山下敦弘が映画「味園ユニバース」を語る(後編)

関西ウォーカー

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(前編の続き)

映画「味園ユニバース」のインタビューは、ABCラジオ「よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ」の番組内でも話題となった山下監督の過去作へと話題が広がった。

原:恥ずかしながら、ついこの間、「リンダ リンダ リンダ」を拝見して深夜に号泣しまして…

山:ほんとですか!?

鈴:僕が「リンダ リンダ リンダ」が大好きで、いまだに映画のことを思いだしてDVDを見るんですよ。いつ見ても全然イケるんですよ

原:イケる…?(笑)

鈴:グっと来るんですよね。そういうことを原さんに言ってたら、ついに原さんが見たと。そして“スゴかった”と

山:あの作品のコンセプトとして考えていたのが“ブルーハーツ結成の年に生まれた女の子たちが女子高生になってブルーハーツをカバーする”ということだったんです。俺らの世代でいうと、ブルーハーツのコピーバンドって結構いましたよね

原:うなるほどいましたよね(笑)

山:少し前までヤンキーだったやつがブルーハーツで急に音楽に目覚めちゃったりして、すごい演奏は下手だけど、聞かされてる方は怖いからノラなくちゃいけないとかあったじゃないですか(笑)。俺にとってブルーハーツは、バンドブームの中でスゴイ存在感のあるバンドだったけど、ブルーハーツだけっていう感じでもなかったんですよ。でも「リンダ リンダ リンダ」を作った後には、ブルーハーツのすごさがジワジワと思い知りましたね。そもそもぺ・ドゥナもブルーハーツを知らなかったけど、ビデオとCDを渡して聴いてもらったことで、出演してくれることにもなりましたし。ブルーハーツの力はすごいなと思いましたね。数年前に、シネセゾン渋谷という映画館が閉館するときに、「リンダ リンダ リンダ」を上映してくれて、自分でも何年かぶりに見たんですけど、青春映画でしたね。なんで青春映画なのかなって考えたら、撮影している当時、俺は27~28歳だったんですけど、俺の青春もまだ終わってなかったんですよね(笑)。あれは俺自身の青春映画でもあるんですよ。全部が青臭いというか。「あぁ、オレこういうこともやってたんだなぁ」とか、ちょっと背伸びしようとしてるのを感じたりとか。若い頃って“若く見られたくない”から背伸びしたがるじゃないですか。それが透けて見えたんですよね。34〜5歳のときに見返したんですけど、なんか“キュン”としましたね。いまの自分じゃ作れないなとも思いましたし

原:そうか! それはあるかもしれませんね。“もう戻られへんねんなぁ…”という気持ち

山:俯瞰して見てたつもりだったものが、まだオレ自身も青春時代まっただ中だったなぁと

鈴:僕はこの間、ラジオでも言ったんですけど、高校時代は男子校やったんで、圧倒的な共学への憧れというのが、「リンダ リンダ リンダ」を見たときに“いいなぁ…”と。“ホットプレートの貸し借りで電話したりするんやぁ”って

原:時代的にはギリギリ、携帯電話を持ってるんですけど、家の電話にかけるっていうね(笑)

山:たしかに。オレら世代は連絡網が家の電話だけっていう時代ですよね。そうか…それも今の若い子にはリアリティないですよね

鈴:でしょうねぇ

山:家の電話、ドキドキしたけどなぁ…

原:女の子の家に電話したら弟が出たり…

山:オヤジが出るのかなと思ったら弟が出てきて、何の準備もしてなくてね(笑)

原:その辺もノスタルジックになっちゃうんですかね

山:“青春あるある”じゃないですけど、そういう気持ちもありますよね

鈴:僕は「味園ユニバース」を見て、後からいろいろ思ったのは、「リンダ リンダ リンダ」もそうですけど、ストーリーでものすごくドラマチックなことが起きるというわけではないじゃないですか

山:そうですね

鈴:「味園ユニバース」もチンピラが出てきて、記憶喪失でという話ですけど、最後の歌にすべてが集約されてる感じですよね。

山:「リンダ リンダ リンダ」のとき、実は脚本の段階で最後にライブすることについて抵抗してたんですよ。俺の中では、最後間に合わなかったというラストも考えていて

鈴:あぁ〜

山:そこは今思うと、すごく寒いんですけど、どういうラストかと言うと、ドシャブリの中、学校に着いたら、もう文化祭が終わってるという。そこで彼女たちが屋上にスピーカーを持っていって、屋上で演奏するんですよ。そうこうしているうちに雨も止んで、下ではキャンプファイヤーが始まる。

原:後夜祭的な感じですね

山:で、下にいる人たちには「なんか音楽が流れてるなぁ」くらいにしか聞こえないんだけど、彼女たちは屋上で…

鈴:そのラストもいいですね!(笑)

山:いや、いいんですけど、一生懸命背伸びして考えた結末って感じなんですよね。

「ラストで客の前で演奏して盛り上がるとか寒いと思うんでぇ…」みたいな感じで(笑)。「リンダ リンダ リンダ」のラストは、今のもので良かったんですよ。みんなの前で演奏するのはお約束といえばお約束なんですけど、映画を作ることで「それをやってよかった」というのを学びましたね。「リンダ リンダ リンダ」があったからこそ、「味園ユニバース」のラストを作ることができたと思いますね

【取材・文=関西ウォーカー編集部】

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