フィギュアスケート“ローカル大会の真髄”とは?
東京ウォーカー(全国版)
2月20日(金)から22日(日)にかけて、北海道札幌市の真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開催された、2015フィギュアスケートフリースケーティング大会を取材。北海道スケート連盟のフィギュアスケートに対する取り組みや注目選手などを紹介したい。
まずは、北海道スケート連盟の近江谷克恵フィギュア委員長に話を聞いた。北海道はウインタースポーツが盛んな土地柄だが、氷上競技はアイスホッケーとスピードスケートの印象が強く、フィギュアスケートはさほど盛んではない。
「北海道だけで大会を運営していても駄目だとの意識があります。この大会はオープン大会として、他の地域の選手も参加できる形態です」。
そこにはどのようなメリットがあるのだろうか。
「北海道の選手にとっても良い刺激になっています。ジャッジもお招きし、普段とは違う見方を提示してもらうことが技術向上につながるのです」。
東京の選手が調整のために出場することも。仙台の選手の参加者も多い。
「かつては本田武史、荒川静香、鈴木明子などが参加してくれていました。現在でも仙台の選手は多数出場しています。北海道の中だけでの活躍に満足せず、外の大きな大会にも出られるようにバックアップしていきたいです」。
北海道は、リンクには恵まれている印象があるが、なかなか根付かない根本的な理由があるようだ。
「確かにリンクは多いのですが、“お金がかかる特別なスポーツ”との先入観が根強いんです。アイスホッケーやスピードスケートは、北海道では先生につかなくてもできます。しかし、フィギュアはプロの先生につかなければなりません」。
そんな抵抗感を和らげるべく、協会が一丸となって対策を練っているとのこと。
「近年は、札幌を中心にインストラクターも増えて、競技人口も増加しています。この傾向を北海道全域に広げていきたい。その足掛かりとしても、この大会は重要だと考えています」。
かつては柴田嶺や国分紫苑などのトップ選手も生み出した北海道のフィギュアスケート。少しずつ活動のすそ野が広がることで、新たな選手も育ってきているようだ。ここからは、今回の大会で目立った活躍を見せた選手を紹介する。
まずは仙台の佐藤駿。2014年の全日本ノービス選手権のBクラス(9~10歳)で圧勝。Aクラス(11~12歳)に出場しても勝っていたのでは?と思わせるほどの内容だった。
今回の試合はミスの目立つ演技になってしまったが、5種類のトリプルとダブルアクセル+トリプルトゥループを組み合せた難しい構成で試合に臨んだ。
同郷の羽生結弦のノービスB時代と比較すると、ジャンプの構成は佐藤駿が上。ただ、羽生は子どもの頃からエッジを深く使ってしっかり押して滑ることを心掛けていた。佐藤もスケーティングの向上に取り組んでほしいと強く願う。
次に紹介するのは、この試合が引退試合となった北海道の吉田拓登。学校の卒業を機に引退する選手は多く、ローカル大会が引退の場となることも多い。
吉田の名前がコールされるとコーチが観客席を煽り、応援を求める。会場が一体となり、現役最後の演技に声援を送るさまはローカル大会ならではである。
最後のダブルアクセルに「どうか決めてくれ」と祈るも、結果は転倒。それでも最後まで滑り切り、観客に感謝を伝える吉田は万雷の拍手を浴びた。これこそがローカル大会の醍醐味だといえる。
最後は、土橋亜海。地元・北海高校の1年生だ。1月に名古屋で開催されたインターハイでショートプログラム3位(総合7位)と大健闘を見せた。
今回はミスがあったものの優勝。「シーズン前、勉強が忙しくて練習できない時期があり、その結果、全日本ジュニアに進出できませんでした。後半になってようやく仕上がった感じです」と本人は語る。
そのため、ノーマークだったインターハイで、素晴らしい演技を披露できたのだ。山田真美コーチは「才能はすごい。ただ、もっと練習してほしい」と付け加える。
この日も5つのトリプルに成功。苦手のループは今後の課題というが、そもそも難度の高いルッツとフリップを安定して跳べる選手はなかなかいない。
「毎年、大会後、春になると練習をしなくなってしまい、夏頃から練習するので、ブロック大会や東日本の頃には仕上がっていないんです」という発言も飛び出した。これほど素直で正直な選手も珍しい。コーチのぼやきの意味が良く分かる発言だ。
「来季はシニアに上げて全日本を目指す予定です。目標は、強化選手に入って国際大会に派遣されること」。これだけの才能を持っていながら、今まで一度も強化入りしたことがなく、国際大会の経験もないのだという。
2015年こそは、春になってもどうか気を抜かずに練習してほしい。才能が開花する日を楽しみに待ちたいと思う。
ローカル大会には、テレビで中継される大きな大会とはまた違った魅力がある。旅行も兼ねて、フィギュアスケートのローカル大会を観戦してみてはいかがだろうか。【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】
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