だけ見れば圧勝のようにも見えるが、それは決して簡単なことではなかった。
約150名の参加者のうち、24名しか決勝に進めないインターハイ。強化選手といえども、ジャンプでミスを2つすればたちまち予選落ちの危機を迎える気の抜けない大会だからだ。
加えて上位選手の大半は、シニアの規定で作ったプログラムで年末の全日本選手権を戦っている。インターハイはジュニアルールで行われ、ショートプログラムはソロジャンプの種類も指定される(今季はルッツ)。慣れないプログラムに不安を感じ、力を発揮できない選手も多い。
ここでジュニアからシニアにカテゴリーを上げるタイミングについて触れておきたい。7月1日で年度が切り替わるフィギュアスケートでは、前年度、つまり6月30日までに15歳に達していればグランプリシリーズなど、ランクの高い国際大会にエントリーすることも理屈の上では可能だ。
ただし、その年齢でグランプリシリーズに派遣してもらえるほどの能力を持っている選手はまれで、通常はジュニアのカテゴリーで戦いながら実績を積み、シニア昇格のタイミングを計る。中塩の場合、2シーズン前から国内大会はシニアに移行していたが、国際大会は今季もジュニアカテゴリーを選択した。
「それはもう、悩みました」。中塩は当時の心境をそう吐露する。ISUポイントの高いシニアを選択するか、知名度のあるジュニアグランプリシリーズにフォーカスするか。ジュニアを選択した場合、国内大会のためにシニアプログラムの練習もしなければならず、その負担は大きい。今後の競技人生をも左右しかねない、重大な選択だった。
今季、その選択に悩んだのは中塩だけではない。本郷理華、加藤利緒菜の両名はシニアを選択した。大きな理由として、本郷、加藤の場合はISUランキングと前年度ベストスコアで上位に入っていたため、グランプリシリーズに派遣される可能性が高かったことが挙げられる。
しかし中塩の場合、その条件を満たしていなかったため、仮にシニアに移行してもグランプリシリーズよりも下位に当たるチャレンジャーシリーズへの派遣しか見込めない。かといってジュニアに残留しても、保証されていたジュニアグランプリシリーズへの派遣は1戦のみ。その1戦で結果を出さなければ次はないという、非常に厳しい状況だった。
ジュニアグランプリ初戦となったクーシュベル大会、ここで中塩は最低限クリアしなければならない順位、4位を獲得する。仮に5位だったなら次のタリン大会への派遣はなかったはずだ。
辛うじて出場権を獲得したタリン大会では、なんとシリーズ初優勝を遂げ、ジュニアグランプリファイナルへの出場権までもつかみ取った。そしてジュニアルールで開催されるインターハイで優勝。ジュニアカテゴリーを選択するというギャンブルに、彼女は勝ったのだ。
「今後はジャンプのクオリティをもっと上げていきたい。トップ選手とはまだまだ差があることを痛感しました」。ジュニアグランプリファイナルの大舞台を経験したからこそ感じた世界との隔たり。それを埋めるため、全日本選手権終了後には渡米して練習を積んだ。高校卒業後は早稲田大学のeスクール(通信課程)に進学する。通学に費やす時間も練習に充てたい、との思いからだ。
「インターハイのパンフレットに歴代優勝者の写真が載っているのを見て、私も優勝して載りたいな、と思っていました。それが叶うのがうれしい」。記者会見で彼女はそう話してくれた。パンフレットの写真を担当した私にとって、冥利に尽きる言葉だった。
後輩が彼女を目標に切磋琢磨する日も来ることだろう。そのころ、彼女がどれほどの選手へと成長していることか。課題はまだ多いが、限られたチャンスを確実につかみ取ってきた彼女は、きっと乗り越えてみせてくれるはずだ。若手の台頭が待たれる日本女子フィギュア界に、新たな希望の星が誕生した。【中村康一】
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